パリ・ウィーンのメインストリートの今 -歴史と未来が交差する都市-
都市デザイン
- レポート
持続可能な都市近接性に関する国際会議へ
9月4~5日のパリでの「持続可能な都市近接性に関する国際会議」に御堂筋関連で大阪市、大学の先生方と共に出席するのに合わせて、パリ・ウィーンの道路空間再編関連の産官学の様々な方々とのミーティングに参加してきました。
パリのシャンゼリゼ通り、ウィーンのマリアヒルファー通り。これらのストリートは今、単なる都市の顔ではなく、未来の都市像を先導する実験場へと変貌を遂げています。今回の産官学の様々な方々とのミーティングと現場視察では、二つの都市が歴史を継承しながら、地球温暖化や多様性と包括といったグローバルな社会問題に対応し、都市空間の「車から人へ」の転換を一つのプロジェクト・ツールとして、市域全体に広げようとしている力強い意志を感じ取ることができました。
パリ~「15分都市」の実践~
パリでは、カルロス・モレノ氏が提唱する「15分都市」構想を掲げるイダルゴ市長の固い意志のもと、エコロジカルな改革が全域で実践されていました。メインストリートや広場から、横道、小学校前まで、「歩行者空間化」の波が市域20区全体に及んでいます。その理念は、地球温暖化対策から、近接性、生物多様性、都市の健康へと大きく進化し、公共空間が公園化(パークナイズ)、公共施設や商業施設のリノベーションは循環型ライフスタイルを提案する場へと変化していました。様々な方々との対話や現場で実感したのは、色々な反対意見がある中でも、市民との丁寧な熟議と「自由・平等・友愛」の民主主義の根源を背景に「小さな都市改造」を積み重ねる、「挑戦し続けるパリの今」でした。
ウィーン~シェアード化する都市と市民社会~
一方、ウィーンの変革は、歴史的な景観や街区構成と様々なモビリティとの連携や調和が印象的でした。「シェアードスペース」や「歩行者専用道路」の市域全体での整備は、リング通り内から、横道、つながるストリート、さらには「スーパーブロック」による地域単位の道路空間の公園化へと展開していました。特にスーパーブロックは、バルセロナやベルリンなどを参考にしつつ、低所得者層や移民層が集まる地域の特性を考慮したウィーン独自の取り組みでした。
また「赤のウィーン」の集合住宅カール・マルクス・ホーフから、低炭素化を徹底したスマートシティであるアスペルン・ウィーンのアーバン・レイクサイドまで、新旧の住宅地開発も、時代背景は違いますが「日常の市民の暮らし」の視点から都市・地域・建築を捉え直す挑戦的な試みでした。自転車や歩行者のモビリティの専門家との議論で交わされた「私たちは前向きなコミュニケーションを確立しなければならない。歩くことは素晴らしいことであり、豊かな人生の一部であり、価値のあることである。」というメッセージは、未来に向けて「私達はどのような社会を築き、どのような暮らしをしたいのか?」といった活発な議論と市民の小さな日々の実践の重要性を再認識させてくれました。
民主主義社会における都市空間の公平とは
国際会議の基調講演でのヤンゲール氏の「持続可能で魅力的な近接性(Proximity)を創造する」というメッセージに集約されるような二都市の変革は、市民の日常生活を向上させるための都市の改造でした。しかし、この一つひとつは小さいながらも壮大な都市改造は、新たな共通課題をも生み出していました。その一つが、誰でも自由に利用できる「公的なベンチ」と、飲食代が必要なオープンカフェの「私的なベンチ」のバランス。これは、グローバル・ツーリズム時代のストリートでの共通課題です。また都市経営やエリアマネジメントの財源とグローバル資本主義の挟間でのバランスをいかに取るか。歴史的建造物の維持管理費捻出のため、工事用仮囲いにラグジュアリー・ブランドの広告を掲載する手法は財源確保の現実解ですが、都市の品格と景観との調和は難しい課題です。今回の二都市の挑戦は、御堂筋などにおける私たちの課題と共鳴しており、民主主義社会における都市空間の公平という根源的な問いを投げかけています。
最後になりましたが、今回の国際会議、ミーティング、視察等で本当にお世話になりました国内外の関係者の皆様に、この場をお借りしてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
DATA
| 担当 | 中塚一 |
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