アルパックニュースレター159号

大阪・天神橋を見下ろす「川辺の暮らし」

執筆者;大阪事務所 柳井正義

 4月某日/天神橋を見下ろす部屋に引っ越しました。ちょうど川縁の桜並木が見ごろで、天神橋のうえから天満橋方面を望むと桜並木が川面に映り、大川が桜色に染まっているようです。この景色は水都大阪ならではの誇れるものではないでしょうか。川岸の桜並木は全国で見られますが、これだけの川幅で河川敷がなく桜の木が川面に張り出しているようなところは少ないと思います。加えて、ここはコンクリート護岸が目立たず圧迫感が少ないのもいい感じです。川縁の遊歩道を歩くと水面までが非常に近く感じられます。見方を変えれば増水時が心配なわけですが、淀川と大川の分岐点にある毛馬ポンプ場により水位が調整されているため、日本の川らしからぬゆったりとした流れが保たれているそうです。
 6月某日/難波まで出かけた帰り、好天に誘われて道頓堀から大阪城公園までのミニクルーズ船に乗ってみました。明るく賑やかなとんぼりリバーウォークから東に向かうと、船はビルの谷間を進む感じになります。連なる建物の道路側はおそらくファサードに気を使っているのでしょうが、川に面した側は何の化粧もなく、まるで覗いてはいけない裏側を見てしまった恥かしさがあります。さらに東に進むと、直角に北に曲がり東横堀川に入ります。頭上は高速道路の高架で覆われ、真昼間というのに薄暗い。臭気も鼻につくようになり、まるで密林のなかを航行しているような錯覚に陥ります。すると突然、目の前に閘門(水門)が現れました。この水門により道頓堀川の水位が保たれているそうですが、水の澱みが臭気の原因になっていないかと気になります。利便性向上や防災と環境の両立はたいへんなテーマです。なお、東横堀川では川に向けられた古い看板を見かけました。この川がかつて街の交通路だったことの名残りなのでしょう。
 8月某日/7月の天神祭の船渡御も見ものでしたが、今度は水都大阪2009というイベントが始まりました。夏は水辺のイベントが目白押しで、部屋から川を眺めていても飽きることがありません。行きかう船のなかに実はバスが混じっています。水上バスという名の船ではなく、陸上も走れる本物の水陸両用バスです。最初に見かけたのは桜宮あたりで、ちょうど川の中からスロープを上陸してくる姿は衝撃的でした。北海道ではDMVといってレール上も道路も走れる両用バスがありますが、それと似た面白味を感じます。現在、河川交通は観光用途が多いですが、通勤?など日常用途でも可能性はあるのではないでしょうか。ちなみに、天神橋から大阪ビジネスパーク(会社の前)までの航路があれば個人的には非常にありがたいのですが。
 11月某日/天神橋あたりでカモメを見かけることが多くなったのは季節のせいでしょうか。近所に歌碑がある「天満の子守唄」の歌詞にもカモメがでてきますが、カモメを見るとこの川の先が海であることが思い出されます。先ごろ山間部に大雨が降ったあとには大量の流木や土砂が流れていましたが、川辺に暮らすと街が山と海の間にあることを実感します。


天神祭 自宅からの眺望