アルパックニュースレター190号

地域から少子高齢化への対応を考える その10~空き家問題を考える~

執筆者;代表取締役社長 森脇宏

 今回は、高齢化に伴って生じる問題のうち、空き家問題について、将来動向を大胆に予測しながら考察してみます。

空き家問題の様相

 全国的に空き家が急増し、問題となっています。その様相は二つくらいに分けることができそうです。一つは、市街地内で放置されたが適切に管理されていない空き家が、防災・防犯や景観の面で阻害要素になっていることです。いま一つは、有効利用できていない住宅が増えることから、人口減少につながることです。特に都市部では、住宅適地は限られているため、これを有効利用できなければ、今日的な課題である都市のコンパクト化に反することにもなりかねません。

焦点は持ち家の空き家

 上述のように空き家問題をとらえるならば、焦点となる空き家は、持ち家の空き家が中心となります。何故ならば、賃貸住宅であれば、不動産資産として活用することが基本ですから、居住者が転出すると賃貸市場に供給され、次の居住者を迎えることが通常です。また、老朽化等によって居住者を得ることが難しくなれば、撤去や建て替えなどを行うことが基本で、空き家のまま放置して無駄な固定資産税等を支払い続けることは少ないと考えられます。
 一方、持ち家の場合、居住者の死亡や転居によって空き家になっても、不動産資産としての活用意欲が賃貸住宅に比べて弱く、手続の煩雑さや、当該家屋の市場価値の低さ、世間体などから、売却、賃貸化、撤去などにつながらないことが多いことが、各種調査で報告されています。ちなみに、日本政策投資銀行グループの価値総合研究所が平成25年11月に実施した「消費者(空き家所有者、空き家利用意向者)アンケート」をみると、「空き家になった理由」として「親所有の住宅を相続したから」という回答が44%を占め、「空き家のまま保有している理由」として「将来、条件があえば売却・賃貸」が44%、「売却・賃貸のつもりはない」が28%となっていて、不動産活用の意欲の弱さが示されています。

持ち家の空き家の推移

 以上の認識から、持ち家の空き家に着目し、近畿圏(2府4県)における平成20年から平成25年にかけての府県別空き家の推移をみると、下表のとおりで、滋賀県を除いて5年間で概ね1~2割の増加を示しています。現時点でも大きな問題となっている空き家が、引き続きこのペースで増加するのか、あるいは更にペースアップして増加するのか、たいへん気になるところです。
なお、滋賀県の増加率は1%と著しく低く、全国の他県と比べても二番目に低く(第一位は東京都、第三位は青森県で9%)、極めて特異な数値であることから、今後の考察は滋賀県を除いて進めることにします。


資料:「住宅・土地統計調査」(総務省,各年)

高齢化との関係

前述のアンケートの「空き家になった理由」で、「親所有の住宅を相続したから」という回答が多かったように、空き家と高齢化には大きな関係がありそうです。


資料:持ち家の独居老死亡者数は国勢調査(平成22年)と人口動態調査(平成22年)を用いて算定し、
年平均空き家増加数は住宅・土地統計調査(平成20年、平成25年)から算定した。

資料:国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)」、
国勢調査(平成22年)人口動態調査(平成24年)を用いて推計した。

 そこで、近畿圏(滋賀県を除く)の府県別に、国勢調査(平成22年)による単独世帯の世帯主の男女年齢(5歳)階級別世帯人員と、人口動態調査(平成22年)による男女年齢(5歳)階級別死亡率を用いて、持ち家独居老人(65歳以上)の年間死亡者数を推計し、前述の住宅・土地統計調査による年平均空き家増加数との関係を整理すると、上の図のように強い相関を確認することができます(相関係数R=0986)。
 このグラフを機械的に読むと、持ち家の独居老人死亡者数の8割程度が、空き家につながることを示しています。実際の空き家の発生は、転居によるものが加わるなど、単に独居老人の死亡だけから説明できるものではありませんが、極めて大きな規定要因であると言えそうです。

空き家の将来動向

 前述のように空き家の発生に、独居老人の死亡が大きく影響するとすれば、今後の本格的な高齢社会の到来に応じて、空き家の発生は急激に増えていくことが危惧されます。そこで、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)」による都道府県別の男女年齢(5歳)階級別将来人口を用いて、空き家の将来動向を予測してみましょう。
 対象年次としては、2025年と2040年とし、男女年齢(5歳)階級別将来人口に、男女年齢(5歳)階級別の独居率と持ち家所有率と死亡率を乗じて求めます。なお、独居率と持ち家所有率は府県別に国勢調査(平成22年)から設定し、死亡率は全国一律で人口動態調査(平成24年)から設定し、将来も変わらないものと仮定します。
 こうして推計した結果は左下図のとおりとなり、各府県とも急増することがわかります。特に大阪府の増加は著しく、2010年の年間10千人弱から2025年には20千人弱と2倍に急増しています。他の府県も、高齢化が既に先行している和歌山県を除いて、2010年から2025年にかけて7~8割増となっています。

空き家の対策

 様々な空き家対策が、各地で試みられています。空き家の倒壊等に対して条例を制定し、適正に管理するよう助言、指導、勧告、命令及び氏名の公表ができるようにしている自治体もあります。また、倒壊の恐れのある住宅の解体費用補助や、再活用や用途転用の支援も始まっています。
 しかしながら、倒壊まで至らないが、市場価格が低い家屋については、対策の決め手がないのが現状のようです。民間事業者のノウハウを活用しながら、それを公的に支援するような官民連携型の新たな試みが、今後、強く求められてくると思います。

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2015年3月1日発行

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