アルパックニュースレター196号
「モテるまちづくり まちづくりに疲れた人へ。」

「モテるまちづくり まちづくりに疲れた人へ。」表紙
今から6年前の平成22年(2010年)。当時まだ20代後半〜30代前半の、京都や滋賀を中心にまちづくりに携わる行政職員やコンサルタント、研究者が集まり、とある研究会が結成された。今後人口減少が生じ、行政予算も減少していくことが予想されるなか、果たしてこれから約40年、まちづくりをナリワイとして飯を食っていけるのだろうか。そもそも我々が大事にしたい「まちづくり」ってなんだろう・・・・そのような関心から「まち飯」(=まちづくりで飯を食いたい)と名付けられた研究会では、近畿を中心に活躍する先駆者をお招きした講演会などを10回以上開催し、合間に議論を重ねてきた。研究会の成果を中心に、理事のひとりである谷亮治が取りまとめたのが本書『モテるまちづくり』である。いかにも怪しげなタイトルだ。
本書では、まず「まちづくり」や「コミュニティ」という、現代においてマジックワードとなっている用語の再定義から始めている。それによれば、「まちづくり」とは「まちの人ならだれでもアクセスできる公共財を作り、育て、しまう営み」であり、「コミュニティ」とは「資源の最適組み合わせによって価値を生み出す機能」のことである。
タイトルに戻ろう。なぜまちづくりが「モテる」なのか。「まちづくり」とは「公共財」を作ることだが、「みんな」が投資するだろうと期待して、誰も投資をしない「フリーライダー問題」が生じる可能性がある。我々は「コミュニティ」、つまり資源の最適組み合わせの機能をうまく駆使して、フリーライダー問題を上回る価値を生み出さなければならない。この時に登場するのが「モテる」集団だ。「モテる」とは「複数の異性などから好意を受けて、チヤホヤされる」ことではなく、「他人を幸せにすることで当人に生じる現象」である。
ここまで読むと、まちづくりに関わる大半の人は「自分はモテるんだ」と思うかもしれない。まちづくりに関わる大半の人は他人を幸せにすることを前提として取り組んでいることが多いからだ。しかし、ここにも落とし穴がある。こうした人はサブタイトルにある通り、「まちづくりに疲れている」(または隠れ疲労になっている)のだ。「私は頑張っているのに、なぜみんなは理解してくれないの?」などと思ってしまったら、それは疲れている証拠である。本書ではこうした現象を「フリーライダーへの呪いと怨嗟」と呼んでいる。
この呪いと怨嗟を乗り越え、本当の意味で「モテるまちづくり」を実現するにはどうしたら良いのか。また、本書が生まれるきっかけとなった「まちづくりで飯を食う」ことは可能なのか。紙面が限られているので、続きは本書に譲りたい。まちづくりやコミュニティ・デザインが一種の「ブーム」となっている今こそ、ぜひ読んでもらいたい内容だ。
なお、本書は著者による自費出版であり、大手書店やネットショップには流通していない。平成26年12月に第一刷が発行され、約1年で第三刷まで増刷している話題の本書の定価は1,500円。ただし、本書を題材とした“読書会”を開催すると、1,000円に割引されるお得な特典もある。本書もまた、本書が定義する「公共財」であり、利用してナンボである。購入を希望される方はお問い合わせください(etou-sn@arpak.co.jp)。
アルパックニュースレター196号・目次
ひと・まち・地域
- 御堂筋の道路空間再編、始まる。~世界の観光客が闊歩するメインストリートに向けて~/絹原一寛・中井翔太・中塚一・羽田拓也
- 地域から少子高齢化への対応を考えるその15~北海道で人口が増えている芽室町の増加要因を考える~/森脇宏
- 「小阪ママっコラボ事業」 ~子育てママと大学や地域がコラボして、キッズファースト商店街実現をめざします!~/絹原一寛・片野直子







