アルパックニュースレター187号
地域から少子高齢化への対応を考える その7~高齢化イメージの概観
ニュースレターNo.184の「その6」までで、少子高齢化のうち、少子化傾向の緩和について、地域の視点から論究してきました。今号からは、高齢化への対応について、幾つかの視点から考察してみましょう。ただし高齢化については、既に様々な分析や考察がされていますので、あまり重複しないような視点から、高齢化のイメージを概観してみます。
なお、ここで用いる将来データは、国立社会保障・人口問題研究所による「日本の地域別将来推計人口(平成25(2013)年3月推計)」の結果や、そこで示された諸指標(生残率等)から推計したものです。この国立社会保障・人口問題研究所による推計値は、今年6月、多くの自治体が消滅すると予測した日本創世会議が指摘したように、出生率や社会移動の甘さがあるようですが、関西の高齢者イメージを概観するには、出生率は直接関係せず、関西の高齢者の社会増も少ないため、あまり大きな問題はないと思われます。
激増する90歳以上の高齢者
高齢化社会について論じる際に、例えば「75歳以上の後期高齢者数が・・・・」というフレーズがよく使われますが、70歳代後半でもまだまだ介護が不要な高齢者の割合は高く、介護問題等を視野に入れて高齢化を論ずる場合は、85歳以上や90歳以上の高齢者の動向を注目する必要があります。
こうした趣旨から、関西(2府4県)の90歳以上の高齢者の動向を眺めると、表1のように現状(2010年)で約20万人おられ、15年後(2025年)には約52万人と2.5倍に、30年後(2040年)には約93万人と4.6倍になると推計されています。これは、概ね現在の和歌山県の人口に匹敵する数字です。

(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年(2013)年3月推計)」
これを府県別にみると、大阪府での増加が著しく、現状(2010年)の約7万人から、30年後(2040年)には約39万人と5.3倍、実数では約32万人が増えると推計されています。また、こうした傾向は市町村別にみると、より一層顕著に現れ、現状(2010 年)に対する30年後(2040年)の増加率が高い市町村の上位20位までを整理すると表2のとおりで、関西で最も増加率が高い枚方市では、現状(2010年)の約3千人から、30年後(2040年)には約22千人と7倍、実数では約19千人が増えると推計されています。2位以下は、寝屋川市(6.2倍)、香芝市(6.2倍)、三田市(6.1倍)、猪名川町(6.0倍)など、大阪府以外の市町も登場していますが、やはり大阪府内の市町が多く、20市町のうち13市町(65%)を大阪府内の市町が占めており、高度経済成長期に人口が急増した市町が多く並んでいます。
この90歳以上の高齢者の大部分は介護が必要になる方と考えられ、介護は市町村が主体となって取り組むことになっていますが、施設面やマンパワー面で準備していく計画はあるのでしょうか。これらの点については、次号以降でもう少し詳しく考察してみます。

(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年(2013)年3月推計)」
死亡者数が倍増する市町も登場
高齢者が増えると、当然、死亡者数も増えてきます。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(平成25(2013)年3月推計)」で示された生残率や純移動率を用いて、関西の市町村別死亡者数(年平均)を推計すると表3に示すとおりで、現状(2010年)で関西全体の死亡者数は年間約18万人ですが、15年後(2025年)には約26万人と1.45倍に、30年後(2040年)には約29万人と1.6倍になると推計されます。

(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年(2013)年3月推計)」を基に推計した。
これを市町村別にみると、もう少し様相が異なり、現状(2010年)に対する30年後(2040年)の増加率が2倍を越える市町も、表4のように20市町に上り、最も増加率が高い堺市では、現状(2010年)の約7千人から、30年後(2040年)には約17千人と2.5倍、実数では約10千人が増えると推計されます。これらに対応する墓地や火葬場が確保できるのでしょうか。墓地については、埋葬の風習の変化等も関係するため、単純に死亡者数に需要が比例するとは考えられませんが、火葬場の方は概ね死亡者数に需要が比例すると考えられ、現在の処理能力ではカバーできない地域が続出するかもしれません。
また、死亡者数の増加は、独居老人という問題と絡むと、空き家の発生へとつながっていきます。この空き家問題は既に各地で議論になっていますが、今後ますます大きな問題になってくるでしょう。こうした死亡者数の増大に伴う問題についても、今後、もう少し詳しく考察してみたいと思います。
※本稿は、日本計画行政学会関西支部の研究部会活動「地域からみた少子高齢化への対応策に関する一考察」の成果の一部を活用しています。

(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年(2013)年3月推計)」を基に推計した。
アルパックニュースレター187号・目次
ひと・まち・地域
- 地域から少子高齢化への対応を考える その7~高齢化イメージの概観/代表取締役社長 森脇宏
- 津波被害にそなえた取り組みについて/代表取締役副社長 堀口浩司
- 名古屋に2軒の店舗付き集合住宅が竣工しました/名古屋事務所 間瀬高歩
- 6年間で100名以上の環境リーダーを輩出!-だいとうシニア環境大学/地域産業イノベーショングループ 武藤健司







