レターズアルパック210号

松の実児童クラブ「高砂子(たかさご)」

執筆者;公共マネジメントグループ/丸井和彦

 「新しい児童クラブを創りたいねん。」「こども達がわくわくするこども達の居場所。」本誌190号でご紹介した「松の実保育園」の松井園長先生は、こんな言葉で新たな児童クラブ(放課後児童クラブ)について語り始めました。
 1984年6月に滋賀県大津市唐崎に産声をあげた松の実保育園は、無認可の時代を含めて35年、しっかり地域に根をおろし、沢山の人びとに支えられてきました。2002年に建設した松の実保育園(第1園)では、奈良の古民家の蔵を移築したホールとしました。そこでは、ほぼ毎月イベントが開催され、園児だけでなく保護者の方々も楽しみます。
 2011年に開園した第2松の実保育園では、既に定員20名の児童クラブが運営されていました。今回は、児童クラブとして独立した施設を建てる計画です。前回同様ご自身が建築家である理事長の松井俊さんは何も言われません。「園長の考え」を良く聞いて、おびただしい数の計画案を作成しましたが、園長先生のイメージにぴったりのものがありません。園長先生の頭の中には、空間をイメージする言葉と同時に、こども達の日常生活や成長、家庭環境や地域の環境など様々な思いと言葉が溢れています。それをくみ取るのが我々の仕事です 。
 あるとき園長先生は近江八幡市にある旧柳原学校に私を誘われました。「この空間構成がイメージなのだ」とおっしゃいました。
 旧柳原学校は、1876年高島郡新儀村(現高島市新旭町)の初等科小学校として建てられ、滋賀県下に現存する最古の学校建築です。1970年近江八幡市近江風土記の丘に移築されました。折悪しく休館だったのですが、窓から覗くほの暗い内部は、細いドマに沿って板の間が連続していました。


全景

夜景

夏休みの児童クラブ

開廊

 どこからでも入ることができ、こども達が自由に使うことができる空間。現代の住宅には見られない続き間の中にみつけることのできるこども達の居場所。それらを思い描いた計画案が最終案となりました。
 計画案は、南側駐車場から隣接する第二松の実保育園への動線上に半屋外の広いドマ(開廊)のラインを引き、そのドマに沿って4つの続き間(板の間2室、畳の間2室)を配置した極めてシンプルなものとなりました。ドマにそって細い縁を設け、どこからでも部屋に入ることができ、どの部屋からも琵琶湖を観ることができます。
 ドマには書架を設けました。ドマを通るこども達や保護者、ここを訪れる近所の人たちが気軽に本を手にとって縁に腰掛けて本を読める。本は誰が置いてくれてもよいし、誰が借りていってもよい。
 この児童クラブの定員は40人です。小学校1年から6年生までが対象ですが、空いている時間帯は地域の高齢者の集まりにも使ってもらいます。園長先生の構想では、ここで「こども食堂」を行う計画です。あくまでもこども達の健やかな成長を第一に考えているのです。


開廊書架

続き間

 児童クラブが開園してしばらくすると、こども達それぞれにお気に入りのスペースができました。南の端の畳の間には丸窓のある付書院風のスペースを設け、壁を園長先生お気に入りの鮮やかな「金沢群青」のジュラク壁としました。「ここも、こども達のお気に入りの場所。」園長先生がうれしそうにおっしゃいました。


 平面図

レターズアルパック211号・目次

2018年9月発行

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