アルパックニュースレター169号
文化的転換
喧しい蝉に代わって、虫の音に囲まれています。秋です。
しばらくご無沙汰致しました。
5月27日、日本都市計画学会の総会で、名誉会員にご推挙頂きました。また、6月24日、第45期株主総会で、取締役を退任し「相談役」だけになりました。
8月27日で、満80歳。
いずれも初めてのことばかりです。何ができるか、何をすべきか、興味津々です。
復興まちづくり
3.11東日本大震災から、科学と技術、科学者と技術者の役割がクローズアップされています。
アルパック大阪事務所は、2つの分野で先端を拓きました。一つは、1972年、環境部門創設で、水問題から廃棄物へ進みました。、もう一つは、1977年、中城湾港計画から始まった港湾部門で、「海洋スペース利用の研究」と重なって環境と人間の営みに着目したことに意味があります。丁度、「成長の限界」が発表された年でした。
いずれもタテヨコに非常に広い領域、言い換えれば市場性をもっています。環境は持続社会計画部と言っていますように、エネルギー計画へ、港湾は海・空・陸にテレポート、更にエネルギー・ポート・ビジネスへ展開します。
復興まちづくりが進んでいます。地域資源を活かす持続的エネルギーを柱にしたスマート・シティを目指しているのが特徴です。相馬市は太陽エネルギー、石巻市はバイオマス発電に藍藻類を資源に着眼した研究をしています。
新エネルギーのスマート・システムは、アメリカ・韓国・中国が競い、日本の企業も遅れまじというところ。文明史的転換、或いは運命の逆転(ペリペティア)の様相です。人と金は、旗を掲げ、積極的に行動するところへ集まるものです。企業も行政も、じっとしていては、ガラパゴス化に陥り、明暗が分かれるというわけです。
対口支援
7月9日(土)神戸国際交流センターでの「NPO都市災害に備える技術者の会」(以下「会」)総会に出席しました。まだ、理事職が続いています。
東日本大震災によって、この会の活動に期待が高まっています。 「会」の活動は、被災調査と、“備える”ための教育・学習に2分されます。子ども達に地震・津波を教えています。着ぐるみの“犬さん”が主役をやっていて愉快です。
危機管理は、救命・救助から被災調査、復興計画、法令整備或いは教育・学習と繋がって、ぐるぐる回ります。(模式図)
東日本大震災では、多くの中小地方自治体が被災し、災害に関わる仕事が通常業務に加わり、職員自身も被災者で、困難に直面しました。そこで、技術職も含む「行政支援」が、医療支援などとともに、大きな役割を果たしました。
「会」は被災調査の一環で、2008年5月12日の四川大地震(中国では「(●(さんずい偏に山)川地震」)直後にミッションを派遣し、僅か2ケ月後の総会に活動報告をしました。この時、中国政府が採ったカウンターバート方式「対口支援」が紹介されました。
関西広域連合は、連合長である井戸敏三兵庫県知事の提案で、支援担当を京都府・滋賀県が福島県、大阪府・和歌山県が岩手県、兵庫県・徳島県・鳥取県が宮崎県と決め、大震災発生2日後の13日、声明で、発表しました。
日本学術会議は「ペアリング方式」として提言しました。
「会」の調査では、19の省・直轄市だけでなく、各省・市にある大学は四川省の大学に、博物館は博物館へ、といったぐあいに行政から民間レベルまで「対口支援」していると報告しています。
「会」のスローガンである『行政・学界・民間の「ネットワーク」』が活きています。
若い技術者のものおじしない果敢な行動力に感心します。そのためのNPOらしい自由・平等の条件を整えることが、我々世代の役目です。

模式図
脚下照顧・温故知新
時代相を読み、繰り返し自分の位置を確かめる時でしょう。
復興まちづくりという地域プロジェクトも、不均等発展がつきもので、たいそう時間と手間が掛かります。技術の進歩も停滞・挫折・復活と時間が掛かります。実績が薄くて苦労していた環境も港湾も、厚みはできましたが、今や、それを総括し、伝え、先端を切り拓き、指導・支援し、次世代が伸びる条件を整える、リーダーの努力が大事になっています。
復興計画で共通するキーワードは、地域コミュニティ、安全・安心です。中でも「危機管理」を忘れてはならないでしょう。大災害はこれでもうおしまいではないのですから。
我々の行動の哲学的基礎は、アルベルト・シュバイツァー博士の言葉「生命への畏敬」です。
追伸:京都事務所へは、月・木曜日に出ています。お急ぎの節は自宅メールへ。
E-mail:h-miwa@vega.ocn.ne.jp
アルパックニュースレター169号・目次
「まちづくりとエリアマネジメント」
- 名古屋における協議会型まちづくりの紹介~広がり始めたエリアマネジメント
/名古屋事務所 尾関利勝 - 既成市街地における土地利用マネジメント~潮江密集地区のまちづくりの事例
/大阪事務所 岡本壮平・清水紀行 - 周辺市街地の土地利用マネジメント~非建築的土地利用の“状態”のコントロール
/大阪事務所 絹原一寛 - 地方都市の生活拠点のマネジメント~持続的な生活圏構造に向けて/大阪事務所 岡本壮平
- 住宅地の住環境マネジメント/大阪事務所 嶋崎雅嘉
- まちなかバルによるエリアマネジメントの第一歩/大阪事務所 中塚一
ひと・まち・地域
きんきょう
- 文化的転換/相談役(NPO平安京 代表理事)三輪泰司
- 「スマート・シュリンキングによる関西再生」まちづくり技術交流部会に参加しています
/京都事務所 石川聡史 大阪事務所 中塚一・絹原一寛・橋本晋輔 - 守山市でベンガラ塗りワークショップをしました/京都事務所 三浦健史







