アルパックニュースレター165号
低炭素都市づくり異なる2つの地域より
低炭素都市づくり
なぜ日本ではマスコミがあまり報じないのか不思議ですが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書の有力な根拠となった地球の平均気温の上昇を示した「ホッケースティック曲線」のねつ造疑惑、いわゆる「クライメートゲート事件」で、「COによる地球温暖化」説がゆらいでいます。
しかし、EU憲章にうたわれているような環境リスクに対する「予防原則」の立場に立つと、化石エネルギーへの依存率を低め、低炭素化することが、気候変動対策だけでなくエネルギーセキュリティの両面から、都市のサスティナビリティを左右するキーポイントになっています。
従前より、地球温暖化対策に関する都市レベルの計画としては地球温暖化対策地域推進計画(実行計画区域施策編に改称)(2005~)がありましたが、『低炭素都市』という言葉が広く用いられるようになったのは、福田内閣のもとで洞爺湖サミットが開催された2008年からです。
これを都市・地域レベルで具体化するものとしては、「環境モデル都市」(2008~内閣官房)、「低炭素地域づくり面的対策推進事業」(2008~環境省・国土交通省)などがあり、以下に低炭素タウン推進協議会(大阪府、地元市、阪急不動産等をはじめとする関連企業、団体、大阪大学等で構成)の事務局として関わっている大阪の彩都を例に紹介します。
~新世代ニュータウン:コミュニティサイクル編~
彩都は、大阪の北部、茨木・箕面両市にまたがり、計画人口約20,000人、現人口約6,000人超(西部地区)の新世代型ニュータウンです。ヒートポンプやコージェネレーションシステム等が多くの住宅に導入され、カーシェアリングも継続されているなど、これまでも環境に関する様々な取組がチャレンジされています。その結果、居住水準が高いにも関わらず、住宅の断熱性能やエネルギー機器の効率の高さなどから民生家庭部門(住宅)からの一人あたりCO排出量は大阪府(≒全国)平均から約30%少なく、世帯人数による補正を勘案しても約20%、1990年比でも約10%少ない水準です。一方、運輸部門(交通)は、マイカー利用に起因する自動車からの排出量が相対的に多く、住宅での低炭素効果を相殺している状態となっています。
このうち後者については、坂の街であるため電動自転車の普及率が高い特性に着目し、無人管理システムによるコミュニティサイクルについての社会実験を経て、今年度から事業化されています。PiTaPaによる利用(事前登録)もできるシステムを新たに導入したこともあり、着実に会員数も増え、現在は約130名の方々の低炭素ライフに活用されています。
また、別途、新規分譲マンションに無人管理の電動自転車シェアリングシステム、EV充電・急速充電設備が次々と導入されるなど、低炭素都市づくりの取組が着々と進められています。
![]() 無人管理システムによるコミュニティサイクル |
![]() 彩都サンデーサイエンス2010への協議会での出展の様子 |
~過疎小規模自治体:地域資源フル活用編~
一方、京都府笠置町は、平成22年度に全国で採択された11地区のうち、他地域では、「EVカーシェアリング」や「地域グリッド」等の新技術導入型のテーマが主なのに対して、地域の持続性に重きを置いた特徴的な1地域となっています。
大都市近郊の過疎小規模自治体のモデルとして
笠置町は、京都府最南端に位置し、人口約1,800人の府内で一番小さい町と言われています。また、町内にある笠置山は古くからの信仰の対象とされ、後醍醐天皇の行在所としても知られています。町の中心には、木津川が流れ、夏はカヌーやキャンプを楽しむ人の姿が見られ、歴史・自然が調和する町です。このように、歴史や自然に恵まれた地域ですが、近年は、他の中山間地域と同様に少子高齢化と急激な人口減少が課題となっています。
地域としては、低炭素もさることながら地域として持続できるのかという事が大きな課題であり、地域資源をフル活用した自立的・持続的な低炭素化事業の実現を目的に掲げ、町をはじめとする地元関連団体、京都府、同志社大学、アルパックとで設立した協議会で取り組みを進めています。
マイクロEV・電動バイクで伺います
役場では、水道メーターの検針やデイサービスセンターの町内移動は、普段、乗用車や自動二輪で行われています。これらの移動の低炭素化の可能性を検討するため、この秋に、役場やデイサービスセンターに電動バイク10台と、マイクロEV(1人用)1台を導入し、試験運用を行いました。運用による低炭素効果とともに、使い心地等、利用者の声を聞きながら、代替の可能性等について検討します。
木質バイオマス等のカスケード利用による試験栽培
地域資源を活用し、地域の経済にもつながり、さらに低炭素ということで、地元の空きハウスをお借りして、農作物の低炭素型の試験栽培にも取り組んでいます。栽培品種は、もともと町での栽培実績のあるキノコ類の菌床栽培、さらに、2種(章姫、紅ほっぺ)のいちご、サラダほうれん草や、水菜、小松菜等の軟弱野菜を栽培しています。ハウスには、農業用木質ペレット温風器を導入し、従来の化石エネルギーを利用したボイラー使用時と比較しての低炭素化の可能性を検討します。また、木質バイオマスのカスケード利用の視点から、薪炭林での試験間伐やキノコ栽培廃菌床のペレット化も検討する予定です。
その他にも、地滑り地域での湧水を活用した小水力発電の導入の可能性についても検討しています。
低炭素化はさることながら、日々、管理していただいている地元の方と、サルにも警戒しながら無事育つのかどうかも心配しながら、試行錯誤の日々ですが、低炭素化という切り口から、環境と経済が好循環する地域を模索したいと考えています。
![]() 電動バイク、マイクロEV |
![]() 試験栽培の様子 |
アルパックニュースレター165号・目次
新年の挨拶
ひと・まち・地域
- 低炭素都市づくり異なる2つの地域より/大阪事務所 畑中直樹・中川貴美子
- 学校給食からひろげる地産地消~食育推進計画における政策指標を切り口に
/京都事務所 廣部出・大阪事務所 原田弘之・渡邊美穂 - 命を救うプロジェクト~心臓疾患術前シミュレータの開発/京都事務所 高野隆嗣
- キッズバーベキュー高浜楽校を開催/大阪事務所 高田剛司











