アルパックニュースレター167号

「現場発!産学官民連携の地域力」関西ネットワークシステム編

発行:学芸出版社 紹介者;大阪事務所 中塚一

「産学官民連携」言うは易し、行うは難し

 近年の様々な分野のマスタープランやアクションプランにおいて、最終章「今後の進め方」で書かれている「産学官(民)連携で進めていきます」という文章とネットワーク(しているような)概念図。しかし、現実は、それぞれの組織における「誰」が他の組織の「誰」とつながり、相互の信頼関係の中で、具体的な活動や事業を行っていくのか。その関係性が無いと次の展開が見えてこないと感じている方が多いのではないでしょうか。

KNSという異分野「コミュニティ」

 本書は、過去10数年間にわたり、関西を中心に活動する産学官民の有志メンバーが、お互いにフラットな関係を築き、自主的にかつ積極的に交流・協働していく人的ネットワークに支えられた異分野コミュニティである関西ネットワークシステム(KNS)のメンバー22名により、正に、「何を思考し」「誰とどの様につながり」「何をしたのか(しようとしているのか)」という、それぞれの現場で日々奮闘する様子を、自ら書き記した力作です。
 それぞれの熱い活動内容については、実際に本書を手に取って頂き、熟読していただくとして、本稿では、何故このような異分野「コミュニティ」が誕生したのかを、本書より紹介させて頂きます。

「コミュニティの場」という概念

 KNSでは、約276人(2010年12月末)のメンバーが、年間60~70日に及ぶ総会や7つの研究会などの様々な活動が展開されています。K(必ず)、N(飲んで)、S(騒ぐ)というKNSの活動(私もその魅力に取りつかれた一人ですが)には、「参加する人同士が、所属や肩書き、年齢、性別、国・地方など背中に背負った看板を脱ぎ捨てて、ひとりの自立した個人として関係性を創る」という大きな理念のもと、「地域産業や科学技術の振興、まちづくりの実践に取り組み、ひいては地域経済の活性化に貢献すること」をめざすという、関西の創造的な元気の源が溢れています。(詳しくは、本書とhttp://www.kns.gr.jp/を参照下さい)
 このような創造的な関係性を生み出す「場」を「産学官民コミュニティ」と表現し、「目的を持つ人びとが、自由意志で加入・離脱し、ある目的のために意識的に結合し形成する人為的集団である『アソシエーション』に近い」概念として捉えられています。

「フラットな関係性」

 KNSを形づくる上で、決定的で重要なキーワードとして「フラットな関係性」が挙げられています。「気さくな雰囲気、ヒエラルキーの垣根が低い関係性、どっぷり議論する場」、そのような「場」をつくる上で、「○○会議や△△協議会の名称にあるように、『連携という名の形式的会議』」ではない「フラットな関係性」を、関係者の熱い想いと熟議による深い時間を踏まえ、どのように構築していったのかが熱く語られています。
 正に、近年、様々な地域のまちづくり活動において展開されている「ラウンドテーブル(井戸端会議など)」と同じ理念にもとづく「場」づくりです。
 最後になりましたが、KNSは、岩手大学を中心に20年近く活動を展開しているINS(岩手ネットワークシステム)に魅せられたメンバーがつながり、関西風にアレンジされてスタートされたと聞いています。今回の東日本大震災に対しても、「足もとの小さなイノベーションが地域を変える」ように、KNSが、関西での様々な小さな活動が東北に元気を送りつづけるネットワークとなることを期待しております。


本表紙

アルパックニュースレター167号・目次

2011年5月1日発行

特集「安全で安心して暮らせるまちづくり」

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