アルパックニュースレター196号

御堂筋の道路空間再編、始まる。
~世界の観光客が闊歩するメインストリートに向けて~

執筆者;都市・地域プランニンググループ/絹原一寛・中井翔太
地域再生デザイングループ/中塚一・羽田拓也

 ニュースレター191号「動き出した、ミナミ御堂筋沿道のまちづくり」でもご紹介した、御堂筋の道路空間再編。千日前通以南(難波交差点~難波西口交差点間)の東側街区、約200mをモデル整備区間として、側道を自転車通行空間化し、歩道を拡張する整備がスタートしました。

モデル区間整備協議会による対話

 大阪市の整備方針が発表されたのが、平成27年2月。町会・商店会と、関係まちづくり団体である「なんば安心安全にぎわいのまちづくり協議会」「ミナミまち育てネットワーク」、ミナミの御堂筋沿道の不動産オーナーによる組織「ミナミ御堂筋の会」が、「千日前通以南モデル区間整備協議会」を設立し、大阪市建設局と意見交換を進めてきました。
 具体的には、側道閉鎖に伴う荷卸し等への影響や、自転車の通行方式、沿道のデザインなどについて話し合われました。その経過を経て、整備内容が固まり、この3月1日から側道が閉鎖され、工事が始まっています。当初スケジュールより延びましたが、現在のところ平成28年秋頃に完成の予定です。
 側道閉鎖という商業活動等への影響の大きい整備に対して、協議会という対話のテーブルが用意され、関係者への周知が図られたことで、合意形成が円滑に進んだのではないかと思います。

整備後もモデル区間をめざして

 現在、協議会では、整備後の運用のあり方に議論の主題を移しており、特に、歩道が拡張されることにより沿道の放置自転車が増える危惧から、駐輪問題について議論を重ねています。
 かねてよりミナミでは放置自転車対策に力を入れ、官民で永く取り組んでこられた経緯があります。駐輪場の整備、駐輪禁止区域の指定に撤去の重点化。ミナミエリア全体で平日には1か月に約40回、年間約500回の撤去を行っているそうですが、それでも放置自転車は後を絶ちません。行政も地域もできることに取り組んできましたが、それでも解決しない問題。新しい発想、知恵が試されるところです。
 ビルによっては自社で警備員を雇い、周辺の警備で放置自転車の抑制に成功しているところもあります。現地をつぶさに見ると、停められる場所は概ね監視の目が行き届いていないところに集中しています。これらの点を線につなげられるような仕掛けも、一つのヒントではないかと思っています。
 今国会に「道路協力団体」制度の創設を盛り込んだ道路法の改正案が提出されています。地域の主体がルールを共有し、責任を持って公共空間を管理していく流れは、間違いなく拡大していくものと思います。モデル整備を行う御堂筋でも、そうした展開を目指していければと思っています。

対象位置・対象区間の図
 対象位置・対象区間の図 出典:大阪市建設局報道発表資料

 

  

インバウンドに沸くミナミ、飛躍にチャンスに

 今、夜のミナミを歩くと、異国かと見間違うほど大勢の海外観光客であふれ返っています。人気の飲食店は海外からのお客が行列を作ります。デジタルサイネージも中国語表示が増えました。「LCCの旅程からか夜8時~9時頃から入店する観光客が増えますね」と、老舗の方の談。民泊で話題となっているアメリカのAirbnb社が今年に訪れるべき地域を発表し、大阪市中央区が圧倒的な首位に輝いた、というニュースもありました。
 これは余談ですが、インバウンドの影響から、前述した警備員が観光客に道を聞かれるケースが増えているそうです。なんでも平日でも1日150件、休日は200件近くとか。観光案内並みの件数です。
 現在、「なんば安心安全にぎわいのまちづくり協議会」では難波駅前の広場化をめざし、関係者との協議をスタートさせています。御堂筋の整備が先行しましたが、ミナミのゲートウェイとなる広場化が実現し、まちづくり法人等による集客イベント、警備、観光案内などのサービスが御堂筋も含めて事業化できれば、世界の観光地として肩を並べられる空間になるのではないか・・・・そんな大きな夢を思い描きつつ、関係者が努力しているところです。
 インバウンドを一過性のものとせず、世界からのリピーターを呼び込める場所になる。ミナミはそうした飛躍のチャンスを迎えています。関係者が力を結集し、ミナミからの大きなムーブメントを起こしていけるよう、我々も力を注いでいきたいと思います。

断面図・整備イメージの図 出典:大阪市建設局報道発表資料
 断面図・整備イメージの図 出典:大阪市建設局報道発表資料