アルパックニュースレター175号

飛翔するタイ・アジア経済と日本の中小企業

執筆者;代表取締役会長/杉原五郎

アジア経済を牽引して疾走するタイ

 9月1日の夜、関西国際空港を飛び立って、翌日早朝、タイ・バンコクのスワンナブーム国際空港に降り立った。飛行時間は約5時間。バンコクの街は、ひと、クルマ、バイクで溢れていた。そこには、アセアン10ケ国、5.8億のアジア経済を牽引して疾走するタイの姿があった。


早朝から賑わうバンコクの市場

クルマが溢れるバンコク市内の道路

チェラロンコン大学サシン経営大学院との交流

 今回のビジネスマッチングツアーは、ビジネススクールとして世界的にも実績をあげているチェラロンコン大学サシン経営大学院との交流がひとつの目的であった。
 9月3日(月)の午前、サシン経営大学院日本センターの藤岡資正先生をはじめ、タイ投資委員会BOI、カシコン銀行リサーチセンターのスタッフから、アセアン経済の現状、日系企業のタイへの投資状況など基本的な説明を受けた。タイを中心とするアセアン経済が飛躍的に発展していること、日系企業のタイへの進出は約7000社と著しく、日本からの直接投資が大きく伸びていることなど改めて認識を新たにした。
 午後、視察に参加した日本の中小企業18社から簡単な会社概要のプレゼンを行った。ちなみに、私は最初のプレゼンテーターとしてアルパックのプロフィールとツアーへの参加動機について説明した。その後、タイ国から参加した企業数社と日本企業とのビジネスマッチングが行われた。大阪の八尾で金属熱処理加工の会社を経営している社長は、タイへの進出の手がかりを得るため、情報収集に余念がなかった。

浸水被害を受けたロジャナ工業団地と日系企業を訪問

 9月4日(火)、バンコクから北へ約70km離れたアユタヤのロジャナ工業団地を訪ねた。昨年10月、工業団地内の工場は、洪水による甚大な浸水被害を受け、1階にあった機械がすべて水浸しになったが、ようやく復旧にこぎつけたとのこと。
 団地内の日系企業2社を訪問。今年の4月から労働者の賃金が30%前後上昇して経営を圧迫しているとの声も聞かれたが、タイ進出の日系企業は好調な自動車産業に牽引され、総じて元気な印象を受けた。
 1988年にタイに進出した(株)ソディック社は、工作機械では日本でもトップに位置している。生産拠点をタイに、そして本社機能と研究開発機能は日本国内に、との経営戦略を明確にしていた。日系企業のタイ進出は、グローバル経済の進展によりある意味避けられないことではあるが、その一方で、日本国内での雇用の減少など国内経済の空洞化も心配になった。
 実質4日間のビジネスマッチングツアーではあったが、肌で感じ、実際に見聞して得たものは大きかった。帰国した6日の午後、京都商工会議所主催の政策フォーラム第2分科会(「グローバル社会」がテーマ)に出席し、タイで得たことをさっそく議論のまとめで報告することができた。私にとって、有意義でタイムリーな視察となった。


サシン経営大学院でのビジネスセミナー