アルパックニュースレター168号

草津市における景観計画の策定にかかる基本方針づくり

執筆者;京都事務所/石井努

 平成22年度に、草津市で景観計画基本方針づくりが進められました。
 草津市も構成員の一員となっている滋賀県は、全国的にみて「元気」な自治体といわれており、草津市はその中にあって、現在でも人口増加が続いている地域となっています。
 元気なまち、草津市の景観づくりの取組は、平成22年の11月に景観計画策定委員会が立ち上がり、12月末から1月末にパブリックコメントを実施、23年2月には市長へ答申という、タイトなスケジュールで策定が進みました。その後、3月には景観行政団体となる旨を県から公示され、この6月には同団体へ移行することになります。
 策定委員会の委員長は、かつて草津市史の編さんや古地図の編さんに携わられた人間文化研究機構の機構長金田章裕先生です。
 短期間で集中的に開催された策定委員会では、活発な意見交換が繰り広げられ、草津の景観的特性として、「山地や丘陵地が少なく、平地が多いことから、「空」が広く美しく見える」といった意見や、「遠望がきくため、スカッと晴れた日には米原の伊吹山が見える」といった意見などが出され、こういった特性を活かした基本方針づくりが進められました。
 「伊吹山が見える」といった意見について、草津市から伊吹山の距離を考えると、最初は少々の疑念がありましたが、現地調査を行っていく中で晴れ渡った日があり、何気なく遠くを眺めていると、思いのほか大きな「伊吹山」を眺めることができ、大変驚いた記憶があります。
 そもそも、なぜ草津市で景観づくりを進めていく必要があるのか?という疑問をもたれるかもしれません。
 草津市は、かつての東海道、中山道が通っており、草津宿の本陣をはじめとしてかつての町並みといった歴史的景観がみられる他、田園の広がる市域の西側は琵琶湖に面しており、美しい水面と、比叡山や比良山といった湖西の山並など、自然的景観を楽しむことができます。
 一方、駅前は高さ100mを超える集合住宅など、高層建築物が林立し、県内でも特筆すべき都市景観が形成され、中心部から市域東側のなだらかな丘陵部にかけて中低層の住宅地や工業地が混在し、コンパクトな市域でありながら、多様な景観的要素がひしめいています。
 ただ、京都・大阪のベッドタウンとして急成長してきた経緯があり、「群馬の草津温泉と間違われる」といったことも耳にすることもあり、まちのアイデンティティをどこに求めるのか、真剣に考えなければ、市民のまちへの愛着も深まることはないと思います。
 この点については、多くの草津市民も考えておられ、平成21年度策定の第5次総合計画では「ふるさと」という言葉が将来ビジョンに位置づけられています。
 今回の景観づくりの取組をきっかけに、市民の地域への愛着が深まり、地域の活性化につながっていくことが期待されます。


広大な田園と鎮守の杜、向こうには雪化粧をした比良山地を望む