アルパックニュースレター200号
英国随一のビーチリゾート、ブライトンを歩いて

ウェスト・ピアとイースト・ピア
2016 年 9 月から英国のブライトン(Brighton)にあるサセックス大学のIDS(開発学研究所)に通っています。ブライトンは人口28万人、ロンドンから電車で1時間ほど南下した海岸沿いにあるビーチリゾートのまちです。
まちの歴史を少し紐解きましょう。はじめ漁村として発達したブライトンですが、1750年頃から海水浴を利用した療養地としてロンドンから患者が訪れるようになり、鉄道の開通後は帝国随一のビーチリゾートとして繁栄しました。現在も海辺での休暇を求める国内外からの観光客を迎えており、天気の良い日の昼間はもちろんのこと、夜もクラブがオープンして大変賑やかです。まちの中心部にある建物の多くは19世紀前半に建てられた歴史あるものだそうで、目を見張るような立派な建物に一般のアパートやパブが入っているのはヨーロッパならではです。
一方で、ブライトンはイギリスのゲイ文化の中心地としても有名です。1830年代にはゲイの出会いの場になり始め、徐々にその他のセクシャルマイノリティの間でも広く知られるようになったそうです。大学構内にもこの文化の影響が随所で見られ、たとえば一部のトイレは女性用・男性用に加えて、性別にかかわらず誰でも使えるオールジェンダー用の3種類の表示があります。写真はオールジェンダーのトイレですが、ピクトグラムのひとつが半分スカートの「第3の性」になっているのがお分かりいただけるでしょうか。
ブライトンが受け入れているのはセクシュアルマイノリティだけではありません。大きな大学が複数所在することもあり、住民は非常に多国籍です。多様な人々を歓迎し続け、今もまちがBright(キラキラ)しているのは、古いものと新しいもの、構造と逸脱がミックスされた懐深い文化によるのではないかと感じています。
ただし、Brightが一文字違いのBlight(暗い影)になると意味が全く逆になってしまうように、華やかな文化の裏側に積もった歴史の重苦しさを感じることもしばしばあります。それを端的に示しているのがピア(Pier=桟橋)と呼ばれる海上に設置されたアミューズメント施設です。ブライトンのビーチにはイーストとウェストの2つのピアがありますが、1860年代に建てられたウェストは、経営難で放置され劣化が進んでいたところに火災が発生し、現在は骨組みだけが残っています。かつてはレジャーのまちのシンボルとして活躍したウェスト・ピア、陽気なオバケを思わせる姿を見るたびに栄枯必衰の理を感じます。

トイレ扉の表示

新学期の大学構内
アルパックニュースレター200号・目次
特集「200号発行を迎えて」
- ニュースレター編集委員会/坂井信行
- ニュースレター編集委員会/鮒子田稔理
- ニュースレター編集委員会/嶋崎雅嘉
- ニュースレター編集委員会/中村孝子
- ニュースレター編集委員会/長沢弘樹
- ニュースレター編集委員会/武藤健司
ひと・まち・地域
- 流山市で「3層の高度地区」導入/東京事務所 野口和雄(都市プランナー)
- 伝承譜 その5~京都駅ビル20年―地域社会のユメを拓く/名誉会長 三輪泰司
- 地域に寄り添って地方創生を考える その18~企業誘致が成功した人口増加自治体の補完的考察/代表取締役社長 森脇宏
きんきょう
- 「体験交流型」で摂津峡に新たなムーブメント!/地域産業イノベーショングループ 武藤健司・片山麻衣
- 今年もファミフェスやります!at南港ポートタウン/地域再生デザイングループ生活デザインチーム 嶋崎雅嘉・戸田幸典 都市・地域プランニンググループ/橋本晋輔
- 「働き方改革についての事例報告と自由討議」を開催しました/杉原五郎 代表取締役会長・都市計画コンサルタント協会理事







