アルパックニュースレター196号

観光都市京都の「公衆トイレ」事情
~観光客者急増を踏ん張り支える縁の下の力持ち~

執筆者; 地域再生デザイングループ/石井努

「蛇口屋稼業 因 東司」(株式会社カクダイ)
 「蛇口屋稼業 因 東司」(株式会社カクダイ)

 京都市は、今や世界レベルの観光都市になりました。平成26年の来訪者数は、過去最高の5,500万人を超え、アメリカの旅行誌「トラベル+レジャー」の人気観光都市ランキングで、2年連続の一位を獲得しました。宿泊外国人観光客も過去最高を記録し、前年比60%以上アップの183万人(平成26年)と、ものすごい勢いで増加の傾向が続いています。
 近年、観光地のホスピタリティとして、「トイレ」に注目が集まっています。京都市でも、観光に関する調査の中で、トイレに対する不満の声も目立つようになり、「京都観光振興計画2020」では、観光地のトイレの環境整備が位置づけられており、トイレ環境の向上に力を入れつつあります。
 京都市には、公園等に併設されたものを含めると、400箇所近くの公衆トイレが設置されています。にもかかわらず、「観光地にトイレが少ない」といった声に加えて、「トイレが汚い」、「和式しかない」といった声も多いようです。折しも、「観光都市」を標榜し、インバウンド観光が急増する状況で、観光客が多い場所でのトイレ環境の充実は、京都市にとって急務ともいえるのです。
 昨年、今年と、我が社では京都市の公衆トイレに関する調査業務を受託し、(15年ほど前に京都市の公衆トイレの業務を担当していたOBである藤さん(現(一社)地域問題研究所))の業務実績・ノウハウ等を活用させていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。)調査の中で、一風変わったトイレ、一際きれいなトイレがあることに気づきました。それらのトイレはネーミングライツの契約がされており、命名権の売却の他に、設備の提供やメンテナンスの提供も受けているトイレでした。
 現在、京都市では、3つの公衆トイレでネーミングライツ契約を結んでいますが、今年度以降、更に契約箇所数の増加を図るとともに、約20箇所のトイレで便器の洋式化や多目的トイレの整備等に着手する予定となっています。合わせて、地域の集会所や社寺等の民間施設、個人のトイレを観光客に開放する「観光トイレ」の制度を拡充しています。


 ネーミングライツ名称:「京都東山トイレ診断士の厠堂」
(株式会社アメニティコスモス, 株式会社スマイル, 有限会社レグルス (3社共同契約)

 その他にも、生活習慣が異なる外国人観光客向けに、4か国語表記でトイレの使い方を説明した啓発ステッカー(和式・洋式別)を公衆便所に貼る、といった対策もとられています。
 今後、快適なトイレが増えるのはもちろんのこと、京都に縁のあるユニークな名前のトイレや独創的なしつらえのトイレが、まちのそこかしこに見られるようになれば、京都の観光も一層楽しいものになっていくのではないでしょうか。

4か国語対応のステッカー
 4か国語対応のステッカー