アルパックニュースレター190号

『ECO未来都市を目指して~産業都市尼崎の挑戦~』
(AIR叢書 創刊号)

編者:公益財団法人 尼崎地域産業活性化機構 発行:清文社 紹介者;地域産業イノベーショングループ/高田剛司


本表紙

 本書を刊行した公益財団法人尼崎地域産業活性化機構(AIR)は、尼崎市の地域と産業の活性化に寄与することを目的として設置された団体です。前身の「尼崎市産業振興協会」と「あまがさき未来協会」の合併を経て、長年、尼崎市のシンクタンクとしても活動されています。
 尼崎市は、大阪市に隣接し、「産業都市」として全国に知られていますが、古くは産業と環境の問題、近年では、グローバル化や産業構造の変化による企業活動やまちへの影響など様々な点で「課題」先進都市の一面を持ち続けてきました。また、尼崎市は、昭和45年(1970年)の55万人をピークに人口が減少しはじめ、平成22年(2010年)には45万人となり、約10万人も減りました。その意味では、いち早く人口減少社会を経験してきた都市であるといえます。このような「課題」先進都市であるからこそ、独自の調査研究で、地域の正確な実態を把握し、政策提言につなげることの意義は大きく、調査研究成果についても、毎年、セミナー等の形で発信されてきました。
 今回、これまで以上に対外的な情報発信を強化するため、AIR叢書が創刊されたことは、「地域自らが考え、行動すること」が一層求められる今の時代において、非常に重要な取り組みであるといえます。
 さて、本書の内容ですが、創刊号は、環境モデル都市として選定された尼崎市の取り組みを中心に「環境」と「産業」について特集が組まれています。また、「尼崎の歴史と産業の変遷」や、これまでの「尼崎市の産業政策」の全体像が分かる章も設けられており、先進的な都市産業政策を行ってきた尼崎市の「これまで」と「今」を理解することができます。執筆者は政策に携わった市職員のほか、学識経験者、商工会議所役員、企業経営者、NPO理事など多彩な顔ぶれで、立場が異なるからこそ、多面的な視点で尼崎の産業と都市をとらえた内容となっています。
 そして、「研究報告」の章では、尼崎地域産業活性化機構の調査研究室の研究員による「経済センサスからみた尼崎の小地域の特性」と「尼崎中小製造企業の海外進出に関する実態」が執筆されています。前者は経済センサスのデータを活用して、市域内部の事業所数や従業者数の変化を小地域ごとに捉え、特徴を整理する試みであり、後者はインタビューにより個別企業の事業活動の実態を把握し、海外展開は必ずしも産業空洞化論とは結びつかないことを論じています。いずれも、貴重な調査結果となっており、それらの結果を尼崎市の政策にどう結び付けていくかが、今後、大事になるといえるでしょう。
 出版元である清文社やアマゾンなどからオンラインでも購入できますので、地方自治体の産業政策や都市政策に関心のある方は、ぜひ参考にされてはいかがでしょうか。

アルパックニュースレター190号・目次

2015年3月1日発行

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