アルパックニュースレター162号
伊賀の菜種油「七の花」が本格生産を始めます
「菜の花畑に入日薄れ、見渡す山の端霞深し・・・・」
7月いよいよ純伊賀産の菜種から伊賀で搾った菜種油が出荷します。
伊賀地域は伊賀米の産地として米作を中心とした農業が展開されてきましたが、主食としての米離れや政府の減反政策から転作を余儀なくされてきました。
今回ご紹介する伊賀市の菜の花プロジェクトは、菜の花を転作作物として栽培し、菜種油を搾ることによって新たな地域活性化に結びつけることを狙いとしています。
伊賀市菜のプロジェクト
このプロジェクトの全体スキームは次のとおりです。(1)転作作物として菜の花を栽培すると同時に、遊休農地を解消し、環境に優しく美しい農村風景を再現することにより観光利用を図る(伊賀市全体で100haの栽培面積を目標としています)。(2)伊賀産の菜種から搾った菜種油を安全安心の地産地消のシンボルとして商品開発し、新たな伊賀ブランドに育てることによって地域の活性化を図る。(3)廃油を回収し、バイオディーゼルエンジン(BDF)として農業機械に利用し、環境に優しい農業を実現する。また、菜種油の絞りカスは、肥料として利用することで、地域資源の循環を図る。
アルパックでは、今回、搾油施設の整備と商品の開発や販売戦略というハードとソフトの両面にわたり、この菜の花プロジェクトのお手伝いをさせていただきました。
搾油施設は、旧大山田村の既存施設共同作業所を改修し、菜種の荷受け・乾燥設備と搾油設備を計画・設計しました。そして新たに生まれ変わった搾油施設を「菜の舎」(なのくら)と命名しました。
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地域ブランドの確立に向けて
これまで菜の花プロジェクトは全国各地で取り組まれており、伊賀市ではやや後発のプロジェクトとなります。それだけに伊賀産の菜種油の品質や商品イメージ、販売戦略などが重要な要素となりました。
今年度は伊賀市全体で30弱の地区組織や個人が菜種を栽培しました。その面積は約35haとなっており、昨年の約1.5倍に拡大しています。100haも夢ではありません。
地域ブランドとして伊賀市では、基本的に各地区の菜種と菜種油はそれぞれの地区のブランドとして地域の活性化に結びつけることとしています。そのために、地区毎に菜種を受入れ、乾燥・搾油ができるように搾油能力の高いラインと少量の搾油もできるラインを設計しました。菜種は大変デリケートで含水量が多いとカビが発生したり自然発酵してしまいます。望ましいのは栽培地で収穫してすぐに天日乾燥することですが、乾燥場所も水分管理も必要で、どの生産者もできることではないため、収穫するとすぐにこの施設に持ち込まれます。収穫は一時に集中するため、乾燥設備でも一挙には乾燥することができません。そこで低温倉庫を設け一時貯蔵することによって計画的に乾燥・搾油を行うこととしました。
菜種は水分量8%程度で安定し、生き続けます。乾燥設備は8%乾燥を目標とし、生きた菜種を搾った新鮮菜種油を第一の商品イメージとしました。最近はどの地域の菜種油も圧搾法による搾油を行います。より搾油率を上げるためには水分量が少ない方がよいため、搾油の前に焙煎(加熱)することが一般的ですが、伊賀では非焙煎(非加熱)で搾油もできるラインを構成しました。一般に焙煎圧搾の搾油率は30%といわれますが、非焙煎の場合は20%程度になります。それでも生きた菜種にこだわりました。
少量の菜種に対しては、遠赤外線乾燥機を導入して非加熱乾燥をして搾油することもできます。
その他、湯洗工程や加圧ろ過、自然ろ過工程を選択できるライン構成として、高品質の伊賀産菜種油をめざしています。
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チーム七の花
こうして搾られた菜種油は伊賀のそれぞれの生産地域のブランドとなりますが、伊賀市ではこだわりの搾油方法で搾った伊賀産の菜種油に統一ブランドとして「な」のロゴマークをつけました。伊賀産の菜種油のどの瓶にもこのマークがついています。
この搾油施設は大山田農林業公社が運営していますが、公社が販売する菜種油には「七の花」(なのはな)と命名しました。伊賀の菜種油にまつわる七つの物語や幸せの数字に因んでいます。また、このCI計画を我々と一緒にしてくれた伊賀市の七人の女性職員にも由来していると我々は思っています。この検討チームを密かに「チーム七の花」と呼んでいました。
伊賀の新しい味
江戸時代までの菜種油は主には行灯などの燃料用として使われていました。農家では稲刈りの終わった後に菜種を撒き、春に収穫した後にまた稲を植えるのです。菜種は天日干しで乾燥させて保存しておき、必要なときに近所の油屋さんに行って絞ってもらうのです。まちのあちこちには、油屋さんがあって人々の生活には欠かせない商売だったのです。「どこで油を売ってたんだ」という言い方は今でもたまに使いますが、実際に油を時間をかけて圧搾法で絞るには手間もかかり搾油率も低いので、値段は高くなります。現在スーパーなどで安く販売されている一般的なキャノーラ油の多くは、外国産の菜種で溶剤抽出法という方法でつくられます。ヘキサンなどの溶剤を入れどろどろに溶かしてつくる抽出法は菜種の99%の抽出率となり、脱臭や脱色工程を経て、クセのないサラサラした油となるわけです。
どこの地域の菜種油もキャノーラ油の5倍程度の値段がついています。気軽に天ぷら油にというわけにはいかないかも知れませんが、生産地が明らかで安全安心、色もきれいな澄んだ琥珀色で、香りも豊かです。また天ぷら油としてもへたりにくいという特徴があります。生きた菜種から搾った生の菜種油ですから、オリーブオイルのエクストラバージンオイルと同じように使っていただけるものです。
この度初めての伊賀産菜種で伊賀で搾った菜種油ができあがりますが、これからもさらに高品質の菜種油の追求や菜種油を使ったレシピの開発、マーケティングのお手伝いをしていこうと考えています。
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アルパックニュースレター162号・目次
特集「農村とまちづくり」
- マチとムラとの新しいつながりのカタチをつくる!-堺市と奈良県東吉野村との広域連携-/大阪事務所 原田弘之
- 農村の景観保全に取り組む~景観農業振興地域整備計画モデル地 区の検討~/大阪事務所 森岡武・絹原一寛
- 伊賀の菜種油「七の花」が本格生産を始めます/大阪事務所 高坂憲治
- 地域住民で守る農村コンビニ「(NPO)耶馬渓ノーソンくらぶ」/九州事務所 山田龍雄
- 人材育成講座によるグリーンツーリズムの推進/京都事務所 江藤慎介
ひと・まち・地域
きんきょう
- 西宮市民が考える「暮らしとまちのビジョン(案)」~西宮市都市計画マスタープランの取り組み/大阪事務所 清水紀行
- 大都市圏まちづくりフォーラムを開催しました/代表取締役社長 杉原五郎
- 第44期株主総会を開催しました/代表取締役社長 杉原五郎















