アルパックニュースレター198号

船場をまちあるきしました!

執筆者; 都市・地域プランニンググループ/松下藍子

特集「hello船場.」

 大阪事務所が移転してきた「船場」は大阪の都心中の都心、大阪が世界に誇る町人文化が花開いた土地です。地域にこだわるアルパックは、もちろん事務所のお膝元にもこだわります。
 本号の特集では「船場」の誌上まちあるきをはじめ、うまいものやまちかどなど、アルパックの所員が見つけた「船場」の魅力を読者のみなさんにご紹介します。
 hello 船場.新参者ですが、どうぞよろしくお願いします。
ニュースレター編集委員会


 中央公会堂の外観

 江戸時代から大阪の経済・文化の中心地であった船場。近代建築など歴史ある建物が多く残り、また、近年の水辺の環境を活かした取り組みなど見所がたくさんある場所ですが、船場新参者として、まずは周辺をまちあるきしました。
 まず船場の歴史を振り返り。船場のまちの礎を築いたのは豊臣秀吉です。秀吉の晩年の慶長3年(1598)、大阪城の守りを更に強固なものにするために、二の丸の外側に大名屋敷など家臣の邸宅を配置し、二重の守りとする計画が立てられました。当時、二の丸の外側には多くの町家が並んでいたのですが、大名屋敷を配置するために、これらの町屋が移動させられることになりました。その移住先として開発されたのが船場です。
 船場は、40間四方の碁盤目状の整然とした区割りに、東西方向に太閤下水が貫通した背割り線を持つ構成で、間口が狭く奥行きが長い町屋が建ち並んでいました。当時の建物は戦災などを経てほとんど残っていませんが、区割りは今もほとんど変わらずに受け継がれています。
 まちあるきは淀屋橋駅を降りてすぐの中央公会堂からスタートしました。中央公会堂は大正7年(1918)にいわずと知れた辰野金吾の設計により建設された建物です。一部がショップやレストランとなっており、自由に出入りすることができます。水辺の環境を活かして、周辺は遊歩道や公園など親水を感じる空間が整備されています。


 栴檀木橋(せんだんのきばし)より東を眺めた風景

 次に事務所の裏にある適塾へ。適塾は、幕末における洋学研究者の第一人者である緒方洪庵が開いた学塾であり、江戸時代の町屋の姿を現在に留めるとともに、蘭学塾の遺構として史跡・重要文化財に指定されています。中は一般公開されていて、書物の展示や建物の解説などを見ながら見学することができます。適塾横の愛珠幼稚園もまた日本最古の木造園舎であり、現役の園舎として非常に貴重な建物ですが、残念ながら現在は改修中で外からしか様子を伺うことはできませんでした。
 続いて三休橋筋を通り南へ向かいました。御堂筋と堺筋の中央を通り、周辺には近代建築や昔ながらの佇まいを残した建物が多く残っています。ちなみに大阪は東西を「通り」、南北を「筋」と呼ぶことが多いですが、このルールを決めたのも秀吉だと言われています。現在は筋の方がなじみがあるかもしれませんが、当時のメインストリートは東西の通りであり、筋は裏道だったようです。


適塾内部:客座敷から前栽への眺め

三休橋筋:奥に見えるのが近代建築の
高麗橋ビルディングと浪花教会

 三休橋筋を逸れて少し奥に行くと、個性的な外観がひときわ目を引く近代建築の芝川ビルがあります。建物自体を見学するだけでもおもしろいのですが、私のおすすめは地下の金庫室をコンバージョンしたカフェ。オーナー1人でやっている静かな雰囲気がお気に入りです。船場には多くの近代建築が残っていますが、こういった歴史ある建築物の空間的魅力に価値を感じた人たちが新たに入り、活用されている事例が多くあります。
 続いて薬の町として有名な道修町通りへ。今も通りを見通すと、製薬会社や薬品会社が多いことがわかります。ビルの狭間にある少彦名神社は、薬の神様として地元では長く親しまれており、裏手にある青山ビルとともに、オフィス街の中で緑を感じるスポットとなっています。
 さらに南の本町通りを越えたところの丼池筋まで足を運びました。ここは昔、丼池という池があったことからそう筋の名前がつけられたようです。昔は繊維問屋が並び、繊維卸業の中心として栄えたまちですが、今は周辺のオフィス街としての発展に合わせて、飲食店が多く建ち並ぶ商店街となっています。丼池は今は埋め立てられ公園に変わり、その記憶を留めるものは名前のみとなっています。


芝川ビルの外観

ビルの狭間にある少彦名神社

 盛りだくさんとなりましたが、今回はこれだけの場所を少しずつ立ち寄って、約3時間のまちあるきになりました。このようにぶらぶら歩きながら気になるところに立ち寄るのもあり、じっくり一つの施設を楽しむのもあり、水上ボートで周遊し水辺からの景色を楽しむのもあり、それぞれの楽しみ方ができる場所です。是非一度訪れてみてください。


 丼池ストリート