アルパックニュースレター166号

大阪・野田のななとこまいり

執筆者;大阪事務所 高田剛司

 子どもの頃から聞きなじみがあり、まんが日本昔話にも登場人物(?)としてよく出てくる「おじぞうさん」。関西の各地域では、夏の地蔵盆を通じて、子どもの頃から慣れ親しんでいる人が多いようです。しかし、現代において新興住宅街やマンション暮らしの人にとっては、おじぞうさんにあまり触れ合う機会がありません。私もそのうちの一人です。
 そんな中、昨年12月のある日曜日、着地型ツアー「OSAKA旅めがね」のプログラム“路地の迷宮と開運パワースポットめぐり”という野田のまち歩きに参加しました。
 今年5月4日には大阪田駅ビルのオープンを控え、周辺でも大規模開発が相次いでいる大阪駅から環状線内回りに乗って2駅目。野田駅を降りて南に広がるエリアは、戦災から免れ、大正や昭和の長屋や路地が残る大阪でも貴重な、懐かしい空間となっています。そこには、今も11体のおじぞうさんがいて、それぞれの個性を放っています。地元では「おじぞうさんを七つお参りすると願い事が叶う」という「ななとこまいり」の言い伝えがあるそうで、身近な神さまが人々の暮らしや気持ち、まちへの思いにも密接に関わっているようです。


出世じぞう

新たなおじぞうさん

 おじぞうさんは、それぞれに名前や由来など何らかの意味を持ち、お顔の表情も個性豊かです。小さなお堂に入り、きれいな前掛けで着飾って、花が供えられているおじぞうさんを見ると、おじぞうさんを大切にしている地元の人の気持ちが伝わります。中には、「化粧じぞう」というおじぞうさんもいて、地蔵盆の日には、子どもたちが、一年に一度の化粧直しをするそうです。
 たまたまツアー当日は、通所介護施設兼地域交流サロンに改装された旧民家の庭で、新しいおじぞうさんがお披露目された日でした。地元の方のご好意で私も見学させていただき、おじぞうさんを通じて、お年寄りと子どもたちの交流の一端を垣間見ることができました。新しく地域に加わった、赤いほっぺのおじぞうさんも、みんなの笑顔を見て、なんだか嬉しそうでした。


野田の路地空間