レターズアルパック206号

「文化芸術立国」に向けた西日本の取組

執筆者;地域産業イノベーショングループ/江藤慎介

 オリンピック・パラリンピックは「スポーツの祭典」であると同時に「文化の祭典」としても知られています。特に2012年のロンドン大会では、イギリス全土で18万件の文化プログラムが実施されたことで注目を集め、2020年の東京大会でも全国津々浦々で20万件の文化プログラムを実施する予定です。
 なぜここまで文化芸術に注目が集まっているのでしょうか。文化芸術は創造性の源泉であり、また相互を理解し多様性を受け入れる土壌となっていますが、それだけではありません。人口減少社会が到来し、全国で地方創生の取組が進められる中、近年では文化芸術資源を活用した経済活性化(文化GDP)や、教育・福祉・まちづくりにおける社会的課題の改善、社会的包摂など、文化芸術が生み出す社会への波及効果に対する期待が高まっています。また、平成29年6月には「改正文化芸術基本法」が成立し、その中で地方公共団体は「地方文化芸術推進基本計画」を定めることが努力義務として定められています。日本全国で「文化芸術立国」に向けた機運が高まっています。
 西日本の自治体でも、文化芸術を活用した様々な取組が始まっています。「スポーツの秋」と並ぶ「ゲージュツの秋」に、皆さんも久しぶりに文化芸術に触れてみてはいかがでしょうか。(以下、弊社が関わった自治体の面白い取組をご紹介します)

錦帯橋を背景とした芸術祭の開催/山口県岩国市

 世界に類のない木造橋「錦帯橋」が架かる岩国市は、平成27年12月に「岩国市文化芸術振興条例」を制定、翌年3月に「岩国市文化芸術振興プラン」を策定しました。「文化芸術が彩るこころ豊かなまち~世界へ、そして未来へ~」の実現に向け、重点プロジェクトの一つとして「錦帯橋千年プロジェクト」に取り組んでいます。錦帯橋の架け替えに係る技術継承等を通じて、市民の自信や誇り、アイデンティティの確立につなげるため、また錦帯橋の魅力を高め、観光等につなげていくため、平成28年11月にシンボルプロジェクト「錦帯橋芸術祭」が文化庁の補助事業等を活用して開催されました。篝火に照らされた錦帯橋を背景に、特設ステージでの演奏など様々な文化イベントが実施され、市民や観光客が楽しみました(平成29年11月に第2回を開催)。
(弊社は条例制定及びプラン策定支援等に携わりました)


錦帯橋芸術祭(錦帯橋と篝火)

オーケストラが主導する社会的包摂の取組/大阪府豊中市

 平成29年1月にグランドオープンした「豊中市立文化芸術センター」は、指定管理者の共同事業体として日本センチュリー交響楽団が携わっており、その画期的な運営体制に注目が集まっています。楽団は「音楽あふれるまち」をめざす豊中市と連携し、「とよなか音楽月間」等に取り組んできましたが、他にも「音楽創作ワークショップ」を通じて若者の就労を応援するプログラム「The Work」や、楽器に触れて体感する「Touch The Orchestra」、ブリティッシュ・カウンシルと連携した「音楽を通して高齢者の生活の質の向上を目指す国際連携プログラム」等の社会的な取組を実施しています。また、豊中市南部の庄内地域では、当楽団や大阪音楽大学、市民活動団体等と連携し、音楽家と市民や子どもたちが参加する「世界のしょうない音楽祭」や「庄内つくるオンガク祭」が行われています。
 このような取組から豊中市は、平成27年度に大阪府内で初めて文化庁長官表彰(文化芸術創造都市部門)に選出されました。今後も(仮称)豊中文化ファンドを活用した文化芸術振興等に期待が寄せられています。
(弊社は豊中市文化芸術推進プラン策定や改訂に携わっています)

こどもを中心とした創造都市の推進/香川県高松市

 かつて「讃岐の芸どころ」として栄えた高松市は、2010年から始まった「瀬戸内国際芸術祭」の開催地として賑わいを見せています。「瀬戸芸」の経済効果は100億円以上と言われていますが、波及効果はそれだけではありません。瀬戸芸をきっかけとした移住者による新しい取組が続いており、観光客を迎える新しいホステルの開業や、現代サーカスを基軸とした国際創作サーカスフェスティバルの開催等が進んでいます。また、瀬戸内海に浮かぶ男木島では、Uターンが進んだことから、廃校の小学校が再開しました。
 こうした高松市では、平成25年に「高松市創造都市推進ビジョン」を策定しました。当ビジョンの特徴として、創造都市の推進の一分野として「こども」を位置づけていることが挙げられます。その代表的な事例として、高松市ではイタリアのレッジョ・エミリア市の取組を参考に全国に先駆け、保育所・幼稚園に芸術士を派遣する「芸術士派遣事業」が実施されています。絵画・彫刻・パフォーマンス・デザイン・工芸など、様々な分野で表現活動する作家は、子どもたちの感性や創造性を引き出す「芸術士」として、市内40の保育所・こども園・幼稚園で活動しており、芸術士の活動は市外・県外にも広がっています。
(弊社は高松市創造都市推進ビジョン策定に携わりました)


レターズアルパック206号・目次

2017年11月発行

特集「スポーツ」

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