アルパックニュースレター167号
「災害」
大災害1ヶ月で、多くの公共施設や学校等は元に戻しましたが、京都府庁は「半旗」掲揚を続けています。関西広域連合で、京都府は滋賀県とともに福島県担当と決まっています。下写真は、まだ苦難の日々が続く福島県民の皆さんと、気持ちを共にしていますというしるしです。
身近の備え・点検
衝撃の感覚は距離とともに、時間とともに減衰し、局面は刻々と変わって行きます。津波災害のすさまじい光景と、目に見えない放射性物質の挙動に、日本中がこころを暗雲で覆われているような気持ちです。がんばれの声を掛けるのですが、まだ来るのではという不安の暗雲がたれこめています。
さらにうっとうしい暗雲は、この国はほんとうに“安全”を総点検し、“安心”へ大転換するのか、ほんとうの創生へ向えるのか、まだ払拭しきれていない「不信」という暗雲でしょう。
暗雲を除くのは自分自身の身近から。まず、我が家の備え点検。一昨年4月、一番家に居る時間の長い細君の安全と快適を実行しようと、耐震補強を兼ねて居間・台所を改修していました。
次に“意識”の備え。「ロータリーの友」昨年12月号に「備えあれば、患えなし」と題する香川県防災局の乃田防災指導監の簡潔で判り易い講演記録がありました。家族一緒に読んで心構えの点検。
次は、少し拡げて、周りの“まち”に目を向けてみました。
防災・福祉コミュニティ
阪神・淡路大震災の時の神戸市消防局長・上川庄二郎さんから、あの時の迫真の、そして痛恨の記録と、そこからの教訓・提言を頂いていました。
神戸では誰が助けたか。近所の人と家族9.4%。消火活動したのは誰か。近所の人と家族59.1%、消防隊18.3%。上川さんが提言されているように、常備消防力の強化は当然ですが、市民一人一人が力を合わせ、互いに助け合う「防災・福祉のまちづくり」が基礎です。
まちの備え・点検
そこで、次にできることは、自分のコミュニティの“まちづくり”として実行すること。
昨年11月に、桃山南学区の社会福祉協議会・自治連合会の講座で地元のまちづくりをお話ししました。大震災後すぐに、今度は、地域女性会から、呼ばれました。少し先になりますが、6月に桃山南小学校でお話しすることになりました。
京都は内陸都市ですから津波に襲われることはありませんが、地震は幾度も経験しています。
京都市は、伏見区の端、我が桃山南学区域で、東南海・南海地震と、宇治川断層の活動による被害予測をしています。いずれも震度6強。
我が学区域は廻りを川に囲まれています。液状化危険度は高いとなっています。
当然、水害が一番の問題。現に、1965年(昭和40)9月の台風で、宇治川・山科川が氾濫して陸の孤島になってしまいました。その後、排水施設が7ヶ所も作られ、浸水はなくなりました。そうすると、町内会は備えていたボートをやめ、水防団もなくなってしまいました。
地域の防災力は、強くなったのか、弱くなったのか、考えさせられますね。
まちづくりは手間が掛る
本誌149号(2008年5月)に「堤防がすっきりした」と題してご報告していました「山科川・丹後橋周辺整備」は、この3月末、やっと右岸の一部で仮柵をはずし、車イスも通れるバリアーフリー・ゲートの工事が終わりました。始まりから5年掛って、安全・安心は一歩進みました。しかし、左岸はUR桃山団地の再整備とからむので、何時のことになるか判りません。まちづくりがカタチを成すには、とても時間が掛かります。
本誌今号と146号(2007年11月)に石本幸良君が、成逸学区マンション居住者の町内会加入「せいいつ方式」を紹介しています。152号(2008年11月)では山崎裕行君が、この成逸学区での、夜間防災訓練・避難所運営マニュアルを紹介しています。「防災まちづくり」の住民自治は着実に進んでいると言えますが、まだまだ少数派です。
こんにち、どなたも「地域力」とか「地域主権」とか言われます。国も地方公共団体も、地元の「合意」なしには何もできません。でも逆に地元も地方と国の公務員との協働なしには、何もできないのです。
