アルパックニュースレター181号

お盆

執筆者;名誉会長 三輪泰司(NPO平安京・代表理事)

 前号と一緒にお送りした宛先確認葉書で、たくさんご意見を頂きました。私宛にも25通のお言葉を頂戴し、ありがとうございます。7・8月は、お盆で、忙しくしておりました。

いのちの繋がり

 我が家の菩提寺・天性寺さん(京都市中京区)には猛暑の中を8月11日に、拙宅へおまいり頂きました。家内の実家も、いつの間にか、長老の部になってしまい、面倒みるようになっています。少し早く7月18日に城崎温泉の極楽寺へ参上し、西垣天道師のお話しを伺いました。
 お盆には、お精霊(ショウライ)さまと呼んでいる祖霊が、一年に一度、家の仏壇へ還ってこられます。お迎えする行事があれば、お送りする行事もあります。8月16日、京都の五山送り火は、世界に類を見ない信仰を軸とする都市的スケールのイベントですね。
 お盆は、祖先から自分へ、自分から子孫へ、生命の繋がりを感じる時です。世代から世代への継承は、家でも企業経営体にとっても、とても大事な課題です。

世代継承の知恵

 お盆におまいりに来た妹に良いことを教わりました。後期高齢者医療被保険者証の裏に、臓器提供の意思表示をする欄があります。本人署名と家族の署名が要ります。妹は連れ合いがいないので、兄さん署名してというので、サインしました。実は運転免許証でも同じ趣旨の意思表示をすることができます。これで、確実に自分のDNAが人類の未来へ繋がって行きます。
 臓器の全てでなくともよいのです。眼球だけでもよいのです。
 家でも企業でも、全て伝えようというのは無理です。自分がそうですが、創業者というのは、次世代へ、何もかも伝えたくなるものです。自分でも父や祖父の教えをそっくり受け継いでいないのにです。
 アルパックで言えば、西山夘三先生の教えの十分の一も受け継いでいないでしょう。

家訓と家風

 世代継承は、心がけとかで達成しようとしても無理です。そこで、何か仕組みとか、ルールで出来るだけ正確に継承しようとします。
 老舗の「家訓」や社是・校訓は、その一つの知恵だと思います。
 アルパックで言えば、性格規定の「プランニング・コンサルタント」であり、組織原則の「小集団のアソシエイツ」がそうで、そのための行動規範には、定例会議厳守などがあります。
 世代継承のカギは、やはり「人」。人と人の繋がりであり、人を育てること。それは父祖の教えでした。私の家―本田・三輪家には三ヶ条の「家訓」があります。その第3条「家の子は宝、慈しみ育むべし」。家の子とは、従業員と協力者のことと教わっていました。実際、祖父は夜学と称して、丁稚たちに教育をしていました。皆、尋常小学校を出ただけという時代です。読書き、算盤から、なんと論語まで講義していました。そのモチベーションはなにか、歴史を探求してみました。明治という時代の大激変に行きあたりました。祖父はその父・二代目丹波屋茂助・廣吉を尊敬していたのです。私の曽祖父です。同志社英学校の創立者・新島襄に協力した山本覚馬と同世代です。禁裏御用商の立場をいかし、東京遷都で難しい目にあっていた宮家・公卿と、新島襄の間に立って働いていました。周囲からは耶蘇の学校のために宮さんの家を渡すとはと非難されたが意に介せず、奔走したと伝わっています。
 因みに今の六代目まで、同志社出身です。こうして家風・社風・学風が出来て行くのでしょう。
 アルパックも46年。たくさんの方々のご縁を頂いてきました。
 お盆の行事は、めいめいにアイデンティティを確かめ、使命を自覚させる先人の知恵だと思います。