アルパックニュースレター184号
シンポジウム「大阪のエリアマネジメントの現状とこれから」
21世紀は「エリアマネジメント」の時代
21世紀の人口減少時代のまちづくりにおいては、「まちをつくる時代」から「まちを使う時代」に、パラダイムシフトしていくと言われて久しいです。しかし、実際に現場で市民や事業者の方々が「まちを使っていく」ためには、今なお色々な規制やしがらみがあります。また行政が限られた予算の中で、スクラップ&ビルド型で全ての公共施設を再整備していくのには限界があり、どのように既存ストックを適正に維持管理し、さらに有効活用を図っていくかが重要な課題となってきています。このような時代において、地域の良好な環境や地域の価値の維持向上に、住民、事業者、地権者が主体的に取り組んでいく「エリアマネジメント」が着目されています。
トークセッションからシンポジウムへ
CITEさろん(注1)では、昨年9月から11月までの3回にわたり、「地域の魅力を創造・向上するエリアマネジメント」をテーマに、大阪の各地域(梅田、難波、あべの・天王寺)においてエリアマネジメントの実践で活躍されているキーマンによるトークセッションが連続開催されました。さらにその成果を発展させる形で、今年1月に全国からエリアマネジメントの第一人者の方々を大阪にお迎えし、「大阪のエリアマネジメントの現状とこれから~官民連携による、その地域ならではの特性を活かしたエリアマネジメントの実践」と題したCITEまちづくりシンポジウムが開催されました(アルパックは、各イベントの事務局支援と司会進行等をお手伝いさせていただきました)。
課題を共有し、解決に向けて行動する活動
シンポジウム前半の小林重敬先生(東京都市大学)の基調講演で特に印象深かったのは、「まずエリアが抱えている課題を共有し、その解決に向けて行動する」必要があるという事です。「エリアが擁している資源を活用し、エリアの活性化に関係者が協働して取り組む必要がある。」との提唱は、今、改めて「何のためにエリアマネジメントを地域で行うのか」という目的を地域で共有する必要性を再認識する場となりました。現在、規制緩和や組織のあり方、資金調達等のエリアマネジメントの手法が着目される中で、「地域の課題を解決するために、関係者が協働により持続的に取り組む」という、その姿勢こそがエリアマネジメントの核心であると再認識しました。
エリアマネジメントと関係性
もう一つの重要なキーワードが「関係性」。エリアマネジメントは、「(1)開発時点から管理・運営を「関係」づける。(2)管理・運営時点での公民の「関係」を構築する。(3)多様な地域関係者間の「関係」を構築する。(4)開発後の効果・管理運営の効果を評価する、(5)エリアマネジメント活動の財源を確保する等、つまり地域の信頼関係、互酬性の規範、ネットワーク(絆)による社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)の構築に向けた協働活動である」と。このように考えると、エリアマネジメントが、今後のまちづくりには欠かせない概念であることが理解できます。
![]() 小林重敬氏 |
![]() 会場の様子 |
全国のエリアマネジメントの現場から
後半は、嘉名光市先生(大阪市立大学)をコーディネーターとして、グランフロントの大規模開発や梅田全体のエリアマネジメントに取り組んでおられるグランフロント大阪TMOの廣野研一氏(三菱地所株式会社)、規制市街地におけるゆるやかなエリアマネジメントに取り組んでおられるミナミまち育てネットワーク設立の立役者の和田真治氏(南海電気鉄道株式会社)、高松丸亀町商店街の小規模連鎖型再開発をコーディネートされている西郷真理子氏((株)まちづくりカンパニーシープネットワーク)、全国初の都市再生整備推進法人で札幌大通り地区を舞台にまちづくり貢献事業を展開されている服部彰治氏(札幌大通りまちづくり株式会社)の面々による白熱したパネルディスカッション。当日は、時間が足りないくらい充実した現場での知恵や工夫、そしてまちづくりへの熱い想いが会場一杯に拡がりました。
理念の共有と多様性の確保
特に、パネルディスカッションをお聞きして感じた事は、先ずは地域の中で危機感と共にまちづくりの理念を共有する大切さです。美しいまち、賑わいのあるまちなど、人々をひきつける魅力溢れるまちは、地域できちんとデザイン、マネジメントしていかないと、放っておいては持続していかない時代であるという認識を共有することの大切さです。そしてその実現のためのツールとして、地域ルール(ガイドライン)、まちづくり会社や市民ディベロップメントによる多様な活動・事業、民間による公共施設の維持管理、地域で集客する独自性のあるプロモーション活動、それを支える多様な資金調達の方法、そして地域で稼いだ資金を地域に再投資していく地域経済循環の仕組みを、地域で構築し地域で活用していく必要があるという事だと感じました。

パネルディスカッションの様子
今年は「エリアマネジメント元年」
大阪市では、現在、大阪版BID制度の創設に向けて、制度検討会での議論が進んでいます。また、国においても2012年の都市再生特別措置法の改正により民間主体の活動のみを計画事業とする都市再生整備計画の策定が可能となり、さらに2014年2月に、民間投資の喚起を軸とした中心市街地の活性化を図るため中活法の一部を改正する法律案が閣議決定されました。いよいよ地域再生に向けた地域によるエリアマネジメントを実践していく時代がやってきました。
注1)魅力ある大阪のまちづくりを推進するために、公民が連携して取り組むため、民間団体で構成された組織。(平成4年1月設立)
詳しくはhttp://citesalon.jp/









