アルパックニュースレター190号

京都の中心市街地をデザインする

執筆者;名誉会長 三輪泰司

 今、京都の四条通では歩道の拡幅工事が進んでいます。京都事務所のある高倉通付近では、専ら夜間工事がたけなわです。

20年目の改修事業

 現在の歩道・防護柵が整備されたのは、1995年、阪神・淡路大震災の年でした。四条繁栄会商店街振興組合創立25周年式典と併せ、防護柵の竣工を、ブライトンホテルで祝ったのは、4月24日でした。
 四条通の四条繁栄会地区は、烏丸通から鴨川まで、約千メートルあります。3代目アーケードと歩道の舗装が完成したのは、1988年9月でしたから、8年半ぶりの事業でした。防護柵は車両の進入・飛込みから歩行者の安全を確保する機能と、歩行者の横断を抑止し、交通事故の発生を防止する機能があり、「P種歩道用横断防止柵」の諸元を満たす必要がありますが、八坂神社の参道である四条通は、祇園祭の宵山・巡行時の、特別な機能が要請されます。

「参道」のデザイン

 四条通の防護柵は、単柱のボラードタイプと門型のフェンスタイプをロープで繋ぐ方法をとり、宵山の歩行者天国の時は、ロープをはずし、フェンスに巻きつけるようにしています。籤改めの所では、フェンスを抜くようになっています。バス停では荷物を置いたりちょっと腰をかけられるように、交差点近くではフェンスが5センチほど低くなり視覚障害者に注意を与えるなど、細かな工夫が凝らされています。辻には道案内の標識を立て、外来者が、何処にいるか分るようになっています。
 工事は埋設物を避けるなど、土木設計としても技術力を要します。風雨に晒されるので、素材には耐候性が要求されます。ロープはべクトランという商品名で、明石架橋のガイドロープです。数年間も潮風に耐える性能を持っています。街中では煙草の火などへの耐火性も要します。祇園祭の舞台ですから、造形デザインでは、鉾を抽象化したカタチ、注意を惹きつつ落ち着いた風格ある古代色系のイロを採っています。
 京都の市内は大震災の被害がなかったものの、鋳鉄製の防護柵を製作していた虹技(株)の工場が姫路で、急遽、内陸部を迂回して、工事に間にあいました。


フェンスタイプ 基本パターン(設計:鵜飼奈弓)

フェンスタイプ 横断歩道及び交差点付近(設計:鵜飼奈弓)

四条通の防護柵

「舗装」のデザイン

 人間は歩いている時、水平よりも2度ほど下を見ているそうです。街路空間のデザインで、舗装の材質と造形が重要であるゆえんです。四条通の舗装材は白と赤の御影石で、市松模様を45度斜めに貼ることで“動き”を演出しています。
 今回の歩道拡幅で約1.5メートル拡がった部分の舗装材は、はじめは京都市の仕様によるという話しでした。御池通の舗装材です。単価が違います。差額分は地元負担でということになりました。
 昨年1月、四条の御旅町町内会の新年会で「歩道拡幅後の夢」を語らせて頂きました。リッチな歩道は、ドレスアップしてウインドーショッピングするのに似合います。歩道が拡がると“引き”があるので、お店をバックに写真を写せます。お店の中からは、お客さんがよく見えます。前と後を比べてご覧頂いたらどうでしょう、とお話ししました。
 八坂神社参道として繋がる祇園商店街の舗装も四条通に似て美しいです。河原町通のグリーン商店街もグレードが高いです。それに比べると、京都のメインであるはずの烏丸通はどうでしょう。ココン烏丸は立派ですがその前の歩道は惨憺たるものです。
 2001年1月、四条繁栄会は、沿道地区の基本理念を決めました。建築協定を定めようとして定めたのですが、地区計画に方向転換し、2003年7月、都市計画決定を見ました。その基本理念になりました。一言でいうと「風格と華やぎ」です。舗装・防護柵の造形デザインは、この理念の表現です。


拡幅工事中の四条通

御影石で動きを演出した舗装

山鉾の紋

コミュニティ・デザイン

 中心市街地は大きなビルが建ち並んで「都市をデザインする」という感覚になりますが、私どもは「コミュニティ」をデザインさせて頂くと考えています。コミュニティの空間は大小の私有建築と、街路に代表される公的所有の施設からなっています。
 所有権は財物ですが、意志といってもよいでしょう。これらの性格の異なる多数のデザインを成功させるには協同組合的な方策が有効だと考えています。
 洛南の京都ファッション産業団地は、京セラ・ワコール、吉忠、そして京都府総合見本市会館(パルスプラザ)も加わった企業・公共コミュニティです。組合の「3ヶ条の憲法」(1)京都市の都市計画に従う、(2)ファッション団地にふさわしい建築を作る、(3)運営は平等互恵を旨とする、にあるように一人一票のロッジデール原則をもって自律的に運営しています。「ファッションセンター」だけは株式会社ですが、組合は任意団体です。昭和38年2月の発足当初は中小企業の寄り集まりでしたが、今では上場企業ばかりになりました。
 四条通では歩道も含め街路は京都市のものですが、舗装や防護柵は四条繁栄会が商店街振興組合で経済産業省の補助を受けることができるのです。

都市デザインの形と心

 商店街振興組合も信用金庫も農協・生協などと同じ協同組合型です。ビッグビジネス必ずしも株式会社方式しか知らないのではありません。東京の大丸有(大手町・丸の内・有楽町)は随分柔軟です。スケールでは四条烏丸地区は、大丸有にはおよびませんが、文化的ストックは、はるかに深いのです。
 昭和59年(1984年)10月、平安建都1200年記念事業推進協議会は、記念事業・関連事業おのおの6つを決めました。京都経済センターは記念事業です。記念すべき最後の事業というわけです。
 私どもは、関連事業であるパルスプラザの立地選定から設計監理までフルコースを担当させて頂き、昭和62年(1987年)第一号として完成しました。
 記念事業の京都駅改築は、基本計画から国際コンペのプロフェッショナル・アドバイザーまで努めさせて頂きました。ファッション団地では地区計画と用途地域の見直しを、駅ビルでは本体の特定街区、それを担保する土地区画整理と街路計画および広場計画と4つの都市計画手法を使っています。
 公と民の新たな協働関係―コ・オペレーションが見えてきました。都市デザインの対象は、個別建築に加えて、街路の舗装、植栽など沿道・街区すべて含まれます。都市デザインは事業計画、事業手法というハード・ソフトに加えて事業主体の理念・ココロ即ちハートウエアを造形デザインまで貫いて実現します。パルスプラザで、京都駅ビルで、ただの建物ではない、ただのオフィスビルでない、先人から受継いだココロをココロとしてカタチにしたいと念じて心血注いだつもりです。
 都市づくり、地域づくりの事業は「天の時、地の利、人の和」づくりだと思います。
(みわ ひろし:四条繁栄会商店街振興組合・顧問)

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2015年3月1日発行

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