アルパックニュースレター175号

「地震を知って震災に備える―京阪奈地域を中心として―」
高等研選書22

著者:尾池和夫 出版:(財)国際高等研究所 紹介者;名誉会長・顧問/三輪泰司

 地域計画の仕事は、ロケーション(場所・モノ)と、コンテンツ(中味・チエ)との相互関係を解き、組み立てることです。


土木工学と社会科学

 「場所・モノ」と「中味・チエ」のマッチングは、地域プロジェクトも、製造販売ビジネスも、原理・原則は同じです、場所或いは場所性を読むには先ずリクの地形図、ウミの航海用海図があります。最も基本は、地球物理の観測、知見。
 尾池先生は、ご存じ第24代京都大学総長、現・国際高等研究所所長。本著は2009年刊の高等研選書。2011年10月、関西学研都市OBのけいはんな都市クラブ総会でお会いした時に頂きました。専門性でいうと、場所は土木工学系、中味の財務・法制は社会科学系、アルパックはそのアソシエイツ。個人は専門の枠を超えて反対側に興味を持ち、学ぶと[幅]が拡がります。100ページ、¥1,000。

脚下照顧

 1時間もあれば読めますが内容は濃く座右において、コトに当たって読み返すようお奨めします。少なくとも、近畿圏での仕事には必読です。
 京阪奈地域を中心としてとありますように、京都盆地の地下構造から始まりますが、日本列島の形成、プレート変動、勿論、兵庫県南部地震、新潟県中越地震、鳥取県西部地震からフィリピン、スマトラと地球規模での地震、地殻に関する最先端の調査・知見が、たいそう判り易く展開します。

地殻変動と景観

 四川、雲南の地殻変動のスピードは、日本の10倍。奇岩・奇勝は、その現れで、景色の良いところは、崩れやすいところでもあるのです。
 時間感覚も考えさせられます。1万、10万年単位と、1000年、100年単位。我われはせいぜい10年単位で計画しますが、1000年目が明日になることは考えないことになっています。これでよいのでしょうか。

地震火山庁とジオパーク

 制度やシステムも考え直す時期でしょう。明治のはじめに西欧から気象観測の文化を取り入れました。今も気象庁が担当していますが、日本は地震火山庁をつくるべきではないでしょうか。古記録では、オリジナルに地震記録をまとめ、カタログ化しています。「類聚国史」を編纂したのは菅原道真だそうです。
 尾池先生は「日本ジオパーク委員会」委員長でもあります。2010年、山陰海岸が世界ジオパークネットワークに加盟が認定されました。地球科学に親しむパークです。


サインとナマズ君