アルパックニュースレター193号

コンペとプレゼ

執筆者;名誉会長 三輪泰司

 2020年・東京オリンピックの新国立競技場の建築と、エンブレムのデザインを巡って、国民的?論議が賑やかです。
 アルパックは、事業コンペ・建築コンペはじめ、いろんなコンペに関わり、豊かな経験を重ねてきました。プレゼンテーションもさることながら、そもそも我々のコンペ参加はどうあるべきか、考える時期でもあります。

アルパックとコンペ~多様な参加方法

 アルパックのコンペ参加形態は、圧倒的にコンペティターとしての参加であることは、昔も今も変わりませんが、コンペの企画運営から審査委員、プロフェッショナル・アドバイザーまで、実に多彩です。そこにシンクタンク・プランナーとしての存在意義があります。コンペの全体像を理解することによって、コンペティターとしてのプレゼンテーションのレベルも上り、究極は、社員一人ひとりが審査等を経験することで、技量・見識・倫理の向上を達成できるのです。
 今日、地域計画から建築まで、計画・設計・施工の選定や調達の方法は、多様になっています。公共セクターから始まって、価格だけで決める入札から、総合評価方式が増えているように、公正・公平の確保は時代の潮流です。
 アルパックは、シンクタンク・プランナーとして、地域計画や施設計画の基礎調査から、基本計画まで受託しますが、それに続く基本設計・実施設計を、一貫して受託する場合もありますが、事業主体に「これはコンペにしましよう」と提言し、実行したケースが多くあります。
 変わったところでは、1990年10月、基本計画から造成設計・建築設計まで遂行した大阪府立花の文化園で、文化環境形成事業として「野外彫刻」の指名コンペの運営を受託し、審査委員も務めています。
 実施設計をコンペにすると、アルパック自身の受託業務は、コンペの企画・運営だけで、受託額は少なくなりますが、社会的責任観によって信頼・信用が高まり、存在意義を示し、結果としてステイタスを上げ、より重要な地域プロジェクトを任せられるプランニング・コンサルタントとして成長してきました。

基本は地域づくり~MAが本来の姿

 1996年9月14日、滋賀県立大学をメイン会場に、日本建築学会・96/滋賀大会が開催されました。その時、故内井昭蔵教授の主宰で、シンポジウム「景観形成とマスター・アーキテクト方式」のパネラーとしてプレゼンテーションをしました。
 滋賀県立大学キャンパスは、内井教授がMA(マスター・アーキテクト)を務め、6つの建築チームに基本コンセプトを示し、実施へとまとめて実現されたのです。これは、土地所有が単一の行政財産で、施設の目的は一つで、数が複数という最も単純にして基本的なケースです。官公庁施設及びその他一部民間(ホテル・スポーツ等)の一体的整備を図る「シビックコア地区整備」は、土地所有が単一で施設の目的が複数になるケースです。
 個々の施設の設計をしないMAという存在は、極く普遍的で、コンペの企画運営・審査委員と同様の専門的職能であって、昔からあり今後も増える職能です。アルパックが都市計画を基幹技術に、建築・ランドスケープ等「総力を結集する」方法論と修練が求められるゆえんです。これは見方を変えてビジネスとしてみると、アルパック独特の営業戦略です。

コンペの王道~コンペ規準を学ぶ

 新国立競技場で“みっともない日本”を世界にさらけ出した根本は「責任の不在」でした。
 UIA(国際建築家連盟)は、ユネスコの構成機関ですから、その「国際建築・都市設計競技規準」は、1978年のユネスコ第20回本会議で採択され、加盟各国へ勧告されました。わが国も批准しています。京都駅ビルのコンペに先立って、UIAと協議しました。UIA日本支部でもあるJIA(日本建築家協会)の国際設計競技委員会と協議し、「規準」に準拠し、コンペ要綱の承認を得ることで合意しました。
 「規準」には、事業主体はコンペ主催者の、審査会長指名権、プロフェッショナル・アドバイザーの任命権(第9条)が決められています。審査に関しては会長が絶対の責任と権限を持ちます。アドバイザーは、技術委員会を編制し、要綱・法規に違反していないか、構造・コストに問題はないかチェックしますが、不適格であっても、はずす権限はなく、その旨を審査会に報告し、審査会が判断します。アドバイザーは審査会の最後に、決定について委員全員の署名をとり、主催者へ報告してその職務を終わります。
 実は、わが国で国際コンペと呼べるのは、東京国際フォーラムと、京都駅ビルしかありません。京都駅ビルのグランド・オープンから既に18年。記念誌もありJIAや建築学会にも報告していますが、継承されていないようです。


 

 

京都駅ビルコンペ審査風景/1991年5月7日・都ホテル

出典:「新しい京都駅ビル」

国際コンペと継承~得意とすることから

 21世紀。グローバル化は必然の流れです。ただ、カントリー・リスクはつき物ですから綿密な調査が必要です。
 2000年1月、アルパックは国際コンペに参加しました。大連市人民政府から指名を受け、当選し、コンペ要綱の規定によって基本設計までを受託しました。「日式風情一條街」(楓林街歴史建築保持型改造事業計画提案)で都市設計のコンペです。チーフ・プランナーは中根博一、技術士という国際ライセンスを持つ三輪がデイレクターを務めてプレゼをしました。この成果を受け、金井相談役は得意の港湾計画をもって「旅大新港計画」へと継承・展開しました。


大連:プレゼンテーション予行風景

プレゼの技法と評価~技術の奥を養う

 コンペ運営や審査も熟達してきました。プレゼテーションと質疑のやりとりの「時間」が大事です。そこでは、代表権者なり統括責任者の「やる気」を感じとります。今は、パワーポイントでの映像から音響まで使い、プレゼンテーションの技術がたいそう進歩していますが、その技術の背景が大切だと思います。人格・教養とでも言いましょうか。詩や、和歌・俳句に親しんでいると言葉に表れます。
 表現は映像を写真によるとしても、基礎は「デッサン力」です。絵の上手下手ではなく、デッサン・スケッチの修練は、茶道・華道等の素養とともに、想像力や作法・所作となって表れます。更にその背景は「観察」でしょう。我々の地域計画とは、ロケーションとコンテンツの結合にありますが、何で結ぶかといえば、ハートです。
 春・夏・秋・冬、四季を見、味わい、嗅ぎとりましょう。朝・昼・夜を見て感性を磨きましょう。暮らしの営みに、豊かな人間愛を感じとりましょう。
 そして、それを引き出すコンペ運営と見つける審査に熟達しましょう。


UIA:国際建築・都市設計競技規準の表紙(5ヶ国語で書かれている)