アルパックニュースレター187号
『イスラーム化する世界』 グローバリゼーション時代の宗教

本表紙
はじめに
「イスラーム化する世界」とは、イスラームが世界を席巻して、世界中の人々がイスラーム教徒即ち「ムスリム」になるという話ではありません。イスラームの側が、世界的宗教へ変容して行くプロセスの断面を解いた、イスラーム啓蒙書として読みました。
聖典解釈
イスラーム世界では、日常の生活行動まで、コーラン(クルアーン)によって律せられています。クルアーンとは、預言者ムハンマド(マホメット)が神アッラーから天使ガブリエルを介して「誦め」と伝えられた啓示の断片を集めたものです。「誦め」といわれたように、神の言葉を預かったムハンマドが読誦して伝えたのですが、彼の死後、書物にする必要が出て、現在のクルアーンの形にまとめられたのです。原典はアラビア語です。 なにぶん神さまの言葉で、意味が判り難いところがありました。そこで、ムハンマドが生前、言ったこと行ったことを伝える伝承「ハディース」が頼りにされました。ムハンマドは、聖徳太子と同時代、6世紀後半の人です。633年に亡くなって、すでに意味が判らないところがあったように、現代では、理解が難しくなるのも当然です。そこで「クルアーン解釈」が課題になります。
4人の近代クルアーン解釈
クルアーン解釈学はイスラーム社会ではとても大事な問題で、古来多くの学者が活躍しています。
著者は現在明治学院大学国際学部准教授で40歳代の少壮研究者です。東京大学イスラーム学科から、大学院を経てカイロ留学、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)で修士号を得ています。著者が研究対象とした4人のクルアーン学者の経歴と主題(括弧内)は、まさに現代世界を反映しています。
1)アミナ・ワドゥード:アフリカ系アメリカ人女性。1972年入信・シカゴ大学でアラブ・イスラーム学学位取得。(対等な男女関係を目指して)
2)ファリド・イサク:1959年ケープタウンのインド系ムスリムコミュニティ生まれで、南アフリカ共和国籍。反アパルトヘィト闘争参加。(他宗教徒との親和的連帯)
3)ビラール・フィリップス:1947年ジャマイカのキリスト教徒家庭生まれカナダ育ち。ブラックパンサー・ヒンドゥー・仏教にも関る。(伝統的クルアーン解釈に立つ現実的解釈)
4)フェトフッラ・ギュレン:1941年、東トルコの導師(イマーム)の家庭生れ。世俗的近代国家であるトルコ共和国では、イスラーム教育は軍部によって弾圧され投獄。98年アメリカ移住。(イスラーム・西欧の相互理解促進、教育向上、喜捨ザカートによる弱者援助)
ざっと経歴と主題だけ記しました。詳しくは、本書をお読み下さい。
世界は確実に変わっている
イスラームでは聖典解釈という方法で、変えてはならない不易の教えを守りつつ、偏狭な女性観・人種観等と闘い、現代に生きる宗教へ、ダイナミックな変容の努力を続けています。まだまだ、世界には無知と貧困がなくならず、物欲と感情が危機を呼ぶ状況があります。しかし、人類社会の潮流は、確実に国際理解を通じて、人間の尊厳と平和共存へ向かっています。
まずは、日本人から最も遠いと思っているイスラーム世界を知ることをお勧めします。なにしろ、世界でムスリムは13億人もおり、アラブ・マネーだけでも数百兆ドルもあるのです。
因みに、元アルパック・インターナショナルは、1990年6月ドバイで設立されました。少し早すぎたかもしれません。
アルパックニュースレター187号・目次
ひと・まち・地域
- 地域から少子高齢化への対応を考える その7~高齢化イメージの概観/代表取締役社長 森脇宏
- 津波被害にそなえた取り組みについて/代表取締役副社長 堀口浩司
- 名古屋に2軒の店舗付き集合住宅が竣工しました/名古屋事務所 間瀬高歩
- 6年間で100名以上の環境リーダーを輩出!-だいとうシニア環境大学/地域産業イノベーショングループ 武藤健司







