アルパックニュースレター189号

地域から少子高齢化への対応を考える その9~火葬場と墓地を考える

執筆者;代表取締役社長 森脇宏

 前号(No.188)の「その8」では、関西(2府4県)における介護需要の急増ぶりを具体的に推計し、その対応の難しさを考察してみました。  今回は、高齢化に伴って死亡者数も増加するため、これによって生じる問題のうち、火葬場と墓地について、火葬場に関する具体的な需要も推計しながら考察してみます。

死亡者数の推計

 関西における府県別死亡者数(年平均)は、前々号(No.187)の「その7」でも推計しましたが、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(平成25(2013)年3月推計)」で示された生残率や純移動率を用いて、表1に示すように推計できます。現状(2006年~2010年)で関西全体の死亡者数は、年平均で約18万人ですが、15年後には約26万人と1.45倍に、30年後には約29万人と1.6倍になると推計されます。
 これを府県ごとにみると、大阪府の増加が著しく、15年後には1.55倍に、30年後には1.75倍になると推計されます。他の府県は、関西全体の伸び率程度か、それより低い伸び率にとどまっています。


(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25(2013)年3月推計)」を基に推計した。

将来必要となる火葬能力の推計

 府県別の年間死亡者数を基に、将来必要となる火葬能力について推計してみます。必要な火葬能力とは、ピーク日に火葬できる最大件数(体/日)です。通常は、平均日の火葬件数の2.0~3.0倍として算定しますので、ここでは一律2.5倍として試算しています。こうした将来必要となる火葬能力と、現在の火葬能力を比べたのが表2です。ただし、府県別の現能力を示す最近の資料が見当たらず、ここで掲載しているのは、厚生省生活衛生局企画課「全国火葬場資料集(平成9年)」のデータで、かなり古いことに十分留意してください。
 将来必要な火葬能力を、現状の火葬能力と比べると、大阪府のギャップが大きく目立っています。2020年~2025年の頃には現状(1997年)の約2倍に、2035年~2040年の頃には現状の2.24倍に増強する必要があります。
 一方、大阪府以外は、それほど大きなギャップはなく、兵庫県における2020年~2025年の1.23倍、2035年~2040年の1.38倍が最も大きな比率であり、数字だけ眺めると、それほど難しい目標ではないのかもしれません。また、滋賀県、奈良県では、現状の能力程度で対応可能で、和歌山県に至っては、半減してもいいような数字が試算されています。しかしながら、府県別に考察する前提は、各府県内で火葬場の相互利用(広域調整)が可能であることですから、交通の便がよく府域が狭い大阪府なら現実的ですが、そうではない府県では、相互利用(広域調整)は容易ではないので、そう単純に評価することはできません。例えば、和歌山県の広大な山間地では、近隣の各市町村間で火葬場を相互利用しようにも、移動時間が掛かりすぎるため、利用効率の低い火葬場を独自に持たざるを得ない自治体があるだろうと想像されます。したがって、これらの需給関係を考察するには、各府県内を幾つかに分割した地域別に検証することが必要だと思います。


(資料)現能力は、厚生省生活衛生局企画課「全国火葬場資料集(平成9年)」による。将来需要は、独自に推計した。

大阪府の火葬能力の考察

 火葬能力の整備の面で最も厳しい大阪府ですが、府内自治体も能力増強の努力を払ってきています。大阪府では、大規模災害への対応のため「大阪府広域火葬計画(平成26年度版)」を策定しており、その中に大阪府内の火葬場整備状況一覧(平成25年8月現在)が整理されており、最近の火葬能力が把握できます(他府県での同様の情報は、ネットでは検索できませんでした)。これによると、2013年時点での大阪府内の最大火葬能力は519体/日となっていますので、1997年の389体/日から16年後の2013年までに、実数で130体/日、比率で1.33倍の能力増強が行われています。
 こうした努力が払われていますが、今後については、より一層厳しい状況が予想されます。すなわち、2013年時点で、519体/日の火葬能力がありますが、これを7年~12年後の2020年~2025年には、769体/日の火葬能力までに増強する必要があります。これは、実数で250体/日、比率で1.48倍の能力増強ですので、1997年から2013年にかけての増強を大きく上回る増強が求められています。
 なお、2020年~2025年以降も、能力増強は求められますが、2035年~2040年には870体/日の火葬能力が必要ですので、実数で101体/日、比率で1.13倍の能力増強ですから、その能力増強の程度はかなり緩和されます。つまり今後の10年ほど(7年~12年後まで)の間、火葬場の能力を増強させる必要度がピークを迎えると考えられ、これまで以上の能力増強をしないと、火葬場が決定的に足らない状況が生じかねないと考えられます。


(資料)2013年データは、「大阪府広域火葬計画(平成26年度版)」により、他のデータは表2による。

墓地に関する考察

 墓地についても、死亡者数の増加に伴って埋葬数も増加していくと考えられます。したがって、いずれ墓地不足という事態も生じる可能性はあります。従来のように、郊外部での墓地開発は進むとは思われますが、最近は交通の便も重視されていますので、外延化も限界があると思われます。したがって、郊外で売れ残った住宅地の転用や、市街地内の工場跡地の転用なども、今後登場してくるかも知れません。
 ただし、単純に死亡者数に墓地の面積需要が比例するとは考えられません。これまでの墓地の中で多くを占めていた「土地付きの平面墓地」の比率は、地価や適地の制約だけでなく、承継問題もあって低下していくと予想されます。これに代わって「立体式納棺堂」や「合葬式墓地」などが登場してきています。さらに、最近増えてきた樹木葬や、海外で多い芝生墓地が増えると、区画面積が小さくなるので、面積は抑制されてきます。また、散骨などが増えると、埋葬そのものも、単純に死亡者数に比例して増加するとは考えにくくなってきます。
 今後の墓地計画には、これらのニーズを正確に把握し反映させていく必要があると考えられます。