アルパックニュースレター167号

だん王保育園の耐震補強工事が完成しました

執筆者;京都事務所 三浦健史

 3.11の東日本大震災について触れざるを得ません。改めて地震の恐ろしさを感じるとともに、耐震補強の必要性を痛感します。だん王保育園(以下、だん王。京都市左京区)は、京都市内の民間保育園としてはいち早く耐震補強を行いました。
 だん王とアルパックは、相談役の三輪が、今は乳児保育室と児童館として使われている児童センターを設計監理した昭和41年からのお付き合いです。
 だん王は日本で最初の夜間保育園として、京都のみならず日本の保育を引っ張ってきたと言っても過言ではありません。檀王法林寺の前住職の故信ケ原良文先生が戦後すぐの混乱の中、庫裏で保育を始められたとのことです。初期の苦労はお聞きするとさぞやと思わされることばかりです。昭和42年に前述の児童センター、昭和46年に園舎が竣工しました。ちなみに三輪は、園長の信ケ原千恵子先生の高校の1年後輩、私事ながら私の妻もだん王出身ということで、縁も深い保育園です。
 園舎の特徴は挙げればきりがありませんが、工事に関係する箇所では、南面する園庭側に雁行して巾2mの縁側のようなテラスを設け、そのテラスに沿って1、2階に保育室が3部屋ずつあること、保育室は南側に掃出し窓、北の道路側にも窓がある2面採光となっていること、1階のお寺との接続部分にホールとは別に多目的使用が可能な36畳の広間を設けていること、などです。
 一昨年京都市から保育園の耐震診断助成補助金を受け、診断を行ったところ、コンクリートの強度は十分あるもののテラス側に大きな開口を取っていることや建設時の基準上耐震壁が少ないために、補強が必要という結果になりました。早急に補強したいという園のご意向もあり、昨年耐震補強の補助金を受け、工事を行いました。
 補強設計は保育をよく観察し、比較的支障の少ない箇所に設けました。工事の内容は、保育室の北側の窓際に鉄骨ブレースを設置、保育室間の木製間仕切り壁を撤去しRC耐震壁を設置、広間部分にRC耐震壁を設置などです。保育しながらの工事なので、4工区に分け部分ごとに工事を行い、ほぼ1年かかりました。その間ホールを仮保育室としたり、引越しが多かったりと園児さん、先生方には大変なご苦労をおかけしましたが、施工者も気を配ってくれ、無事今春完成しました。


園庭側外観

 だん王は園長が日本一といわれるくらい園児の作品制作に力を入れていますが、鉄骨のブレースを茶色に塗装して木に見立てツタを巻き付けられました。子どもたちにとってとても親しみやすくなったと思います。
 保育園の耐震補強には計画上いろいろな課題が考えられます。だん王では出入口ではない北側窓に鉄骨ブレースを設置できましたが、保育や動線上ブレースやRC耐震壁を必要な場所に設けられないケースもあるかもしれません。また排煙や採光などの建築基準法上の規制が保育室にはかかるため、これをクリアするのが難しいことも考えられます。
 京都市内には新耐震基準(昭和56年)より前に建てられた民間保育園が数多くあります。前述のような物理的制約や工事資金など多くの課題があると思いますが、今後できるだけ早く保育園の耐震化が、進むことを願っています。


補強の鉄骨ブレース

ツタが巻き付けられたブレース

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2011年5月1日発行

特集「安全で安心して暮らせるまちづくり」

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