さらに地域自治から市町・府県・国へと「補完性原理Principle of Subsidiarty」による「住民主体のまちづくり」を展望し、組み上げていくには、まず住民自身の統治力を高める、そのための学習・修練を積む、そのためには公務員と専門家がタッグマッチを組んで支援する、ということになるのですが、それは時間と根気の仕事です。
その方向を指し示す「防災・福祉のまちづくり」こそが大きな犠牲に報いる理念でしょう。
長期・広域の備え・総点検
年初から、ぼつぼつと自分の仕事の総点検を進めていました。「21世紀の設計」に始まり「海洋スペース利用計画手法研究」、「近畿日本会地域の計画」そして「関西学研都市構想」と進んできました。
「関西学術研究都市についての第2次提言」(1979年7月)で、関西に設置されることが適切である理由の④に、「長期的展望のもとにおける学術研究は、いわゆるセキュリティの視点からも、行政の中心から一定の距離をもった地方において行われることが望ましい」と書いています。(p-2)
奥田東先生と、この構想の目的は、ナショナル・セキュリティにある。研究機能・情報中枢はバックアップを用意しておくべきであると話し合っていました。筑波とは20年のタイムラグを置く研究機能、西日本・アジアへのサービスを担う国会図書館分館、政府機能の代替へ転換可能な、建設・農林水産などの資料館といった方策です。
2002年(平成14)10月、開館した国立国会図書館関西館は、設置目的にアジアへのサービスが、謳われています。
昨年3月 、“私の仕事館”は無駄だということで閉館になりました。「事業仕分け」で科学技術振興調整費が削減と判断されました。活断層や地震考古学、再生可能エネルギー、超伝導、核融合やトリウム溶融塩原子炉研究など、今日明日の役に立たない研究は無駄でしょうか。
内なる安全保障、次世代の文明に関わるでしょう。このことはアルパックも含めて企業経営にも言えることでしょう。
桜は見事に咲いて
2月27日の日曜日、吉田山で桜の植樹を奉仕しました。京都東ロータリークラブが音頭をとって地元の人達、ボーイスカウトの子ども達と、苗木20本を植え、汗を流しました。来春が楽しみです。京大土木・建築の学生は、吉田山で測量実習をしていましたので、私にとっては、一種のふるさと回帰でした。
大震災から8日後。3月19日(土)、西陣まちづくり協議会と京都市埋蔵文化財研究所は史跡ウォーク「ぐるり聚楽第」を行いました。5班・100名でした。地域のことを知ることが、防災・安全の基礎だということがよく判りました。
大震災から11日後。3月22日から4月3日まで、京都府庁旧本館春の一般公開。東京では上野公園のお花見も自粛したそうですが、開催を決定しました。
はじめは少し寒くて、桜の開花が遅れ、来場者が少なかったですが、おわりは、昨年と同じ1日1,500人を超える盛況でした。被災地への義援金を沢山お寄せ頂き感激しました。
中庭の枝垂れ桜は満開、容保桜は3分咲き、こころ洗われました。正庁での女性府職員の「あじさいコーラス」は、参加者と一緒に「故郷」を唱ってフィナーレとなりました。
![]() 京都府庁の半旗:4月19日 |
![]() 京都府庁旧本館:中庭の枝垂桜 |
アルパックニュースレター167号・目次
特集「安全で安心して暮らせるまちづくり」
特集「子どもの空間」
- のぞみ保育園と東和保育園が竣工しました/京都事務所 山崎博央
- スノーピーク箕面自然館とスノーピーク箕面キャンプフィールドがオープンしました
/大阪事務所 原田稔・和田裕介 - だん王保育園の耐震補強工事が完成しました/京都事務所 三浦健史
ひと・まち・地域
きんきょう
- 1日でまちづくりの新しいきっかけができた「さんだの夢・未来を描くワークショップ」
/大阪事務所 小阪昌裕 - 事業所のごみ排出実態を調査しました/大阪事務所 武藤健司
- 新人紹介「分野の壁に水平ドロップキック」/大阪事務所 山崎衛









