アルパックニュースレター187号

「インセンティブが生み出す持続可能なまちづくりを目指して」

執筆者;地域再生グループ 堂本健史

 入社面接で、これまで見たなかで理想のまちはどこかという質問を受けました。少し考えたうえ、4年赴任したことのある地方都市の名をあげました。
 転入してまもなく、地元の祭りに加わったときの光景が忘れられません。祭りも終わりが近づいたころ、町内のお寺の境内に、灯のもと法被姿の町民が車座になって振る舞いの料理を食べる。大人は若い衆も年寄も混じって酒を飲みかわし、小さな子どもたちは庭を駆けまわる。じゃあ歌おうと声がかかり、太鼓をたたいてノーエ節をうたうと、子どもが寄ってきて輪になって踊る。
 まちづくりの報告書では「多世代交流」は定番の用語ですが、その姿を私の中に刻んだ体験でした。以来4年間まつりの準備を手伝い、まちを離れても、祭りの当日には毎年駆けつけています。
 このまちの祭りでは、大人には、祭りを通じて子どもたちを楽しませるという意識があり、子どもたちを積極的に巻き込んでいます。そして、祭りを経験した子どもは、青年、大人になるにつれ、上の世代と一緒になって祭りを動かす側に回る。祭りを動かす人は、祭りとそこから派生する世代を越えた交流が楽しいものだから、酬われたと感じ、次もやろうという力が出るのでしょう。
 人を動かすような使命があり、活動に報酬が伴うと、継続のインセンティブが生まれる。さらに、その活動に新しい人を巻き込む仕掛けがあると自律的に持続する。活気があるまちには、こうした活動が持続する仕組みがあるのではないでしょうか。
 インセンティブが生み出す持続可能なまちづくり、この仕事で取り組んでいきたいテーマです。よろしくお願いします。