アルパックニュースレター159号

水都大阪2009とうんぱく2009~尼崎運河博覧会~

執筆者;大阪事務所 絹原一寛

水都大阪2009をふりかえる

 「水辺とまちづくり」の一大イベントとして、大阪では「水都大阪2009」が、昨年8月22日から10月12日までの52日間にわたって開催され、期間中に190万人(主催者発表)が訪れました。皆さんは足を運ばれたでしょうか。私なりの切り口で、このイベントをふりかえってみたいと思います。

水辺のまちづくりの本格展開への一里塚

 まず、このイベントの意義についてですが、本格的な水辺のまちづくりを切り開く一里塚として、大いに評価できると考えます。水辺に着目した観光・まちづくりにずっと関わってこられた市民・事業者・プランナー・行政の地道な努力がベースにあり、その上で市・府による河川整備(道頓堀川水辺整備事業や川の駅はちけんやの整備など)も進み、今回のこの「水都大阪2009」へとつながったと捉えるべきと思います。
 また、実際に会場へと足を運ぶと、安藤忠雄さんやヤノベケンジさんなど著名人が手がけられた話題性に富む作品がある一方、市民参加型の手づくりのワークショップ・イベントが随所に散りばめられていました。今回の取り組みを機に、水辺というキーワードで新たなまちづくりのネットワークが育まれたのではないかと推察します。


水都大阪2009:中之島公園でのワークショップの様子

本格的な水辺遊びへの課題

 しかしながら、課題もあります。来場者の一人として感じましたが、「水都大阪2009」と銘打ちながらも、「水辺」がまだまだ遠いものに感じました。陸上のイベントは多様な工夫がされているものの、肝心の「水辺を感じる/水辺で遊べるプログラム」が弱かったのではないでしょうか。
 一般的に「水都」といえば、イタリアのベネチアなどを想起してしまいます。「どこに行けば水辺で遊べるのだろう」と感じた方は少なくないでしょう。「水都」という言葉が持つイメージに反して、現実の大阪の河川空間はまだまだ十分応えられていないということでしょうか。
 河川を魅力ある都市空間として積極的に使いこなすための試行錯誤は始まったばかりです。今回を機に様々な経験が重ねられ、新しい河川とのつきあい方の提案が生まれてくることを期待したいと思います。


水都大阪2009:道頓堀川の遊覧船

うんぱく2009~尼崎運河博覧会~の取り組み

 少し切り口を変えて、尼崎の取り組みを報告します。
 最近では「工場萌え」など、高度経済成長期を支えたダイナミックな工場景観の評価が密かに高まっています。加えて、尼崎臨海地域ではパナソニックプラズマディスプレイの巨大な工場が立地し、以前の煙立ちこめる工場地帯とは全く違った、洗練された新しい工場地域を見ることができます。
 かつてより尼崎の魅力を多角的に発信・プロデュースしてきた市民団体、尼崎南部再生研究室と、臨海地域の環境共生をめざす尼崎21世紀の森づくり協議会等が協働で、工都尼崎の動脈を担った繁栄の象徴である運河の魅力を知ってもらうイベントを開催しました。それが「うんぱく2009~尼崎運河博覧会~」です。
 イベントでは、尼崎南部再生研究室による名物ガイド付きの運河クルージングをメインに、高校生や大学サークルによるステージ、ゴムボートの試乗会、さらにはメイドインアマガサキ食材で作った限定amaバーガーの販売、水質浄化実験施設の展示など、多様な催しが行われました。
 1日限りの手作りイベントでもあり、水都大阪2009と同列で比較できるわけではありませんが、今回が3回目ということで、徐々に規模が拡大し、内容も充実してきました。

水辺を取り戻す取り組み、はじまる

 いずれの取り組みにも共通しているのは、水辺との新しい関係づくりです。埋立事業や治水事業等によって、水辺はいつのまにか我々の生活からは縁遠いものになってしまいました。水辺の新しい遊び方を提案し、そこからムーブメントへとつなげていこうと奮闘している姿がそこにはありますが、一部の人のお遊びと捉えられる傾向もあり、市民権を得ているとは言えない状況です。さらに、いざ実施しようとすれば、安全性の問題、管理上の問題など、超えなければならないハードルが非常に高く、それらをクリアする高度な戦略が必要となっています。
 海外に目を向ければ、水辺が魅力的なまちは幾つも挙げられます。最近では高速道路を河川空間に再生したソウルの清渓川の例もあります。河川空間を「水都」の名に恥じないストックへと昇華していくため、我々プランナーも知恵が試されていると感じます。


うんぱく:運河クルージング