アルパックニュースレター162号

大都市圏まちづくりフォーラムを開催しました

執筆者;代表取締役社長 杉原五郎

フォーラムに91名の多彩な方々が参加

 「いったい、どれくらいの参加があるのだろう」こんな不安を持ちながら、6月29日(火)の午後、大阪天満橋のドーンセンターで、大都市圏まちづくりフォーラムを開催しました。
 フォーラムを企画した5月中旬、40人~50人ほどで密度の濃い議論ができたらいいと考えていましたが、案内チラシをメールやアルパックのニュースレター、共催した(株)地域・交通計画研究所のネットワークなどでご案内をしましたところ、尻上がりに反響を呼んで、最終的に110名を超える申し込みをいただきました。
 結果、当日参加いただいたのは、基調講演者とパネリスト、スタッフを含めて91名でした。行政(国土交通省近畿地方整備局、大阪府、兵庫県、大阪市、神戸市、尼崎市、八尾市、精華町等)、民間企業(URサポート、大阪ガス、電鉄会社等)、シンクタンク・コンサルタント、学識者、学生など多彩な方々のご参加をいただきました。京大名誉教授の山田浩之先生、名大名誉教授の河上省吾先生、大阪工業大学の村橋正武先生にご出席いただきましたことは、たいへん光栄でした。

内外の大都市圏をめぐる動向について情報共有

 フォーラムでは、最初に、京都府立大学公共政策学部の青山公三教授に、「グローバル時代の大都市圏政策~米国での事例を踏まえて~」をテーマに基調講演をしていただきました。青山先生には、1990年代の初頭から15年ほど米国・ニューヨークにあるシンクタンクに勤務された経験を踏まえて、2つの事例(グレーター・ワシントン・イニシアティブ、シアトル・ピュージェット湾都市圏の取り組み)を紹介しつつ、京阪神都市圏のこれからについて問題提起をしていただきました。
 次に、パネリストの一人、石塚昌志氏(近畿地方整備局建政部長)から、昨年8月に策定された「近畿圏広域地方計画」の概要と主要プロジェクトのひとつ「文化首都圏プロジェクト」を素材に関西のブランド力向上の取り組みについてご紹介をいただきました。
 さらに、もう一人のパネリスト、斉藤道雄氏((株)地域・交通計画研究所長)から、イギリス・イングランドのリージョン計画など欧米の大都市圏制度について情報提供していただきました。

京阪神都市圏が直面している課題を中心に意見交換

 今回のフォーラムは、「グローバル時代の京阪神都市圏について考える」というたいへん大きなテーマでパネルディスカッションをしました。主要な論点は、第1に、京阪神都市圏が有する特徴と強みを活かして、どのようにその発展の方向を見いだしていくのか、第2に、京阪神都市圏が直面する課題を広域的に調整し解決していくための制度と仕組みをどのように構築していくのか、の2点でした。
 第1点目について、石塚さんは京阪神都市圏が有する文化、具体的には、お茶、水、信仰、丹後ちりめんなどの「本物」に着目して、関西のブランド力向上に向けた取り組みを幅広く展開してはどうか、と問題提起されました。これまで、関西では、「地盤沈下論」や「二眼レフ論」などが主張され、結果として「東京追随」に陥ってきた中で、世界に誇れる関西の文化や歴史に確信を持って、関西ならではのアイデンティティを明確にした取り組みが大切と実感しました。
 第2点目については、青山先生と斉藤所長から、米国、英国・イングランド、フランスなどの大都市圏での広域連携の取り組み事例が紹介され、京阪神都市圏における広域連携・広域調整の具体的なあり方を考える視点が得られました。



日本の地域再生に向けて

 国土交通省は、本年5月、成長戦略をまとめ、その中で、「大都市の国際競争力強化」の方向を示しました。このまま推移すると、東京などわが国大都市圏の国際的な地位低下は免れないとの危機認識のもと、「財政に頼らない成長(規制緩和、民間活力、PPP)」を基調とした大都市イノベーション戦略を打ち出しました。来年度には、「大都市圏戦略基本法(仮称)」の制定を視野に入れています。
 今回のフォーラムをひとつの契機として、大都市圏だけでなく、地方都市や中山間地域を含めた日本の地域再生に関心が高まり、衰退の危機にある地域を元気にしていくための具体的な方策について熱い議論が巻き起こることを期待します。