アルパックニュースレター190号

連載6「創始者に聞く」

インタビュアー:都市・地域プランニンググループ 橋本晋輔

今のアルパックには様々な専門分野の人がいますが、そのことについてどのように考えていますか。

 アルパックのポリシーは、拡大主義ではなく、拡張主義です。違う領域の人とつきあい、専門の領域から広げていくことで新たな発見や取り組みが生まれてくるのです。
 それにはトップの活動力が効きますね。トップは広く見渡せます。世の中のニーズと専門性をくっつけると面白いことができる。市場性も生まれる。トップへの求心力も生まれます。
 アルパックでは保育園の業務を沢山やっていますが、建築チームの専門性とソフトな事業システムを結び付けた例です。京都では保育園の多くはお寺の厄介になっていて、建物の修繕費などに市が勧奨交付金という補助金を出していました。だん王保育園を訪ねて保育室にしている方丈を見ると棟が波打っています。屋根裏へ上ると棟木を支える束が朽ちていました。180年も経っている。グラッと地震がきたらえらいことになる。樋や床の修繕だけではおっつかない。園長研修会で、補助金をプールして集中的に改築したらと提案しました。昭和42年のことです。運営費のプール制を進めておられたので理解され、保育事業団が設立されました。自転車振興会や日本競馬会にも助成をお願いに行きました。1年に10ヶ園でも10年すれば100ヶ園になります。業務としても「柱」になり、たくさんの建築事務所にとって市場性ができたのです。興味があるというだけでは「研究」のレベル。社会的に有用な「ビジネス」になると続いていきます。

市場性をつくりだす提案をするには個々人のビジネスセンスを磨くことが必要だと思いますが、その時に大切なこととはなんでしょうか。

 私はもともと味噌屋のセガレです。三輪というのは祖父が養子に入った公卿侍の姓。元は本田姓で、御所の近くで禁裏御用を勤めていた醸造を業とする商家です。今、7代目で創業185年で、老舗のたぐいですが、中小企業です。明治初年につくられた3ヶ条の家訓があります。
 その第二条は「意味なき費用は費やすなかれ」。裏を返すと意味のあるお金は思い切って使え。お金は回すべし。その判断は直感と計算。感性と理性。初めは教わり、真似をし、失敗もし、反省して磨かれるものです。第三条が「家の子は宝、慈しみ育むべし」。家の子とは従業員、仕入先です。実際、夜学と称して丁稚達を教育していましたし、仕入先に小切手で心配させないよう、昭和初めで当座預金百万円を切らないと言っていました。体系的に教育されたわけではありません。一族のお祭や法事で、近所の豆腐屋のおばちゃんや、お菓子やのおじさんとの日頃の会話で学ぶのです。

「拡張主義」という考え方についてもう少し教えてください。

 祖父が教えてくれた「高い山ほど裾野が広い」という言葉があります。「富士山を見ろ」というわけです。10代、20代は裾野。どこから登ってもよい。あちこち離れた所でも広く色々なことをやれ。7合目、8合目と登って行くと、それが近づいてくる。
私は、ロータリーの青少年交換学生を連れて富士山へ8回登りました。ほんとでしたね。頂上に上ると吉田口も富士宮口も繋がってくる。若いうちは思い切って裾野を広げて行くことです。はみ出したり、失敗しても、誰か助けてくれます。30代、40代となると、専門性は深まりますが、可能性が減ってくることでもあり、自分で責任を取らねばならないことでもあります。
 頂上に近いトップは最高にしんどい。先頭に立つ指揮者は猛烈に消耗します。体力がダウンすると気力も衰えます。受託の成績がダウンします。私は早い目、早い目に退くことにしました。58歳で社長を辞し、63歳で代表権も外してもらい、今は、義務もついでに報酬も新入社員なみに軽くしてもらい、もっぱら若いみなさんをサポートしたり、経験や智恵を伝承するお役目です。

<インタビュアーの感想>
 今回インタビューをして、市場性をつくれるような提案をすることが大切という言葉が印象に残りました。その保育事業団の取り組みをしたのが36歳のころだそうです。その年齢まであと数年ですが、柱を一本でも立てられるようにこれからも業務に向き合っていきたいと思います。



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2015年3月1日発行

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