アルパックニュースレター166号

エコアパートの正体と将来と~花園荘を訪れました~

執筆者;大阪事務所 嶋崎雅嘉

 東京都足立区にそのエコアパートは建っています。その名は「花園荘」。4世帯が暮らす小さなアパートです。
 このアパートがほかのアパートと違うのは、玄関の前に「畑」があるのです!
 畑には、季節の野菜が植えられており、冬にはネギや大根、夏にはナスやトマトなどが収穫できます。「ちょっと○○ちゃん。前の畑で大根引っこ抜いてきてちょうだい」そんな声が聞こえてきそうです。
 この畑には、塀のような仕切りがありません。「お隣の畑、トマトが鈴なりだわ」「うちのナスと交換しましょうか。スパゲッティにするとおいしそう」そんな会話が生まれます。
 道路からアパートに入るとき、建物の脇にブドウ棚の下に小さなテーブルが置いてあります。「おかえり。ちょっとお茶入れるから飲んでいく?」住んでいる人同士のつながりが広がります。
 アパートの部屋の中は、冬でもとても暖かいのです。子供たちはいつもシャツ一丁で遊んでいます。お日様からの熱を上手に部屋の中に取り入れているから、エアコンを使うことはとても少ないそうです。電気代は普通の4割くらいだとか。


玄関の前には畑

 花園荘の大家さんはこんなことを言ってました。
「この畑や畑でとれた作物は、このアパートの人同士のつながりを作ってくれています。そしてこのつながりは、どんどん外に広がっていくのです」
 アパートの敷地の脇に、なんと「ピザ窯」まで作られています。入居している人のお友達100人くらいで開いたパーティーの中で、「デリバリーピザもうまいけど、ここでピザが焼けたらどんなにおいしいか」「よっしゃ作ろうぜ」てな感じで大工さんやタイル屋さんが作ってくれました。
 暮らしている人も、その友達も、アパートを建てた大工さんたちも、大家さんも、まるで、この花園荘をみんなで使って楽しんでいるようです。
 そう、花園荘は、楽しい暮らしを創造するための「ハコ」。楽しく暮らすことがみんなの幸せだと大家さんは考えています。
 畑付アパートは、単なる「エコ」な住宅ではなく「住んでいる人やまちの人を幸せにする住宅」だったのです。
 住宅政策は「量」から「質」へと言われて久しいですが、「質」の中身をもっと多様にとらえることが必要ではないでしょうか。「広さ」「バリアフリー」「耐震」「省エネ」などの質の高さを競ってきていますが、「住生活」を正面からとらえ、「幸せに暮らす」ための「住まい」や「まち」のあり方をデザインしていくことが大切だと感じます。
 花園荘のような住宅がもっと世の中に増えていくことをイメージしたいと思います。
※花園荘についての詳細は、「畑がついてるエコアパートをつくろう(自然食通信社)」をご覧下さい。


テーブルは住人同士のつながりの場

大工さん、タイル屋さん手づくりのピザ窯