アルパックニュースレター190号

商店街活性化の担い手継承プロセス
~博士論文のご紹介~

執筆者;持続・魅力のまちづくりチーム 依藤光代

 この春博士号(工学)を取得しました。業務にも関係するので、論文の概要をご紹介します。

なぜいま、商店街活性化の担い手継承なのか?

 商店街では店主の高齢化と後継者不足が問題になっており、それに伴い商店街活性化のための取り組みもまた、担い手が不足して継続が難しくなっています。これまで活動の担い手に関する問題に対し、担い手を個人レベルで詳細にとらえた研究はありませんでした。
 本研究では、これまで光を当てきれていなかった担い手のつながりや継承プロセスについて、現場で詳細に調査し、必要な支援などについて展望することを目的としました。
 調査対象は、活性化を目指して元気な取り組みを続けている3つの商店街です。一連の活性化活動(数年~数十年間)について、資料や新聞などによる文献調査と担い手や関係者に対するヒアリング調査を行い、一つひとつの活動の主体や予算などの詳細と、組織や構成員の状況などを整理しました。同時にヒアリングの内容を参考に、担い手間のつながりの変化と活動内容の変化について解釈し、担い手の継承プロセスを分析しました。

担い手のタイプ

 活性化活動に取り組む体制に着目して、3つのタイプの商店街を対象としました。一つ目は「外部主体連携型」で、行政や観光協会などの外部の主体が商店街に関わるタイプです(鳥取県境港市の水木しげるロード商店街)。二つ目は「既存主体連携型」で、一つの商業集積として単位商店街組織が枠を超えて連携するタイプです(奈良県生駒市の生駒商店街)。三つ目は「新規主体拡大型」で、担い手の世代交代を含め、これまで活動に協力してこなかったような若い店主を巻き込みながら取り組むタイプです(大阪府東大阪市の小阪商店街)。

継承が発生するきっかけ

 商店街を取り巻く状況は、例えば再開発事業による競合店の出現などによって大きく変化し、そうした場合に担い手には新しい戦略や行動が迫られます。状況は変化するのに取り組みが対応しきれず商店街から活気がなくなっていく、という危機感が商業者の間に生まれ共有された時、次の活動の担い手が内側から現れます。新規主体拡大型では「まちゼミ」などの新たな事業をきっかけにして、前リーダーからのスキル面や活動資金面でのサポートを受けることにより、リーダーのスムーズな世代交代が見られました。しかし常に穏便にバトンタッチできるとは限らず、別のケースでは現状の活動のやり方に疑問を抱いた商業者が仲間を募り、活動の主導権を実質的に奪うことによる継承も見られました。


「100円商店街」の様子(生駒駅前商店街)

継承に不可欠なポイント

 行き詰った活動への解決策を打ち出せるアイデアやノウハウと、新たな担い手間のネットワークが、継承の鍵となります。
 商店街のネットワークの特徴は、「地縁」に加え、「志」によってつながる「志縁」が存在していることです。地縁は隣近所のお付き合いの関係であるのに対し、志縁は後天的に形成され、組織を超える場合もあります。例えば「この人となら新しい活動にチャレンジできる」と思えるような、熱い信頼の関係が志縁です。この志縁ネットワークが担い手間に形成されていることが、継承に至るために非常に重要です。それは、会議への出席などの表面的な付き合いだけではなく、商店街活性化に向け汗を流して共に取り組む中で、互いの考えや熱意を認め合う時に形成されます。その意味では一時期流行った「プラットフォーム」は形成しただけでは意味がなく、その後の実際の活動がいかに行われるかがポイントになります。

商店街でのリーダーシップ

 会社組織と異なって商店街組織には権限の構造がなく、商店街の関係者を束ね動かしていくのは簡単ではありません。商店街で活性化活動の中心的な担い手が果たすべき機能は、「問題解決機能」「資金調達機能」「ネットワーク機能」に分けて考えられます。
 問題解決機能は活性化に向けた戦略を定めるものです。資金調達機能は問題解決の方法と連動し、例えば補助金を活用する場合などは外部主体によって補われることもあります。以上が定まれば、商業者に協力してもらうため、地縁・志縁のネットワークが働きます。活力を失っている商店街の多くは、この仲間内のネットワークが弱まっていることが多いようです。
 これらの機能を担う人を「リーダー」とすると、3商店街ではいずれも、担われ方や担う人は違えど、しっかりとリーダーらによって分担され、また途切れることなく次のリーダーへと継承されていました。

商店街支援のあり方とは

 担い手の継承のためには、リーダーへのスキルの蓄積と商業者間の志縁ネットワークが形成される必要があり、そのためには商業者が中心になって活動を実践していくことが必須です。その上で、外部主体連携型では、専門的なスキルやノウハウを持った外部主体による支援が前提であるため、安定的な支援のために例えば「タウンマネージャー」として専門家を位置づけることが考えられます。また既存主体連携型では、長期にわたって同一のリーダーが中心となってがんばるのが特徴で、それを継承するためには新規主体拡大型の継承プロセスのように、まちゼミなどの新たな事業に取り組むきっかけを捉え、参加店が集まるフラットで緩やかな作戦会議を毎月開催するなどして、次なる担い手の間にネットワークを生み出すところから始めるのが有効です。このように一つの商店街でも、担い手の状況に応じて柔軟に取り組みの体制を変えていくことが考えられます。
 商業者間にネットワークが全く存在しない場合、伊丹市の「まちなかバル」のように市民も加わり実行委員会を設立して事業のきっかけをつくるケースも見られ始めています。このように、商店街・行政・専門家だけではない、多様な主体を巻き込むことによる様々な連携の方法を、今後模索していく必要があります。

これからに向けて

 お仕事で関わるきっかけを得た商店街で、調査研究をさせていただくことができ、まさに事業が展開していく「現場」で見聞きした、実践で得た経験やヒントを基に考えることができました。今後は一人の研究者として、現場に携わる専門家として、また子育てしながら働く生活者として、商店街やまちと関わっていきたいと思います。
 最後になりましたが、一年間育休をいただくことになりました。来年の春には復帰予定ですので、これからもよろしくお願いします。


「まちゼミ」開催に向けた準備会議(小阪商店街)

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2015年3月1日発行

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