レターズアルパック203号

地域に寄り添って地方創生を考える その21
~医療など多様な都市機能の集積で成長する南風原町~

執筆者;代表取締役社長 森脇宏

通常の企業誘致型ではない南風原町

 ここ数回の連載では、地方部で参考になる人口増加自治体として、工場団地や交通インフラの整備によって企業誘致に成功した市町村を多く紹介してきました。今号では、これまで紹介してきたような企業誘致ではなく、別のタイプで成長してきた市町村について、その要因を考察します。具体的には、当連載の「その17」(199号)において、地方部で参考になりそうな市町村を選定しましたが、その中から、2015年の国勢調査でも引き続き人口が増えており、近隣の地域中心的な都市のベッドタウン的側面を持つ町村として、沖縄県の南風原町を選定し、考察を深めます。なお、同様のタイプとして、東川町(北海道)や北谷町(沖縄県)もありますが、東川町は当連載の「その14」(195号)で既に紹介していますし、北谷町は米軍関係者が住民の3割程度もいて統計分析が困難なため除外しました。

人口も流入者も増えている南風原町

 まず南風原町の人口推移を図1にみると、増加傾向が続いています。特に1970年から1990年にかけて急増しているのは、この間の自然動態と社会動態がともに増加していたことによります。1990年以降の増加が緩やかになっているのは、社会動態が増減を繰り返し始めたためで、それでも人口増加が続いているのは、自然動態の増加で支えられているためです。
 また、通勤通学流動をみると、南風原町に常住する15歳以上の就業者・通学者の65%、約11千人が町外に通勤通学で流出し、しかもその46%が那覇市に流出していますので、那覇市のベッドタウン的な性格が強いと言ってもいいでしょう。これは、南風原町への転入者の多くが、那覇市からの転入であることからも確認できることです。
一方で、南風原町に従業・通学している方の60%、約10千人が町外から流入していますので、単なるベッドタウンではなく、町外からも従業・通学者を引きつける吸引力も持っています。こうして、流出者数も流入者数も多く抱えながら、昼夜間人口比率は96%と自立性の高い指標を示しています。


  

南風原町産業を牽引する医療産業

 それでは、どうして南風原町は町外から従業・通学者を吸引できているのでしょうか。南風原町の就業者の産業別構成比(従業地ベース)を整理すると表1のとおりで、沖縄県や全国と比べると、「医療、福祉」が22%と極めて高くなっています。
 信和会・沖縄第一病院、医療法人正清会・久田病院、医療法人フェニックス博愛病院と、比較的規模の大きな6つの医療機関が集積していることが大きく寄与していると思われます。これは戦前、旧陸軍病院が南風原町にあったことも影響しているかも知れません。
 いずれにせよ、那覇市都市圏において、医療という都市機能を担う地域として、南風原町が発展してきたとみることができます。


  

医療産業を補完する多様な産業

 さらに再度表1をみると、「医療、福祉」ほど高くはないものの、就業者数の構成比が沖縄県や全国と比べて高い産業として、「卸売業、小売業」の18%、「教育、学習支援業」の5%、「生活関連サービス業、娯楽業」の4%が挙げられます。また、全国に比べると低いものの、「製造業」の6%も沖縄県の中では相対的に高いと言えるでしょう。したがって、これらの産業も、「医療、福祉」を補完して、南風原町の吸引力を支えていると考えることができます。そこで、これらの産業を担っている事業所等を確認することにします。
 まず、「卸売業、小売業」については、イオン南風原ショッピングセンターをはじめ、広域幹線道路沿いのロードサイト店が支えていると思われます。
 「製造業」については、従業者数の業種別構成比を図2にみると、印刷・同関連業が56%と圧倒的なウエイトを持っています。これは南風原町内にある印刷団地の存在が大きく貢献しています。すなわち、沖縄の印刷業界は、復帰前から組織化された事業活動を行っており、1970年に沖縄印刷工業団地協同組合が発足し、南風原町内に約1万坪の用地を確保し、1973年に沖縄県第1号の高度化事業「印刷団地」が竣工し、組合員各社の工場移転がなされ、その後、第5次までの補完事業を経て今日に至っています。なお、南風原町が主産地となっている琉球絣や南風原花織も、繊維工業として8%というウエイトを占めています。
 さらに「教育、学習支援業」については、沖縄県立高校が2校(開邦高等学校[中高併設]、南風原高等学校)があり、沖縄県唯一の視覚障害者を主な教育対象とした沖縄県立沖縄盲学校もあります。
 「生活関連サービス業、娯楽業」については、一般的な洗濯・理容・美容・浴場業に加え、沖縄唯一のアイススケートリンクを持つスポーツワールド・サザンヒルや、シネマコンプレックスの映画館サザンプレックスなどがあります。


  資料:工業統計(2014年)

まとめ

 以上の考察を踏まえ、南風原町の人口増加の要因は、三つの側面から捉えることができます。
 まず一つは、沖縄県の多くの市町村に共通する特徴ですが、たいへん高い出生率に支えられた自然増によるものです。この沖縄県の高い出生率の理由については、今後、この連載の中で考察する予定です。
 二つ目は、隣接する那覇市のベッドタウンとしての人口増加です。那覇市と結びつくバス網が充実しており、近年の住民アンケートでは、転入の理由として、交通や買い物の利便性が上位に挙がっています。
 そして三つ目が南風原町の大きな特徴ですが、町内に従業・通学する方が増えていて、昼間人口も着実に増加させており、単なるベッドタウンではなく、仕事や教育の拠点的な性格も発展させていることです。この三つ目の発展は、那覇都市圏の中で独自の都市機能を強める形で実現できており、特に比較的規模の大きな医療機関の集積が大きく貢献しています。また、医療機関だけでなく、大規模ショッピングセンターや、協同組合による印刷団地、(人口3万数千人の町ながら)県立高校2校の立地、特徴的な娯楽施設等、多様な事業所の立地も補完していると思われます。したがって、これまで紹介してきた工場誘致を大きな梃子にして発展してきた事例とは様相が異なり、県都である那覇市に隣接する立地条件を活かし、那覇都市圏の中で、独自の都市機能の集積を図っているのが成功要因と捉えることができます。



レターズアルパック203号・目次

2017年5月1日発行

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