アルパックニュースレター168号
田園都市論に基づき開発された西向日のまち
向日市の西向日駅周辺に広がる西向日のまちでのまちづくりの取組を紹介します。
西向日のまちは、昭和4年に阪急京都線西向日駅前で田園都市論に基づき住宅地が開発されました。現在も開発当初の道路骨格、ロータリー、噴水公園が残り、約300本の桜並木がまちを彩り、戦前の住宅も数多く、昭和初期の都市近郊住宅地の歴史を受け継いでいます。
このようなまちで、平成20年に地区内でマンション計画が持ち上がり、周辺住民を中心に反対運動が起こります。市では平成20年7月に「向日市まちづくり条例」を制定、住民のまちづくり活動の支援を開始しており、「西向日の桜並木と景観を保存する会」は「地区まちづくり協議会」の第1号として認定されます。
平成21年に京都府都市計画課から景観まちづくりアドバイザー派遣の要請があり、平成22年3月に景観まちづくり勉強会の講師を勤めました。これを契機に西向日のまちを歩きましたが、昭和初期のたたずまいをそのままに残し、住民のまちへの思いが街並みの表情に現れ、京都市周辺の住宅地の中で最高ランクのたたずまいであると確認しました。
平成22年度から市の依頼でまちづくりアドバイザーの支援を開始し、併せて平成22年度「住まい・まちづくり担い手事業」の活動支援で府下で唯一のまちづくり活動地区として選定を受けました。
以下に平成22年度の実施した西向日のまちづくりをご紹介します。

桜並木が連続する西向日の通りの表情
桜祭りと夏祭りの実施
まちの資源である桜並木への住民の関心を高め、地域コミュニティの向上を図るために「桜祭り」を開催しました。噴水公園のまわりでコンサートを実施し、夜は桜のライトアップに取り組みました。また、8月に「夏祭り」を実施し、夜店やコンサート、桜のライトアップの催しに約500名の方が集まりました。2つのイベントは、桜並木の街並みを紹介する風物詩として育っています。
桜並木のまちを語る会
西向日のまちの魅力の再確認、PRおよび住民のみなさんにまちの歴史や資源の再認識を通じてまちへの誇りと維持する思いを共有することを目的に、「桜並木のまちを語る会」を連続開催しています。
平成22年度は住宅開発の歴史や桜並木の保全、まちの文化人についてなどのテーマで5回開催しました。多くの市民の参加で、普段知ることのできないまちの歴史や資源、文化的価値を学ぶことができたと高い評価を得ています。
![]() 第1回桜祭り(平成22年4月4日) |
![]() 第1回夏祭り(平成22年8月22日) |
桜並木の現況カルテの作成
地区内の約300本のソメイヨシノの桜並木について、住民と行政の協働による維持、再生を図る取組を検討することを目的に、住民主体ですべての桜のカルテとマップを作成しました。平成23年度は引き続き調査、清掃活動、植樹を行い、住民主体の「桜並木保全ルール案」の作成を目指します。
「西向日まち物語」の発行
西向日のまちの資源と魅力を把握するために、「まちの資源と魅力調査」を実施しました。そのまちの資源と魅力を紹介する冊子「西向日まち物語」を西向日の住宅史を併せて編集して発行しました。
「西向日桜並木のまち憲章(案)」の策定
以上のような取組を踏まえ、会の1年間の活動成果として会メンバーの総意を得て、「西向日桜並木のまち憲章(案)」を策定しました。平成23年度はこの憲章案を広く西向日自治会全体に広報し、まち憲章として、地区まちづくり計画策定につなげていきます。
なお、以上の会の活動成果については「住まい・まちづくり担い手事業」の活動報告書で公開しています。また、「西向日まち物語」はアルパックのHPでご覧頂けます。
西向日地区のこれからの活動の展開
保存会は平成22年度、住まい・まちづくり担い手事業の支援を受け、まちづくり学習会、イベントなどを実施し、住民のまちづくり意識の向上を図り、「西向日桜並木のまち憲章(案)」の策定に至りました。平成23年度はさらに桜並木の保全、住環境の保全、継承の活動を進め、まち憲章を西向日自治会の総意として、向日市まちづくり条例に基づく地区まちづくり計画案を策定し、市に計画案の提出を行うための活動を展開していきます。
また、新たに、地区内の歴史的建造物の保存活用への取組および市内のまちづくり活動団体との連携を進め、市の景観まちづくりの推進にも貢献することを目的に活動をさらに発展していきます。
平成23年6月12日に開催した第6回語る会で、関西大学名誉教授の永井規男先生にご講演をいただきました。その講演の締めくくりで先生から以下のような提案を頂きましたので最後にご紹介し、この取組を目標にさらに頑張っていきます。
(永井先生の講演からの抜粋)
西向日のまちに残る、桜並木、噴水公園、ロータリー、戦前の住宅と生垣、石積みの街並みなどは、どれも十分に「登録文化財」の価値と資格を有しています。是非とも市と協力して登録文化財の指定を目指していただきたい。

藤井厚二氏の作と伝えられる石積み
アルパックニュースレター168号・目次
ひと・まち・地域
- 精華町立ほうその保育所が完成しました/京都事務所 三浦健史・廣部出
- 田園都市論に基づき開発された西向日のまち/京都事務所 石本幸良
- 草津市における景観計画の策定にかかる基本方針づくり/京都事務所 石井努









