アルパックニュースレター198号

フォーラム「“起業”から関西の経済再生を考える」が開催されました

執筆者;地域産業イノベーショングループ/高田剛司

 アルパックが事務局をしている(一社)日本計画行政学会関西支部では、毎年1回、支部大会を開催しています。今年度は7月2日(土)に市制100周年を迎えた尼崎市を会場として、(公財)尼崎地域産業活性化機構と共催で「起業」をテーマに実施し、前半は起業支援の事例報告として3つの地域の事例が紹介されました。
 1つ目は、滋賀県の創業支援の取組について滋賀県立大学の西岡コーディネーターから紹介されました。起業の段階によって支援内容を分け、「プレ」⇒「メイン」⇒「ポスト」というチェーン(鎖)の中で事業を定着させる仕組みや、起業家と専門家をつなぐ場としての「ビジネスカフェ」が県内各地で開催されている事例が紹介されました。また、インキュベーションマネージャーの養成やネットワークづくりにも注力し、起業支援事業が一部分だけ、あるいは単発で終わることなく続けられる仕組みが構築されていました。
 2つ目は、神戸市のスタートアップ環境構築に関する新事業について、神戸市の多名部課長から紹介されました。昨年度はシリコンバレーへ大学生や高校生など若手人材を派遣するプログラムを実施。今年度はシリコンバレーのプログラムを日本で受けられる事業として神戸で募集し、事業計画はもちろん、資金面やオフィス、メンタルのバックアップも受けられる環境を整え、今まさに進行中の事業として紹介されました。
 3つ目は、昨年度に開設された尼崎創業支援オフィスABiZ(アビーズ)の取組について尼崎市の岸本経済部長から紹介されました。尼崎市では、ものづくり系のインキュベーションセンターが20年以上前に開設されていますが、今回は業種を問わず、多様な交流も意識した空間と支援体制が整えられたインキュベーションオフィスが整備されました。「連携」をキーワードに、行政だけでなく、市内の経済団体や金融機関などあらゆる支援組織が「よってたかって」支援するところが、尼崎らしさとして紹介されました。


会場の様子

会場の参加者も交えたパネルディスカッション

 後半は、(公財)尼崎地域産業活性化機構の加藤理事長をコーディネーターに3名の事例報告者がパネリストとして登壇し、会場の参加者も交えたパネルディスカッションが行われました。
 過去にも「ベンチャー支援」については、政策的に、いわば官製のブームとして何度かその波が来ました。しかし、私が思うには、これまでと大きく違う環境の変化として、インターネット通信が整い、個人での情報発信やネットワークづくりが圧倒的に行いやすくなってきたこと、また、民間でも「シェアオフィス」が供給され、本人さえその気になれば容易に異業種の人と交流できる「場」も増え、情報を入手しやすくなっていることが挙げられます。そのような民間の動きも踏まえ、関西の経済再生を考える上で、行政としても新しい事業者をどのように増やしていくのかは、今後ますます重要な視点になるでしょう。今回のフォーラムのテーマは関心も高く、120名以上もの参加がありました。参加者にとっても大いに刺激となるフォーラムになったのではないかと思います。