アルパックニュースレター189号

奥河内くろまろの郷がオープンしました

執筆者;建築プランニング・デザイングループ 鮒子田稔理・三浦健史
地域産業イノベーショングループ 原田弘之

 大阪府河内長野市の高向(たこう)エリアに地域活性・交流拠点施設として奥河内くろまろの郷がオープンしました。
 歴史通の方なら「高向」+「くろまろ」ですぐにおわかりかと思いますが飛鳥時代に南淵請安らとともに国費留学生として隋に渡り帰国後に国博士として活躍した高向玄理が本拠地としていたのがこの高向地域といわれています。
 河内長野市では平成23年より「ちかくて・ふかい」をキーワードに「奥河内構想」のプロモーションを展開しています。これは若手職員で構成される少子対策プロジェクトチームの発案によるもので、河内長野市を中心とする大阪南東部の緑豊かなエリアを「奥河内」と名付け、大阪都心部から電車で30分という利便性が高いエリアでありながら緑豊かな環境の中で日帰りトレッキングやカヤックなどのアウトドアライフを楽しむことができる魅力あふれる地域であることをPRしていこうというものです。
 奥河内くろまろの郷はこの「奥河内構想」のイメージを継承しつつ、多品種の農産物や良質な林産物にも恵まれ、また、前述のように古来より培われた歴史文化の深い味わいを楽しみながら学べるなど、多くの魅力を有したこの地域の情報発信とヒト・モノ・コトをつなげる交流施設として整備されました。
 施設全体は奥河内の情報発信機能と奥河内エリアの玄関口の機能を担った「奥河内ビジターセンター」とJA大阪南直営の農産物直売所「あすかてくるで河内長野店」となっています。今回アルパックは敷地約2haの全体配置計画と奥河内ビジターセンターの設計監理、管理運営の検討について関わらせていただきました。
 奥河内ビジターセンターでは、地域情報の発信機能として地域産品の展示販売コーナー、様々な体験や研修も行える多目的スペースに加えイートインスペースがあり、焼きたての天然酵母パンや石窯ピザ、河内長野の旬の食材を使ったスープやジュースが楽しめるようになっています。
 アルパックの業務は、平成25年春からスタートしましたが、市には市制60周年である平成26年中に施設をオープンさせたいという意向があり、基本設計から工事完了まで非常にタイトなスケジュールでした。設計当初は管理運営者が決まっていませんでしたので、できるだけフレキシブルに使用できる空間としました。設計が終盤に差し掛かった平成26年春に管理運営者が決定しました。センコー・電通・アッティーヴォ共同連合体がプロポーザル方式により指定管理者として選定され、決定の後すぐに共同連合体の意向を反映してイートイン工房内の厨房機器を見直し設計完了して工事に取りかかりました。
 設計にあたって河内長野市芝田市長より「他にはない施設をつくって欲しい」という大変難しい命題をいただいていました。河内長野市という市の特性やこれまで展開されてきた奥河内構想を読み込んでいく過程で、シンプルでありながら木の暖かみや無垢の感じをモチーフとすることで、河内長野市らしい=他にはない建物となることをめざしました。
 建物の内外装の木材には河内材を使用、開口部は建物と外部空間が一体となるよう大きめの木製サッシとし、周囲の里山風景に溶け込むような外観としました。


 

 

 近隣には既存施設としてアルパックで設計を行い平成2年に開園した大阪府立花の文化園や河内長野市立歴史学習館「くろまろ館」、林業総合センター「木根館(きんこんかん)」があり、エリア全体で「あそぶ・まなぶ・たべる」を楽しめるエリアとなっており、今回の配置計画ではこれらのエリアと奥河内くろまろの郷の動線が滑らかにつながるように心がけました。
 また、この敷地はもともと花の文化園の駐車場として使われていて、引き続き花の文化園のお客様も駐車されるため、通常のこういった直売所や飲食スペースよりも駐車時間が長くなることが予想されることから、普通車300台・大型車6台を確保するようにしました。
 オープニングセレモニーが行われた11月29日午前中は前日予報では降水確率70%でしたが、雨は降らずセレモニーの間には時折日差しがこぼれ、今回関わったすべての人の労をねぎらっているかのようでした。


 

 

 地域の方や近隣の方にとっても待ちに待ったオープンとなり、あすかてくるで河内長野店には店内に入るまでに長蛇の列ができ、奥河内ビジターセンターでも、パンを買うのに30分以上の行列ができていました。地元でつくられたジャムなどの加工品や木工品も人気を集めていました。
 アルパックは今回プロポーザルで選定されこのお仕事をさせていただきましたが、企画提案書を作成するのに先立って敷地を訪れたときには、真冬の寒い日ということもあり、この広い空間にほとんど人影がありませんでした。そのときに1本のクスノキに一目惚れし、このクスノキをシンボルツリーとして計画していこうと決めました。今後はこのクスノキが奥河内くろまろの郷の成長を見守ってくれることと思います。
 今年夏頃には、奥河内ビジターセンターの横に河内長野産の野菜を使った料理をビュッフェ形式で楽しめる地産地消レストランがオープンする予定です。私たちも奥河内へ通う日々がまだしばらく続きます。
<奥河内くろまろの郷>
住所:大阪府河内長野市高向1218番地1
Tel:0721-56-9606
ホームページ:http://okukawachi.or.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/kawachikyoten