アルパックニュースレター164号

ワシントン村の街並み管理

執筆者;大阪事務所 坂井信行

 生け垣やフェンスのないオープンな外構、ツーバイフォー工法の建築、ペールトーンの外壁、ビルトインガレージ、ゆとりのあるバックヤード…。三田市のカルチャータウンにあるワシントン村は、「本物の」高質な北米型郊外住宅地の実現を目指した全国的にもユニークな街区です。
 街区内の道路沿いには各敷地から緑地を出し合って緑化ゾーンを設け、その地下を電線などの埋設空間とすることで無電柱化を実現しており、オープン外構とも相まって非常に開放感の高いストリートスケープを生み出しています。ワシントン村の住宅所有者は、街区内のビレッジセンターを共有する区分所有法上の管理組合を組織し、緑化ゾーンを共同で管理しています。独特の街並みは管理組合の規約に基づく協定により守られてきました。建物の改修などを行う場合には管理組合に届け出ることになっています。ただ、建物の色彩をはじめ細かな部分は協定に具体的な規定がないため、個別の協議の結果が内規として積み重ねられてきました。
 1991年の分譲開始から20年を経て建物の改修ニーズが高まったこと、また当初は建て売り分譲でしたが、近年は建築条件付き(いわゆる「売り建て」)で分譲されていることなどから、具体的な街並み保全ルールを明示する必要性が高まりました。このため、協定の細則という形でより具体的なルールが定められることになりました。色彩については全戸調査を実施し、新たに基準が作成されました。折しも同じタイミングで三田市による景観計画が策定され、細則の一部は景観計画にも反映されています。
 私は、ワシントン村のルールづくりに関わらせていただきましたが、これまで運用されてきた内規をベースにしているとは言うものの、中には新しい規定に抵触する住宅もあり、いざ明文化するとなると様々な意見がありました。そんな中、ある住民の方が発せられた言葉が印象に残っています。「ルールはお互いに気持ちよく暮らしていくためのもののはず。ルールの議論でぎすぎすした関係にはなりたくない。」
 ニュータウンの居住者にはできあいの環境を「買った」と考える人が多いと言われますが、ワシントン村のコンセプトもいわば開発者から与えられたものです。目指すまちの方向性を改めてみんなで確認し、共有していくプロセスを経て初めて「わがまち」となるのではないでしょうか。今回のルール化はそのきっかけとして絶好の機会だと思います。
 ワシントン村ではルールの担保性を高めるために景観地区の指定も視野に入れられています。今後もまちの魅力を持続的に維持していくためには、街並みの管理にとどまらず、まちづくりの視点から総合的なタウンマネージメントに取り組んでいくことも求められるのではないでしょうか。


高質な北米型郊外住宅地の実現を目指したユニークな街区

道路際に設けられた緑化ゾーン