アルパックニュースレター167号
成逸学区・上鳥羽学区まちづくり物語
2002年度から立命館大学産業社会学部で開講した石本ゼミは2010年度をもちまして閉講しました。9年間のゼミ活動で125名の学生がゼミを巣立ちました。ゼミは、まちづくりの現場を私と一緒に体験し、実践を学び、多くの住民の方とコミュニケーションについて学ぶ形式で進めました。ゼミでは京都市内の多くのまちづくり活動に参加しましたが、その中で長期にわたって活動を行った成逸学区、上鳥羽学区について、活動内容を「まちづくり物語」としてまとめましたので、報告します。
成逸学区まちづくり物語
成逸学区は上京区の北西部、西陣に位置します。明治2年に成逸小学校が開校し、その通学区が成逸学区となりました。児童減少のため、成逸・西陣・桃薗・聚楽の4学区が統合して西陣中央小学校となり、成逸小学校は平成9年に閉校しました。
成逸学区では昭和48年に組織された「成逸住民福祉協議会」が主体となってさまざまな地域活動を行っています。この「住民福祉協議会」は上京区にしか見られない組織形態で、学区のすべての各種団体と町内会が参加しています。
近年、学区内で共同住宅の増加による町内会加入率の減少傾向が顕著となっており、平成19年10月に新築マンション居住者のマンションが位置する町内会への加入をルール化した「せいいつ方式」を策定しました。ワンルームマンション居住者は日常的な町内会活動への参加は難しい面もあるため、「準会員」という考え方を導入しました。準会員は、総会における議決権や役員の被選挙権、選挙権はありませんが、町内役員等の役割分担の必要はなく、市民新聞等や協議会の行事の情報提供を受け、その行事に参加することができます。
「せいいつ方式」の検討段階では「町内会の役割やメリット」についての質問が多く寄せられました。そこで、マンション居住者と戸建て居住者の交流を通して、ご近所同士が顔見知りになることを目的に「せいいつ住まい交流会」を企画しました。平成20年6月の第1回交流会から平成22年12月までに7回開催しました。
町内会加入促進に向けた「せいいつ方式」および交流会の継続的な取組の成果として、平成20年度に796世帯まで減少した学区の町内会加入世帯数が増加に転じ、平成21年度には842世帯になり、平成22年度には882世帯が想定されています。
平成20年度には成逸自主防災会と協働で「成逸学区避難所運営マニュアル」を策定しました。避難所運営委員会の各活動班の役割を協議会の各種団体に割り振り、平成21年度の防災訓練では各種団体等において活動班のシミュレーションを行い、マニュアルの精査を行いました。今回の東日本大震災に遭遇し、日常からの取組の必要性を再認識し、マニュアルをもとに体験学習を継続します。
上鳥羽学区まちづくり物語
上鳥羽学区は南区の鴨川と桂川に挟まれ、国道1号など南北東西の幹線道路が集中し、事業所や工場なども多く立地する面積の広い学区です。町内会加入率は低下傾向で、マンションや学区内で建設の盛んな建売住宅にお住まいの方の加入率が低いことが要因です。
平成17年2月に、南区と京都市景観・まちづくりセンター主催で「地域まちづくりセミナー」が企画され、そのコーディネーターを依頼され、「地域における安心・安全」をテーマに、「安心して暮らせる上鳥羽のまちづくり」と題してワークショップを開催しました。このワークショップを契機として、平成17年度以降、自治連合会を中心に多くの団体等と大学のゼミ、京都市との協働による「安心安全のまちづくり活動」がスタートしました。
平成17年7月に「向こう三軒両々隣り-安心安全の数珠つなぎマップ作成」の提案を行いました。この取組は地域全体が子どもたちや高齢者を暖かく見守り、支えあう地域づくりを目指し、お互いの目と声かけでつなぐ、「まちの安心・安全のつながり」の度合いをビジュアルに示し、取組状況の確認することを目的に実施しました。
平成18年4月に自治連合会と各種団体、PTA、小学校などが集まって、「あんしん・あんぜん上鳥羽推進委員会」を設立し、数多くの取組を企画し、毎年継続して実施しています。
○上鳥羽あんしん・あんぜんパレード(4月)
○竹プランターづくり(春と秋)
○七夕の夕べ(7月上旬)
○夏の納涼フェスティバル「夏の夜市」(8月)
委員会では、今一度ご近所づきあいを見直し、小さな目くばり・心くばりを復活することで、まちの安心安全力を再生するため、平成18年度まちづくり目標を「小さなおせっかいがここちよいまちづくり」と設定しました。委員会を中心とする「小さなおせっかい」の運動が3年目を迎え、平成21年2月21日に「上鳥羽-小さなおせっかい宣言」を行い、「小さなおせっかいに包まれた、温かい、ここちよい上鳥羽のまちづくり」を広く発信しました。
また、「小さなおせっかい寸劇」や「小さなおせっかい賞」の創設など、「小さなおせっかい」をテーマに多くの活動を企画しました。さらに、「小さなおせっかい」を子どもたちがいつでも口ずさむことができるようにと、「小さなおせっかい」ソングを作り、平成22年7月の七夕の夕べで発表しました。このように上鳥羽では、小さなおせっかい運動が、ゆるやかですが、定着化しています。
私のゼミ終了により、大学の講師の立場での2つの学区との関係も同時に終了となりますが、これまでの活動の経緯と経験を活かして、今後ともまちづくりプランナーとして、まちづくり活動を支援していきたいと思います。
以上が2つの学区のまちづくり物語にまとめた概要です。2つの物語につきましてはアルパックのHPにファイルがありますのでご覧頂ければ幸いです。
最後に私事ですが、昨年の11月に体の変調から、11月15日に入院、今年の1月5日に退院、その後自宅療養で、ようやく2月中旬に会社に復帰し、現在に至っています。原因は今も不明で難病認定を受けています。この間、関係者のみなさんにご迷惑をおかけし、ご心配頂きましたことに深く感謝いたします。
関連サイト:「成逸住民福祉協議会」のホームページ
アルパックニュースレター167号・目次
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