アルパックニュースレター198号

事務所周辺さんぽ「適塾」

執筆者; 建築プランニング・デザイングループ/塗師木伸介・樋口彩子・増見康平
都市・地域プランニンググループ/中井翔太

 新しいアルパック大阪事務所は、船場エリアにあります。船場というと、町人文化の発祥地ですが、かつて秀吉が造成して以降、近代都市計画の分野においても大阪をリードしてきた地域です。現在も市内に点在する近代建築など魅力的な建築を活用・発信していく“生きた建築ミュージアム”の中心地となっており、まちづくりの熱が冷める気配はありません。
 事務所の周りにも、歴史ある建物が点在しています。事務所の西隣には愛珠幼稚園があります。明治13年に創設され、大阪で一番歴史の長い現役保育園です(現在は耐震改修中)。事務所の北側には蘭学者・医者として知られる緒方洪庵が江戸時代後期に開いた適塾があります。もともと上層階級の商家であったこの建物は、店舗棟1階の商業空間を学問所に、2階の物置を塾生生活空間に、そして奥の住居棟を洪庵一家の住居にと、うまく使い分けていたようです。


 適塾外観

 さっそく適塾に入ってみました。広い塾生大部屋で、中庭を見下ろす低い窓辺に腰掛けると、とても居心地がよく感じました。大部屋の柱には刀傷があり、当時の塾生の血気盛んぶりが思い起こされます。また、隣接するヅーフ部屋で一冊しかなかったドゥーフ・ハルマ(江戸時代後期に編纂された蘭和辞典)を共用しながら夜更けまで仲間とともに勉強に励んだとのことです。適塾といえば蘭方医学の学び舎ですが、門下生には福沢諭吉を初め、多様な活躍をした偉人が多数います。一つの分野を起点に門下生の自由な関心のもと、関連する分野に“学び”を拡大していったスタイルはアルパックにも通じるものを感じました。
 周辺を歩きながら、新しい事務所での生活を思い浮かべてみました。事務所は都心にありますが適塾の庭や中之島公園も近く、疲れたときは気分転換に散歩もできそうです。また少し歩くだけで、ランチにカフェに、飲みに立ち寄ってみたいお店を見つけることができます。これから少しずつこのエリアを開拓していくのが楽しみです。
 今後も船場のまちとともに新たな歴史を積み重ねて成長する事務所をつくっていきたいと思います。美味しいコーヒーを淹れますので、船場に来られた際は気軽にお立ち寄りください。


適塾2階

適塾大部屋から中庭を見下ろす