アルパックニュースレター193号

地域から少子高齢化への対応を考える その12~北海道で人口が増えている自治体の増加要因を考える(1)~

執筆者;代表取締役社長 森脇宏

 前号では増田寛也氏(元総務大臣)の編著による「地方消滅」(中公新書)を取り上げ、その論点を簡単に紹介するとともに、その内容について考察しました。今号から、同じく「地方消滅」で「未来日本の縮図」として取り上げられている北海道に着目し、市町村の持続性について考察してみます。「地方消滅」では、北海道の厳しさを指摘するとともに ニセコ町、中標津町、音更町の持続可能性が高いことが簡単に紹介されていますが、その要因については、ニセコ町を除いて、あまり論じられていませんので、今後の参考事例とするには情報不足の感があります。そこで以下では、他の自治体の参考になる北海道の市町村を独自に抽出し直し、その要因について考察していきます。

人口増加の市町村は1割未満

 国勢調査による人口が、2005年から2010年にかけて増えている市町村を北海道で抽出すると、表1のように札幌市を含めて16市町村が該当します。道内には179市町村が存在しますので、増加市町村が1割にも満たないこと自体が、北海道の厳しさを語っています。
 また、昼夜間人口比率(昼間人口/夜間人口)が 90%未満は、地方中核都市に依存するベッドタウンだと考えると、函館市、旭川市、帯広市のベッドタウンで人口が増えていますので、「地方消滅」の中で圏域のダム機能が提案されていた論拠としてとらえることができます。しかし、その肝心の中核都市自身の人口が増えていないことは、圏域の将来も不安定だと言うこともできます。この点は、人口が増えている札幌市、苫小牧市についても同様なことが言え、中核都市自身は人口増を示していますが、その周辺のベッドタウンでは人口が増えておらず、圏域ダム機能論の限界を示しているとも考えられます。

参考になりうる市町村の抽出

 表1の16市町村から「通常の市町村にとって参考になりうる市町村」を抽出するため、次の4つの性格を持つ市町村は除外することにしました。
 すなわち、(1)地方中核都市(札幌市、苫小牧市)、(2)ベッドタウン(七飯町、鷹栖町、東神楽町、音更町)、(3)特殊要因がある市町(千歳市:空港等、恵庭市:自衛隊、京極町:揚水発電所建設)、(4)2005年あるいは2000年まで人口減少が継続していた町村(月形町、中札内村、更別村)を除くと、ニセコ町、東川町、芽室町、中標津町、計4町が抽出されます。


 

 さらに、これら4町の自然動態と社会動態を整理すると図1のとおりになり、中標津町が社会減を自然増でカバーしていることから、社会減に悩む市町村の参考になりにくいと考え、参考事例をニセコ町、東川町、芽室町の3町に絞りました。


 

3つの町ごとの5歳階級別女性の推移

 社会増がある3町について、どのような年齢階層で増えているのかをみるため、それぞれの町ごとに女性の5歳階級別人口を5年ずらして比較してみました。
(ニセコ町)若い子育て世代が中心の転入
 ニセコ町でみると、例えば平成17年に15~19 歳であった女性は平成22年には20~24歳となり、該当する人口は減少していますが、それより年上では様相が大きく変わり、平成17 年に20~59歳であった女性は、平成22年には概ね増加しています。特に、平成17年に25~34歳であった年齢階層が最も多く転入しており、若い子育て世代の女性が中心に、転入してきています。
 ただし、平成17年の0~4歳の階層も増えていますが、子育て世代の増加に比べて少なく、子どもを伴うファミリー層の転入は、それほど多くはないようです。
(東川町)幅広い年齢階層で転入
 東川町では、幅広い年齢階層で増えているのが特徴です。少しグルーピングすると、平成17年の0~14歳の子ども世代、25~44歳の子育て世代、50~64 歳の中高年世代が、それぞれ増加しています。おそらく子ども世代と子育て世代はセットで、ファミリー層として転入し、中高年世代はリタイア等を契機に転入していると推察されます。
(芽室町)結婚前の女性とファミリー層が中心の転入
 芽室町では、平成17年の0~9歳の子ども世代と、20~54歳という子育て世代とその前後の年齢階層で、概ね増加しています。特に、平成17年で20~39歳の転入が多く、結婚前の女性と子どもを抱えた若いファミリー層が、転入者の中心を占めています。
 こうした若い女性の転入に伴い、少子化問題も今は生じていないようで、0~4歳の平成17 年と平成22年を比べても、それほどには減ってはいません。事実、図1で確認したように自然増も実現できています。


 

社会増の要因は次号で考察

 以上のように特徴は様々ですが、3町とも社会増があり、人口も増えています。こうした社会増を実現できる要因については、次回以降で考察していくことにします。