アルパックニュースレター162号

人材育成講座によるグリーンツーリズムの推進

執筆者;京都事務所 江藤慎介

 近年、都市農村交流活動やグリーンツーリズムに対する期待が高まり、交流ニーズが多様化する中、平成20~21年度に滋賀県で宿泊を伴う滞在型交流活動の推進と交流プログラムの質の向上を目指した、農家民宿及びグリーンツーリズムに係る人材育成講座が実施され、講座の企画・運営をお手伝いしました。

実践的な講座カリキュラム

 具体的には、(1)都市と農村の交流活動の中核的な役割を担う農家民宿の開業を支援する講座(平成20年度、21年度)及び(2)交流プログラムを企画・運営できる人材を育成する講座(平成21年度)を開催し、農家、公務員・団体職員、主婦、退職者、学生等、幅広い年齢・職種の方々が参加しました。
 「農家民宿開業講座」では、「基礎講座」「先進地視察研修」「応用講座」を通じて、受講者が農家民宿開業に向けた第一歩を踏み出せる実践的なカリキュラムを構成しました。
 一方、「グリーンツーリズム人材育成講座」では、都市農村交流の最先端事例に係る講演の後、演習を行い、消費者ニーズの視点から講師に評価いただくことで企画立案やマーケティング能力の向上につなげました。


講座の様子

そば打ち体験

農家民宿は「ありのまま」「無理はしない」

 農家民宿の最大の魅力は、様々な人との出会いにあります。開業に反対していた農家も、交流により感動を体験し、今では積極的に取り組まれているところもあるそうです。一方で「無理はしない」ことも重要な要素です。先進地視察研修で訪れた福井県・ロハス越前や長野県・飯田市でも、「おもてなし」が過剰にならないように注意し、ありのままの自分にお客さんが合わせてもらうようにしています。

「ここでしか体験できない」交流プログラム

 多くの農村地域では「来てくれれば良さが分かる」と言いますが、来たことがない人に初めて来てもらうのが難しい状況です。「お国自慢」の地域資源はどこにでもある中、「ここでしか体験できない」プログラムを作ることが肝要です。そのためには「いくら」「どのくらい」という視点を持ちながら,地域資源と都市ニーズを掛け合わせて「商品」にしていくことが大切です。

グリーンツーリズムの推進に向けて

 講座を通して、(1)滋賀県内の潜在的な担い手の発掘、(2)講座を通じた「気づき」と「やる気」の喚起、(3)励ましあえる仲間づくりといった成果がありました。
 都市農村交流活動による農村地域活性化を図るためには、長期滞在を可能にする農家民宿の開業や、農村資源と都市ニーズを的確にコーディネートできる人材育成が急務である中、講座を通じた継続的な人材発掘・育成の重要性を感じています。