アルパックニュースレター199号

黒くて丸くてズッシリ重い「なす」

執筆者;都市・地域プランニンググループ 山﨑将也(出身:新潟県)

 

 

 皆さんは新潟県の名物と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。お米、魚介類あるいは日本酒でしょうか。実は新潟は意外?にも「なす王国」でもあるのです。県内では約20種類のなすが栽培され、作付面積は全国一なのですが、その多くを自分たちで消費してしまうため出荷量は少なく、長らく門外不出とされてきたなすまであったりします。
 今回、その中で個人的に一押しな「長岡巾着なす」をご紹介します。その名の通り、口を絞った巾着のような縦皺の入った大型の丸いなすなのですが、形が悪くなりやすく「こんげんのしょうしくて出せねぇて(こんななすは恥ずかしくて外に出せない)」という理由で広域に出荷されることがなかったと言われています。
 また、このなすは栽培方法が少し変わっています。長岡市はその中央に信濃川が流れ、非常に肥沃な土壌が形成されており、巾着なすも信濃川の河川敷で多く栽培されているのですが、栽培時にあまり水を与えないのがコツで、それによりなすは水を求めて強い根を張り、土壌の栄養分をたっぷり吸収するようになり、結果、果肉の詰まったズッシリ重いなすとなるのです。
 さて、そんな長岡巾着なすの最も一般的な食べ方は、まるごと蒸かして薄切りにした「蒸しなす」です。味付けもシンプルに辛子醤油か生姜醤油だけというものです。果肉が詰まっているからこそ可能な調理法で、煮くずれすることなく、なすの甘みが味わえる、長岡の夏の風物詩のひとつとなっており、これを食べないと夏が来た感じがしないものでした。
 長岡巾着なすは、最近都内のスーパーなどでもたまに見かけるようになってきましたが、今回のうまいもの通信を書くにあたって、やはり地元の食べ物は地元で、「おいしい」ではなく「ばかうんめぇのぉ」と食べたいものだと実感した次第です。