アルパックニュースレター175号

皇居ランの風景

執筆者;大阪事務所 坂井信行

 今、日本で一番人気のあるランニングコースといえば皇居周辺でしょう。特に皇居外周の歩道を周回する約5kmのコースが有名で、お濠の水と濠端の緑、石垣のある美しい風景が最大の特徴です。皇居は東京のど真ん中、外国人観光客にも知名度が高い日本を代表する観光地で、周辺には国会議事堂や最高裁判所などのスポットもたくさんあります。5kmという程よい距離、適度なアップダウン、信号がないこと、そして都心の利便性が人気のポイントでしょう。仕事帰りの人がランニングを楽しむために不可欠なロッカーやシャワーを利用できるランナーサポート施設もたくさん立地しています。


音楽を聴きながらおしゃれに走る

 平日の夕方、仕事が終わる時間帯ともなると多くのランナーで混雑します。利用者調査によると平日の午後6時から9時までの間がピークだそうです。休日には皇居ランニングコースでの競技会なども開催されています。競技会では桜田門や千鳥ヶ淵公園などがスタート地点に設定されることが多いようです。
 この界隈はもともと観光客も多い場所ですから、混雑する時間帯にはランナーどうしやランナーと歩行者の間で接触や衝突のトラブルも多く問題となっています。このため、ランナーサポート施設等連絡会が「皇居ランナーマナー“10の宣言”」をつくってマナー向上を呼びかけています。皇居ランニングは左側通行で反時計回りが標準だそうです。山手線や大阪環状線で言う内回りです。道路管理者や交通管理者もランナーに対して他の利用者への配慮を促す立て看板を設置しています。それでもトラブルがなくならないのが関係者の悩みです。
 皇居周辺の歩道は色々な立場の多くの人が利用するところですから、他者への思いやりを持って走ることが大切です。かつて、大都市江戸ではお互いが気持ちよく過ごせるよう、また商売繁盛にもつながる作法として「江戸しぐさ」が受け継がれていました。多様な人が共生する中で快適に暮らしていくため、イキに振る舞うかつての町衆の精神が皇居ランナーにも求められるのではないでしょうか。


夕方になると混雑し始める

マナー向上をよびかける立て看板