アルパックニュースレター176号

大谷幼稚園・竣工!

執筆者;大阪事務所/高坂憲治・三浦健史

 JR・地下鉄六地蔵駅から東に上った御蔵山団地の一角に、大谷幼稚園は位置します。定員280人の幼稚園です。昭和41年創立から40年が経ち、園舎の老朽化、耐震性能不足により、建て替えを行いました。お手伝いし始めてから足かけ3年、工事がすべて終了して、9月から子どもたちが園全体を遊びまわるようになりました。私たちが力を尽くして取り組んだ大谷幼稚園についてご紹介します。

園の保育と藤田前園長先生

 大谷幼稚園の子どもたちは、自由気ままによく遊び学びます。先生たちは、良い意味で細かいところに固執せず大らかに保育されています。そこには伝統が息づくと共に、藤田昭彦前園長先生の保育に対するお考えが反映されています。先生がよくおっしゃったのは、「大きな樹のような園舎」ということでした。様々な意味が込められていると思いますが、一つには、雨露さえしのぐことができれば、あとは子どもたちが遊び、学びを工夫して作り出すのだ、ということだと思います。大変残念なことに今年4月に藤田先生は亡くなられましたが、先生の熱意は私たちにも伝わりました。


園舎全景

作りこまない大らかさとお気に入りの場所

 子どもたちそれぞれが様々に遊び、学べるように、その仕方をあまり特定したくないと考えました。そして多様な遊びや学びの空間を、園全体で実現させることを目標としました。もう一つに、子どもたちそれぞれのお気に入りの場所ができれば、と考えました。いろいろなあり方で、いろいろな居場所がある、ということはとても大事だと考えます。これらの考えは、屋内と屋外をつなぎ広がりの可能性を持たせた保育室、保育室と園庭の間の土間的に使われるロッジア(開廊)や、回廊、ワークスペースの構成によって実現をめざしました。


保育室

バス通園の玄関

通路としてだけでなく遊びや食事の場になる回廊

 敷地内には高低差があり、南側に宇治陵という藤原氏の陵墓があるなど、高低差の処理は難しいところでしたが、このことを逆に活用して回廊を設けました。回廊はバス駐車場につながっており、バス通園の子どもの玄関となります。上下や左右で視線や声が通り、子どもたちが立体的に遊び、先生の見守りもしやすくなっています。行きどまりがないので、ぐるぐる走り回る子もいます。宇治陵の木が近いので、お天気のいい日は回廊でお弁当を食べたりもします。また運動会の日は保護者の観覧席となります。このように、回廊は幼稚園の生活に無くてはならない場所になっています。

いろいろな使い方を許容するクラスを超えたワークスペース

 一方、園舎内部のワークスペースも無くてはならない場所です。保育室をつなぐように設けたワークスペースはクラスを超え、年齢を超えた園児の活動の場です。そこでもいろいろなことが起こっています。時間にしばられずに制作・創作活動に取り組んだり、黒板があるので落書きをしてみたり、大型の積み木で基地を作ったり、読書スペースだったり、等々。回廊とワークスペースだけでなく、あらゆる空間が遊びの場、学びの場となっています。

彩りを添えているステンドグラス

 全体的にはラフな感じにしていますが、重ね色目を元に選んだ日本の伝統色をポイントで入れました。また主任の竹田先生がデザインされたステンドグラスもとても素敵に仕上がり、園舎に彩りを添えています。


遊び場にも

ワークスペース

発展する姿

 他にも、四季を感じられる樹種や畑、秘密の隠れ家スペースなど特色には枚挙に暇がありません。今後樹木がどのように育っていくのか、使われ方が発展していくのか、とても楽しみです。今回の建て替えでは将来展望を見据えて可変性を持たせています。預かり保育室やクッキングルーム、それに隣接して食堂としても使われる多目的保育室などは、保育内容の広がりや制度の変更にも対応できるようにしています。

最後に

 藤田前園長先生の薫陶を受けた主任の竹田先生をはじめ先生方、新しい園長になられた佐賀枝先生、細川専務理事をはじめ真宗大谷学園本部の皆様、施工を担当した竹中工務店と私たちが一体となって実現した幼稚園です。関係者の皆様にすばらしい経験を共有できたことを感謝するとともに、大谷幼稚園が子どもたちに末永く愛されていくことを願っています。


奥には秘密の隠れ家

グランド