アルパックニュースレター178号

大阪市港区ワークス探検団の取り組み~小学生による中小企業訪問活動

執筆者;代表取締役会長/杉原五郎

 このたび、大阪市港区ワークス探検団(小学生による中小企業訪問活動)に大阪府中小企業家同友会のメンバーとして参加しました。

キャプテンラインの船に乗船

 2月9日(土)の朝、地下鉄大阪港駅の改札口に、小学生と保護者を含めた港区ワークス探検団築港班総勢30名余りが集結した。
 一行は、天保山の船着き場に急ぐ。キャプテンライン(大阪港内を運航する船会社)で働いているのは船長以下関係者すべて女性とのこと。港区天保山を出発し、湾岸道路の橋げたの下をくぐって、対岸にある此花区USJまで約10分ほど。キャプテンラインを経営する昭陽汽船の崎山社長は、子どもたちに熱心に話かけてくださった。
「ボーっと警笛を一回鳴らしたら左旋回、2回鳴らしたら右に旋回、3回鳴らしたら後ろに後退」

通関業って、何をしているの

 天保山に戻って、通関業を営むインターフォワードシステムズという会社を訪問。ここの社長は、女性の中本社長。コンクリート打ちっぱなしの洒落たオフィスの2階に行くと、子どもたちと保護者、サポーターを含めた全員の椅子が用意されており、受け入れ企業の好意的な雰囲気を感じた。
 昨年4月入社の新人社員による説明には、子どもたちの目線に合わせようとの努力がにじんでいた。「着ているもののタグをみてみよう」と言われて、子どもたちは着ている服のタグを点検することになった。すると、中国製、米国製、フィリピン製など、それぞれのタグにはっきりと製造元の国籍が示されている。輸入した製品にも輸出する製品にも関税などの手続きがいる。その仕事をしているのが通関(つうかん)業と説明を受けて、子どもたちはなんとなく納得した様子。
 一通り説明を受けて、事務所の近くにある20フィートコンテナ(約6m)を見学。中は意外と広く、子どもたちは感激していた。


キャプテンラインの船上での説明

中華料理の実演とチャレンジ

 12時過ぎに3つの班(築港班、磯路班、弁天・市岡班)は地下鉄弁天町駅近くの港区民ホールに集合。萬集楼という地元の中華料理店がこの日のために作ってくれた弁当をわいわい言いながら食べた。小学生39人と保護者15人に、同友会、社会福祉協議会、コミュニティ協会、まちづくりセンター、学生ボランティア、地元メディアなど全体で90名余。
 昼休みの休憩時には、大きな中華鍋に塩を入れて、萬集楼の社員(同友会会員)によるチャーハンづくりの実演。ほとんどの子どもたちがチャレンジしたが、簡単そうにみえてなかなかうまくいかない、それがプロの仕事と実感したようだ。

最後は、全体でワークショップと発表会

 午後は、午前中の企業訪問活動で体験した感想を出し合うワークショップ。ファシリテーターを務めた女子学生のボランティアは小学生を相手にとまどい気味であった。時間が経つごとに少しずつ雰囲気もくだけてきて、子どもたちは思い思いに、企業訪問活動の感想を模造紙に書きこんだ。
「トラックの部品販売をしている社長の笑顔が素晴らしい」
「木材会社を訪問して、鍋の敷物を作成できてよかった」
「船を運行している会社の船長と社員すべてが女性というのがすごい」
「通関業は、貿易をしていくうえでなくてはならない仕事というのがわかった」
 感じたままを率直に話す子どもたちを、後ろで見守る保護者のあたたかい視線が印象的であった。

港区ワークス探検団の意義

 今回の取り組みは、2012年の夏頃から、港区役所と大阪同友会(中央ブロック憲章政策委員会)が協働して準備してきた。中小企業家同友会としては、地域にある中小企業のありのままの姿を小学生にみてもらい、仕事を実際に体験してほしいというのが真の狙いだった。次世代を担う子どもたちのキャリア支援として大きな意義があると考え、「経済を牽引し、社会の主役である」と前文に謳われた中小企業憲章(2010年6月、閣議決定)の理念を具体化する取り組みでもあった。
 私は、今回の港区ワークス探検団の取り組みを通じて、子どもたちが「学ぶこと」「働くこと」そして「生きていくこと」の意味を考えるきっかけになればと思った。


企業訪問後のワークショップ