アルパックニュースレター189号

柏の葉スマートタウンは、「都市の聖地」になりうるか

執筆者;代表取締役会長 杉原五郎

 2014年の12月、都市計画コンサルタント協会主催の見学会で、柏の葉スマートタウン(千葉県柏市)を訪れました。見学会には東京圏を中心に、地方からも含め、自治体関係者、コンサルタントなど20名余が参加しました。まちの概要と印象について報告します。

柏の葉スマートタウンはどんなまち?

 東京の秋葉原からつくばエクスプレス(2005年開業)で30分の所に、柏の葉キャンパス駅があります。この駅を中心に柏の葉国際キャンパスタウンが広がっています。キャンパスタウンには、東京大学と千葉大学のキャンパスのほか、国立がん研究センターや財務省の研修施設などが立地しています。駅周辺の街区には、住宅、商業・業務施設(ららぽーと等)、ホテルなどが集積しています。人口は、現時点では6000人ほどで、将来的には2.5万人が想定されています。
 駅から至近の所に、「柏の葉アーバンデザインセンター」(UDCK)があります。ここは、「市民と行政、企業、大学など多様な主体が連携してまちづくりを進めていくための拠点」とされています。
 「柏の葉スマートシティミュージアム」で、都市開発の概要、まちの将来像などについて説明を受けました。このまちは、千葉県施行の土地区画整理事業によって都市基盤整備が行われ、三井不動産によって住宅や商業・業務施設等の民間開発が進展しています。コミュニティサイクル(自転車の貸出・返却が自由にできる)、マルチモビリティシェアリング(電動バイク、電気自動車など移動手段の共有で、CO2排出量を減らす)の社会実験が取り組まれています。
 柏の葉スマートタウンは、ハードとソフトの最新技術を駆使した先導的な新市街地と言えます。国内はもとより、アジアや欧州など海外からの視察団が頻繁に訪れ(月に500人~600人)、いま最も注目を浴びているまちのようです。

柏の葉オープン・イノベーション・ラボ(KOIL)は何をするところ?

 KOILは、三井不動産が経営するオープンイノベーション施設です。協働のワーキングスペース、参加者の化学反応の場を提供するスタジオ、さまざまな人々の交流の場となるカフェ、3Dプリンターなど最新機器によるものづくりの工房、ミーティングルームを備えています。KOILは、さしずめナレッジサロン(2014年春、グランフロント大阪に誕生)の柏の葉タウン版といったところ。視察の当日、筑波大学の先生を講師とするセミナーが数十人規模で開催され、活気にあふれた様子を目にすることができました。
 東京の都心から30分、筑波研究学園都市に近接しているという好立地に恵まれ、近くに東京大学、千葉大学、筑波大学など学術研究機能が集積していることがオープンイノベーションラボ成立の必要条件と理解しました。


柏の葉キャンパス駅の周辺

柏の葉スマートシティは、「都市の聖地」になるのだろうか

 視察を終えて、懇親会では、都市コン関西で新たに立ち上げられた「都市の聖地づくり研究会」のことが話題になりました。はたして、柏の葉スマートタウンは、誰もが魅力を感じ、訪れ、住みたく感じるような「都市の聖地」になるのだろうか。
 関西からの参加者から、柏の葉スマートタウンについてその先進的な試みにそれなりの評価をしながらも、「こぎれいだが少し無機質な感じ」「人間の臭いが欲しい」「住みたいまちとしての魅力に乏しい」などの率直な感想がでました。
 新市街地を誰もが親しめるまちにしていくには、時間もかかる、人間的な営みを支えるソフト(人々の経験と知恵)も必要であると感じました。「まちづくり」も重要ですが、「まち育て」の視点も大切と言われます。今回の柏の葉スマートタウン視察に参加して、まちをつくり、まちを育てていくことの重要性と難しさを改めて実感しました。


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