アルパックニュースレター175号

まちに“小規模な連鎖”を生み出す「まちづくり会社」
「(株)みらいもりやま21」清原健社長へのインタビュー

執筆者;京都事務所/三木健治 大阪事務所/三浦健史


 本紙VOL172でご紹介した『うの家』の管理運営を行う、滋賀県守山市のまちづくり会社「(株)みらいもりやま21」(以下MM21)の清原社長に、お話をお伺いする機会を得ました。
 『うの家』は、当初予定を大きく上回り2カ月間で1万人を集客するなど、短期で大きな成果をあげています。清原社長の考える、まちづくりやまちづくり会社のあり方について、お話の一部をご紹介します。

まちに新たな風を吹き込んだ『MM21』

清原社長は、市内で袱紗などの和雑貨をつくるモノづくり会社の経営者で、これまでまちの活性化には、ほとんど関わりはなかったそうです。
―平成20年に、商工会議所の副会頭に就任しましたが、同時に、市長や商工会議所会頭から、まちづくり会社の社長に就任することを依頼されました。私は商業者ではないし、活性化に向け頑張っている商業者の方がおられたので、固辞していました。しかし、市長や会頭の要請にまけ、社長就任を受けることとしましたが、新たな取組みを行おうとする中で、地元とのしがらみの少ない私に白羽の矢が立ったのではと思っています。―

MM21では、設立の初年度から“100円商店街”や“もりやまバル”“まちゼミ”といったイベントを仕掛けています。
―MM21では、設立初年度から、これまで守山にはなかったイベントを仕掛けてきました。これが、MM21の認知度と信頼感を一気に高めたと思います。これらのイベントは、若手社員の功績が大きいと思います。彼は、県外出身者で、社員公募で来た人です。面接時には、なんと生意気な若造だと思いましたが、彼特有の個性が設立当初からのイベント実施につながったと思います。まちづくり会社の初動期には、彼のようなハリキリボーイの存在は大きいと思います。―

中小企業経営者の視点での会社づくり

清原社長は、社長就任と同時に、全国各地のまちづくり会社の視察に行って、先進事例の失敗をみて回ったそうです。
―まち会社が、どんな仕事をすればよいのかは、先進事例などを見てわかりますが、どのように運営すればよいのかは、全くわかりませんでした。そこで先進事例の視察に行きましたが、どのようにして成功しているのかではなく、どのような失敗をしているのかを見て回りました。上手くいっているように見えても、結構失敗していることもあります。私は、中小企業経営者として、また、まちづくり会社が市民からの出資により設立していることから、絶対に赤字を出してはいけないと思っています。その意味で、華々しいことより、堅実に運営するためにどうすればよいのかを考えました。―

MM21では、プロパー職員による運営を行っています。
―先進地を見て回って、行政や商工会議所からの出向による組織化は避けようと思いました。優秀な行政マンや商工会議所職員によって、成果を出しているまちづくり会社もあります。しかし、行政などからの出向の場合、職員が2~3年で交代します。まちづくりは、継続性が重要だと思います。社員が交代すると、どうしても取り組みの継続性が失われかねないと思ったのです。そこで、市からの出向職員ではなく、当初からプロパー職員による組織化を行おうと考えました。その当時、ふるさと雇用の制度があったので、その制度を活用して職員を採用することができました。この間に会社の体力をつけることができ、今後も自前の職員を採用することとしています。―

まちづくり会社、市、商工会議所のトライアングル

守山市では、市長と会頭、MM21の社長が、毎月1回定例会議を行っています。
―まちづくり会社は、中心市街地の活性化に向けた仕事を行います。そのため、市や商工会議所との協力連携が不可欠です。特に、この3者のトップの意思疎通が重要だと思っています。そこで、市長と商工会議所の会頭、そしてMM21の社長の私は、毎月1回の定例会議を行っています。そこで、これからのまちづくり会社の事業などを説明するのですが、トップ同士が合意して進めるので、取り組みがスムーズに進みます。―

MM21では、2週間に1回は、社員ミーティングを実施しています。
―MM21では、定期的に社員ミーティングを実施しています。その週の仕事などの調整や新たな企画について検討しています。社員には、自主的に考え、実行することを、口を酸っぱくして伝えています。また、いろいろな事で社員のスキルアップができるようアドバイスしています。この会議に市の担当職員の方も同席することもあります。『うの家』では、経済産業省の戦略補助金の補助を受けましたが、その際、市の担当者の方の協力が無ければ難しかったと思います。まちづくり会社の運営では、行政のきめ細かなサポートが必要不可欠だと感じています。―

まちづくり会社は、小規模連鎖を生み出す仕掛け

MM21では、ほたる飴、守山メロン飴、モーリーハンドタオル、守山の眼鏡ふきといった商品を開発し販売しています。
―MM21では、モーリーハンドタオルや守山の眼鏡ふきといった商品を開発し販売しています。私は、これまでモノづくりの会社を経営してきたので、このような商品開発のカンを持っています。モノづくりには初期投資が必要ですが、MM21で負担するのは難しかったので、私の会社で初期投資を負担した部分もあります。一定、販売が軌道にのってきたので、今はMM21に任せるようにしています。新たな取り組みには、まちづくり会社単独ではなく、周囲の事業者の方々と協力しながら取り組んでいくことが必要だと思っています。―

MM21では、守山市から「うの家」と「あまが池プラザ」の指定管理により、施設の運営管理を行っており、会社の運営基盤が固まりつつあります。
―今年の1月に、守山宿・町家『うの家』がオープンしました。当初予定では年間7千人の集客を予定していましたが、2カ月で1万人を超えました。つい先日、ウェディング企画会社に『うの家』を結婚式場として活用していただき、関係者に喜んでいただけました。一つの場が生まれると、いろいろな事業の可能性が高まっていくのだと実感しています。また、8月からは、小学校、幼稚園、親水公園と一体的に整備した交流施設『あまが池プラザ』がオープンし、MM21がその運営管理を行う予定です。これからこの2拠点を運営することで、新たな事業を行い、さらなるにぎわいを創出できればと考えています。―

これからのMM21の取り組みや役割として、“小規模連鎖”を生み出していきたいとお考えです。
―私は、まちづくり会社だけで、まちの活性化を生み出していくことは不可能だと思っています。設立からこれまでは、先ず、市民のみなさんに、まちづくり会社はどんなものなのかを知ってもらうため、まちづくり会社が先頭に立って新たなイベントを仕掛けてきました。しかし、これからは、中心市街地の事業者や市民の方から、“こんな事をしたいのだけど・・・”といった相談を受け、事業者や市民の方が主体的に行うことをサポートする役割を担うべきだと考えています。その意味で、まちづくり会社は、まちに、“小規模な連鎖”を生み出す仕掛けに徹するべきだと考えています。―

 まちづくり会社のありようは、地域事情や活性化の方向性などに応じて、それぞれであると考えられますが、今回の清原社長のお話から、まちづくり会社の考え方として、(1)会社の自立性を保つこと、一方で、(2)行政などとの密な連携・協力体制を確保すること、が重要であることをご指摘いただいたと思います。
 最後になりましたが、お忙しい中、貴重な時間を割いていただきました清原社長には、この場をお借りしてお礼申し上げます。