アルパックニュースレター196号

「土佐茶」

執筆者; 地域産業イノベーショングループ/片山麻衣(高知県出身)

編集委員会から

 日本には、歴史・気候・風土などの違いから多種多様な食文化があります。アルパックには、様々な地域出身の所員がいるので、今号から所員の生まれ育った地域で親しまれているソウルフード(郷土料理)やご自慢の食材などをご紹介させていただきます。

土佐茶(高知県)

 高知市内から北西に約40分、いの町の険しい山中をひたすら車で進む。車酔いしやすい私は、半ばここに来たことを後悔し始めていた。「到着したよー。」という声で、ふと顔を上げると目の前に拡がっていたのは、太陽の光を浴び、青々と茂っている茶園。高知にもこんな場所があったのか、と驚いた。
 実は高知県は、隠れたお茶の産地であることをご存じだろうか。生産量は多くないが、その品質の良さから、主に静岡等の一大産地のブレンド用として流通している。
 「土佐茶」の産地は主に、仁淀川流域にある、仁淀川町、佐川町、日高村などである。ミネラルが豊富な地層、日照量の少なさから昼夜の寒暖差が少なく、霧が発生しやすいという土地柄のため、そこで栽培された茶は、香りや風味が強いという特性をもつ。
 大学生時代、知り合いのお茶屋さんでアルバイトをしたことがある。商店街の一角で、お客さんの目の前でお茶を煎り、「いらっしゃいませーっ。高知のお茶はいりませんかぁー。」と呼びかける。そこに集まってくれたお客さんは、初めて土佐茶を買う人、もう土佐茶しか飲めない人など、人それぞれだが、皆が口を揃えて、「お茶の香りに誘われてきた」と言う。香りが強い土佐茶の成せる技だなと、思ったものである。
 正直、まだ茶の良し悪しがはっきり分かるわけではないが、一口飲むとほっとする自分がいる。日本人だから、と一言で片付けるのは、なぜだか少し惜しい気がする。
 今度、高知に帰ったときには、久しぶりにあのお茶屋さんを訪ねてみよう。商店街に漂う、どこか懐かしいあの香りを頼りに。
 皆さんもほっと一息つきたいときには、「土佐茶」を飲んでみてはいかがだろうか。

いの町(山に自生している茶園)
 いの町(山に自生している茶園)
佐川町の茶園
佐川町の茶園
佐川町の茶園
佐川町の茶園